四方山話

「お~、帰ってきたか~♡」


翌日は日曜日。ミハエル達が帰ってきたと聞いて恵莉花えりか秋生あきおがやってきた。残念ながらあきらは今回、ルート営業の当直なので来られなかったが。


「え~? あっくん来れないの~?」


あきらのことが好きな椿つばきは最初は残念そうにしていたものの、恵莉花と秋生も一緒になってボードゲームを始めると、すぐに上機嫌になって楽しんでいた。


さらには、悠里ユーリ安和アンナが語る海外話には、恵莉花と秋生も興味津々である。


そこに、


「あ、初めまして。厨崎美千穂くりやざきみちほです。トロントで大学に通ってます」


ビデオ通話で美千穂も参加した。


「あ~、懐かしい、それ! 私も日本にいた時やりました♡」


ということで、ゲームにも参加する。


そしてゲームをしながら、


「しっかしさ~、フランスって変質者までオシャレなんだよ? 笑うって」


フランスに立ち寄った時に目撃した<事件>について安和が言うと、


「え~? 何々? どういうこと?」


恵莉花が食いつく。


「実はさ~、日本人の女の子三人連れの観光客にさ、花束抱えた中年男が近付いてったの。で、


『シルブプレ(お願いします)』


とか言ってたから、花束売りつけようとしてんのかと思ったら、どうも違ってたみたいで、花束覗き込んだ女の子らがびっくりして逃げてったんだ。


その中年男、花束の中に自分の<アレ>を紛れ込ましてて、それで女の子に見せて回ってる変質者だったんだよ」


「あはははは! 何それ~っ! マジありえないんですけど~!?」


「でしょ~? 今から思えば、やけに花束を低い位置に抱えてて不自然だな~って分かるけど、さすがにそんなの予測しないって。


だって、ぱっと見はマジで<オシャレなオジサン>って感じだったんだよ? 中年だったけど。私の好みじゃなかったけど。それでも普通にしてたらまあ女の人とも普通に付き合えそうなタイプだったのに、何やってんの?って思ったね」


「ひ~っ! ひ~っ!! おなか痛い……!」


どうやらツボに入ったのか、恵莉花は腹を抱えて笑ってた。


「あはは……フランス人って、こう、独特な感性の人が多いから……」


フランス語を学ぶためにカナダに留学した美千穂はひたすら苦笑いだ。


とは言え、美千穂の場合は笑い話にならない事件に巻き込まれたクチなので、それを思えばまだマシだったけれど。


他にも、イタリアでタクシーに乗ったらそれが酷いポンコツで、走ってる時の振動でドアの内装が外れたと思ったら中から雑草が生えた土が出てきたり、同じくイタリアでセルゲイの<友人>に某有名高級スポーツカーに乗せてもらったのはいいものの、急に雨が降り出してワイパーのスイッチ入れたら、ワイパーが窓じゃなくてボンネットを拭いたりと、実に『イタリアン』な笑い話が出てきたのだった。


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