秋生の日常 その19
『ペットのように可愛がられてきた』
ことから、自分を『可愛く』演出することについてはほとんど無意識レベルで自在にこなすことができていた。
表情や仕草や身だしなみも含めて。
それを『あざとい』と言って毛嫌いする者さえいるくらいに。
一方、
『ブス!』
『ブサイク!』
と、口さがない者には言われてきたりもした。
それについても、
『よく、『ブスは性格もブス』とか言うのがいるけど、それって、自分が見てる範囲だけの印象で言ってるよね。
だけど、『類は友を呼ぶ』からね。結局、似たようなタイプが自分の周りには残るんだ。『性格がブス』な人が自分の周りに目立つなら、それはつまりそういうことなんだと思う。
だからこの三人は友達になれたんだろうな……』
美織が、
『秋生くんが幸せになれるお手伝いをしたい』
と言ったのも本心からのものだというのが分かる。彼女は自分の幸せを願ってくれてる。そのおかげで、秋生もこうしていることが苦痛じゃない。
「そろそろホームルームが始まるよ」
「は~い」
美登菜も素直に従ってくれる。秋生の言うことなら、素直に。
そうしてそれぞれの席に着くと、担任が教室にやってきた。秋生と美織と美登菜と麗美阿は大人しく座っているのに、他の生徒達はすぐには席に着かない。
「お~い、ホームルームを始めるぞ~!」
担任が声を掛けてようやくだらだらと席に着き始める始末だ。
<ホームルームが始まるという空気>
は読まずに、
<気の合う者同士で歓談してるのを邪魔する野暮な担任は悪だという空気>
は読もうとする。
それが、<空気>と呼ばれるものの正体だ。
いかに自分にとって都合のいいように世の中を解釈できるか?
という<甘え>こそが、その正体であると言える。
けれど、秋生はそんな空気は読まない。ホームルームが始まるのだから大人しく席に着いて待つのが優先だ。
美織も美登菜も麗美阿も、秋生がそうするのでそれに倣う。
なのに、他の生徒達は、秋生達のそういう姿勢こそを、
『空気が読めない』
と言って毛嫌いするのである。
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