超絶イケメン医師
<ダンピール問題>と向き合う覚悟を、ミハエルもアオも持っている。
だからセルゲイも、協力してくれることになった。
セルゲイとしても、自身の仮説を立証するためのデータは欲しい。けれど、だからといって覚悟のない誰かに協力を求めることはしたくない。
そこに、この二人が現れたということだ。
ならば、力にならない理由がない。
「検診や検査方法自体は、人間のそれと変わらない。リラックスして臨んで欲しい」
セルゲイは穏やかに微笑みながら告げた。
とは言え、アオ自身も言うように、これほどの<超絶イケメン医師>に妊婦として検診や検査を受けるとなると、さすがに心中穏やかではいられない人の方が多いかもしれない。
ただ、問題はそれだけではない。完全にそれ用に設備が整えられた医療施設での検診・検査ではなく、自宅でのそれということで、衛生面でのリスクもある。
入念に掃除した上で<除菌スプレー>で徹底的に室内の清浄化を図ったものの、それでも当然、<完璧>とは言えない。それどころか、<気休め>に過ぎないと言った方がいいだろう。
もっとも、万が一の感染症等についても、セルゲイが医師であることに加え、ミハエルが<吸血鬼>であるからこその対処法がある。
眷属化するぎりぎりまで吸血を行うという、裏技的なそれが。
これにより一時的に身体機能を強化。人間が罹る感染症の類であればほぼ対処できる。
もちろんそれも、眷属化してしまうリスクは伴うので、あくまで最後の手段ではある。可能な限り使いたくはない。
諸々のリスクを承知の上、アオは真新しいシーツが敷かれたベッドの上に仰向けになった。そして、
「じゃあ、始めるよ」
白衣を着たセルゲイが告げ、ミハエルに手を握ってもらったアオは、検診と検査を受けた。
「はい。これで終了です。お疲れ様でした」
いろいろ緊張もしたし何より恥ずかしかったものの、セルゲイはあくまで医師として淡々と処置をしてくれて、検診も検査も実に呆気なくスムーズに終わった。
「出生前診断については、今回採取した検体を、協力してくれている機関に預けて検査してもらうことになる。今は日本にもそれがあるから、一週間から十日で結果が出るはずだよ」
あくまで穏やかにそう告げるセルゲイに、アオもホッとした。
「それじゃ、検査結果は<支所>の方に届くから、ミハエルに取りに行ってもらうといい。そのあたりはミハエルもよく知ってるから大丈夫だよね」
帰り際、やはり穏やかに語るセルゲイを見送り、
「は~、なんか疲れた……
でも、さすがに恥ずかしかったよ。ミハエル以外の人の前であの格好は」
リビングに戻ったアオがソファに倒れこみながら、耳まで真っ赤に染まった顔を覆う。
「お疲れ様。でも、よく頑張ったね。ありがとう」
そんなアオにミハエルはどこまでも優しかったのだった。
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