デレデレ
家族揃ってリビングで録画した深夜アニメを視る。今、テレビに映し出されているのは、典型的な恋愛コメディものだった。
なので、
「あははははは♡」
楽しげに笑いながら視ている。
悠里にとって興味を持てないのは『惚れた腫れた』の部分であって、コメディ部分はそれなりに楽しめるからだ。
「顔! 顔~っ!」
アニメのヒロインが、ヒロインとしてはありえない顔になると、指をさしてツッコむ。
「きゃはははは♡」
「い~ひひひひ♡」
そんな子供達の様子を、ミハエルが穏やかに微笑みながら見守る。
さすがにミハエル自身はアニメにはそれほど興味はないものの、家族が楽しそうにしているのを見るのが彼自身にとっても楽しみだった。
穏やかに微笑みながら子供達を見ている彼の姿は、それだけでも至高の芸術品のようだ。
そしてアオは、子供達とミハエルの姿を見ているとあまりの幸せに蕩けそうになる。
締まりのない顔で自分を見ているアオに気付いたミハエルが、ふわっと微笑み返す。
もうそれだけで嫌なことがすべて氷解してしまう。
すると、そんなアオの膝に椿が乗ってきた。
「ママ~♡」
鼻にかかった甘えた声でアオの胸に頬をすりつける。
「はいはい♡ 甘えっこさんですね♡」
そう言うアオの顔もデレデレだ。
で、アオの膝に椿が座ると、
「じゃあ、私はパパのお膝~♡」
安和がミハエルの膝に座る。十から十一歳くらいの子供の大きさしかないミハエルでもさすがに三歳くらいの大きさの安和ならいい感じに収まることができた。
それをミハエルがふわっと微笑みながら受け入れる。
これもいつものことだった。
「パパ~♡」
安和も、精神年齢としては人間の高校生くらいのそれになりつつも、甘えたい時には素直に甘えることもできる。
「
一人あぶれた悠里に、アオが声を掛ける。すると彼も、
「うん♡」
と素直に応え、椿と並んでアオの膝に収まった。これも、実年齢で十三歳、精神年齢では高校生くらいだからといって無駄に反発しない。
「
アニメがCMに入ったところで、アオはそう言って二人をぎゅうっと抱き締めた。
「ん~♡」
「んふふふ♡」
すると悠里と椿も、嬉しそうにアオの頬に顔を寄せる。
それを見た安和も、
「パパ~♡ 私も私も~♡」
甘えるようにミハエルの胸に頬を寄せた。それに応えて、
「ぎゅ~っ♡」
ミハエルも安和を抱き締めてくれた。
とても仲のいい、あたたかい家庭の光景がそこにある。
そうして家族の団欒を満喫した後、
「じゃ、そろそろ寝ようか」
ミハエルが椿に声を掛けた。
「は~い♡」
椿も素直に応える。彼女は普通の人間の十歳の子供なので、夜の九時過ぎには寝ることにしていた。彼女を寝かしつけるのは、ミハエルの役目だ。
「おやすみなさ~い♡」
「はい、おやすみ♡」
「おやすみ~♡」
手を振りながら挨拶する椿に、アオが手を振り、悠里と安和が声を揃えて応えてくれたのだった。
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