地球そのものが<家>
こうして離れていても、蒼井家は<家族>だった。なにしろ蒼井家にとっては、ある意味、この地球そのものが<家>なのだから。たとえ外国にいたとしても、自宅の別の部屋にいるようなものでしかないとも言えた。
普通の人間には理解できない感覚かもしれないけれど、アオも最初は理解できなかったけれど、今ではすっかりその感覚が染み付いている。
だから寂しくない。こうやってビデオ通話ででも顔を合わせることができれば。
ただ……
「ミハエルぅ~! 抱き締めてぇ~♡」
ビデオ通話の画面の向こうでアオが甘えるように手を広げながらカメラに向かってアピールする。しかしさすがに今すぐ抱き締めることはできない。
でもそれは、
「はいはい。ママ、落ち着いて。よしよし♡」
「にゃ~♡」
学校から帰ってきた
アオはもうすでに<いい大人>と言われる年齢ではあるけれど、今でもこうして甘えたくなる時はある。そんな自分が甘えたくなる時があるんだから子供達が甘えたくなるのなんてそれこそ当たり前と彼女は考えてた。
だから、甘えてきた時にはたっぷりと甘えさせる。
実はこうして椿に甘えるのも、彼女に甘えている形で実は彼女にも甘えてもらっているというのもあった。
こうすると、『母親を甘えさせてる』という形で彼女の自尊心も満たしつつ母親とスキンシップを図るという形にもなる。
もちろん、これはあくまで蒼井家のやり方であって、
『こうすれば親子関係は上手くいく』
というわけじゃない。それぞれに合ったやり方というものがあるのだから、形だけ真似ても上手くはいかない。
人間はそんなに単純じゃない。
アオはそれを、自分の両親の失敗から学んだ。
アオの両親はどうやら、
<天才を育てる教育法>
なるものを参考にしたらしいものの、それが効果を発揮するには、結局、子供との信頼関係が根底になければ。という部分を考慮に入れずただ上辺だけを真似したことで、現在、家庭はバラバラになってしまった。
両親の期待を一身に背負って熱心に教育を受けた長男は、自身を、
『自分は天才かつこの世で最も価値のある人間の一人である』
と思い上がって他人を見下し、あまつさえ<自分を盛り立てるための道具>と考えて他人を使い潰すということをしたものだからパワハラで訴えられて一審二審共に敗訴。
それでもなお自分に非はないと主張して悪目立ちし、世間から絶賛集中砲火を浴びている真っ最中という有様だった。
それについてアオは完全に沈黙、<他人のフリ>を徹底している。
彼女が本名の
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