お土産送ったからね~♡

そんなこんなで、ミハエルと悠里ユーリとアオと椿つばきが家族の団欒をしていたところに、安和アンナがセルゲイと一緒に帰ってきた。


「ただいま~♡」


「おかえり~♡」


一気に場がほころぶ。家族の顔が見られたのが嬉しい。そういう家族の姿がここにある。


例の密猟者の件で少し精神的にささくれた気分になっていた悠里ユーリも、それによってさらに穏やかになっていく。


嫌なことがあっても、いや、嫌なことがあった時こそそれをいつまでも引きずらない。解決できることは無理のない範囲で極力その日のうちに解決する。


それも蒼井家の<家訓>だった。


そんな家族の団欒を見て、セルゲイも癒される。


「ママ~、お土産送ったからね~♡」


イルカのアクセサリーとバティックのワンピースを国際宅配便で送ったということだった。


ちなみに、海外の宅配業者は扱いが荒いことが決して少なくないので。厳重に梱包してある。少々放り投げられようが落とされようが大丈夫なように。


「ありがと~♡ 楽しみにしてるよ~」


くねくねと体を動かしながらアオが応えた。


その膝には、椿つばきが収まっている。


こうしてお互いのぬくもりと鼓動と<命の実感>を得るために。


吸血鬼やダンピールは人間より体温が低いのでこういう形で抱いても<ぬくもり>は実感できないものの、それでも存在そのものは感じ取れる。でも椿の場合はそれこそ人間なので、子供ということもあってすごくあたたかい。


アオはそれが好きだった。そして椿もこうして母親に包まれている感覚が好きだった。


お互いがそこにいるという事実に心が満たされている。また、


『うん、今日も僕の家族は幸せそうだ……』


目の前の光景を噛み締めながら、ミハエルも穏やかに微笑んでいた。


それから、アオが仕事のためにその場を離れると、安和も自分のノートパソコンを出して、自身が運営するレビューサイトのチェックを始めた。


日本に向けて発送したイルカのアクセサリーについてのレビュー記事も早速アップしてある。


『カワイイ~♡』


『こういうのつけてると気分がアガりますよね♡』


『わたしもほし~♡』


等々の、中学生や高校生と思しきコメントが並ぶ。


けれどそれに混じって、


『素敵だね。このイルカを身に着けた君を直接この目で見たいな』


という、明らかに他のコメントとは毛色の違うものが混じっていた。


『やれやれ……』


それを見つけた瞬間、安和は肩を竦めて頭を横に振った。いつものことだった。


『君は天使だ』


『僕は君のおかげで生きられている』


『君に会いたい』


というようなコメントをしつこく送ってくる、やや<困った人>なのだった。


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