ミハエルの日常 その2
吸血鬼は何故か美男美女が多い。が、タイプとしてはいろいろいる。
いわゆる目鼻立ちからして<派手>な印象があるタイプもいれば、男らしかったりセクシーな感じだったり、かと思えばただただ美術品のように美麗なタイプも。
ミハエルはどちらかと言えば<美麗なタイプ>だろうか。
まだ外見上は少年のようにも見えるからというのもあるにしても、派手さや男らしさとは対極に位置する<美しさ>と言うべきかも知れない。
ちなみに彼の伯父に当たる<セルゲイ>は、美麗でありつつダンディーな<大人の男>タイプと言えた。
ミハエルは子供の頃のセルゲイに似ているそうなので、大人(吸血鬼としての)になればやはりセルゲイに近い感じになるとみられている。
が、いずれにせよ他人の注目を集めずにはいられない系統の美しさであることには変わりなく、結果として、外を出歩く時には日常的に気配を消して人間の意識には残らないように心掛けている。
これは、ミハエルに一目惚れして度を越えたストーカー行為に及んだ女性がいた経験からのことでもあった。
ロシア辺りだとミハエルには及ばなくても整った顔立ちの人も多い上に、そもそもミハエル自身がロシア系の顔立ちをしているので、そこまで目立たないというのもある。
が、さすがに日本では、
<美術品のように美しいロシア系白人少年>
はあまりにも目立ちすぎるだろう。
そんなこんなで気配を消して出歩くのだが、それで疲れないか?と思われるかもしれないものの、この辺りは吸血鬼という存在そのものが、元々、人間からは忌み嫌われるがゆえに、人間の目に留まらないように気配を消すのはお手の物という部分があり、人間が<余所行きの顔>を作ってみせる程度の感覚でしかないので、よほど気を抜かなければ気配を悟られることもない。
と同時に、人間も家に帰れば余所行きの顔を解いてリラックスするように、家ではホッとしたりもする。
そして今日も、
「ただいま」
と帰ってくると、
「お帰りなさい。お疲れ様♡」
アオが笑顔で出迎えてくれて、キスを交わした。
人間より遥かに生物として強靭な吸血鬼でも、こうやって愛する人に労われると、やはりホッとする。
それを与えてくれるのが、同じ吸血鬼ではなく、人間であるアオだというのが、ミハエルにとってはたまらなく幸せだった。
「ありがとう、アオ。愛してる」
決して義務ではなく、自然とその言葉が口に出る。
こういう関係を築いているからこその幸せだということを、ミハエルも改めて実感するのだった。
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