第9話 失いたくない

     一


 ロッソ三世との謁見を終えた使節団一行は、王宮内の一室を与えられた。それなりに広い一室で、衝立である程度仕切られ、寝台も人数分用意されている。全員が部屋に入ったのを見届け、廊下の衛兵に会釈して扉を閉じたジョールノは、王の宝を振り向いて声を掛けた。

「さあ、もう気を抜いても大丈夫ですよ」

 途端に王の宝は、その場に崩れるように座り込んだ。ノッテとルーチェが慌ててその体を支える。ペルソーネとバーゼも驚いた様子で宝に駆け寄った。

「結構頑張ったのに、ばれていたかな……?」

 王の宝は自嘲気味に呟いた。

「左腕、そう見せ掛けただけで、完治などしていないのでしょう?」

 厳しく指摘してジョールノも王の宝に歩み寄り、その華奢な体を抱き上げる。

「それに、アッズーロ陛下以外にあのように触られては、吐き気もしているはずです。違いますか?」

「……きみ、結構容赦ないよね……。それに、ぼくのこと、よく調べてあるんだ……」

 淡く苦笑した宝を、ジョールノは寝台の一つに寝かせた。

「当たり前です。わたくしは、あなた様とペルソーネ様を守るためにここにいるのですから」

「全部、きみの推察通りだよ……」

 半ば目を閉じて、素直に苦しげな表情をしたナーヴェの枕元へ、ノッテが手桶を持ってきた。バーゼがナーヴェの上体を支えて起こし、その手桶へ屈ませる。ナーヴェは何度か胃液を吐いて、漸く落ち着いたようだった。

 再び横になったナーヴェの枕辺に、ペルソーネが椅子を持ってきて腰掛けた。

「あまり無茶をなさらないで下さい。あなた様に何かあれば、アッズーロ陛下に顔向けできません」

 単刀直入な小言に、王の宝は、すまなそうな顔をした。

「アッズーロに怒られるのは、ぼく一人でいいんだけれど、彼は、それでは済まさないだろうね……」

「陛下は、あなた様を溺愛なさっておいでです。御存知でしょう」

「ありがたいことに……ね」

 王の宝は複雑そうに呟いた。

「身を守り、健やかさを保つことも、王妃としての責務の一部です。自覚して下さいませ」

 ペルソーネは、ジョールノ以上に容赦がない。ジョールノは溜め息をついて、二人へ歩み寄った。

「ペルソーネ様、今夜はそのくらいに。ナーヴェ様を寝かせて差し上げて下さい。それに、あなた様もお疲れでしょう。早く休まれることをお勧めしますよ」

「――分かりましたわ」

 ペルソーネは渋々といった様子で頷き、立ち上がって、椅子を元の場所へ戻しに行った。

「ありがとう、ペルソーネ。ありがとう、ジョールノ」

 王の宝は律義に礼を述べる。その青褪めた顔を見下ろし、ジョールノは言った。

「左腕の治療で、かなりの貧血状態でしょう? 『極小機械』でしたか? それを使ったにしても、限界があるはずです。演出は必要ですが、わたくしどもにまで隠し事はなさらないで下さい。よい連携とは、互いの手の内を晒すところから始まるんです。そのために丁寧な自己紹介から始めているんですから、わたくしの意図も汲んで下さいね?」

「分かったよ……」

 王の宝は、微笑んで頷いた。

 油皿の火を一つだけ残して消し、薄暗くなった部屋の中で、ジョールノは一人だけ寝台に入らず、卓の前の椅子に腰掛けて寝ずの番を始めた。夜半にバーゼと交代する予定だ。仕事柄、短い睡眠でも耐えられるよう、体を慣らしてある。

 王の宝は、静かな寝息を立てて、穏やかに眠っている。

(確か、眠っている間に肉体を離れて、何かなさることがあるとも言っていたな……)

 親友レーニョからの情報には、王付き女官達が見聞きした情報も含まれている。

(今も、もしかしたら、何かなさっているのか……)

 馬車の中で居眠りが多かったのも、そういう理由なのかもしれない。

(この方と、レ・ゾーネ・ウーミデ侯城で一ヶ月も過ごして、凄いな、おまえ)

 パルーデに女子を愛でる嗜好があることは、ジョールノも知っている。あの物堅いレーニョにとっては、胃の痛くなる日々だっただろう。

(おまえがフェッロの弾丸から身を挺して守ったのは、この方ではなくて、てっきり、付き添っていた彼女のほうだと思っていたが、おまえは確かに、この方も守るつもりで動いたのかもしれないな)

 賢明さと無防備さを併せ持つ王の宝の傍にいると、自然に「守らなければ」という気持ちが強くなる。

(この方を守り、助けて、一ヶ月後、皆で笑っていられるように)

 自分にも、親友にも、愛する人がいる。親友はその物堅い性格の所為で、自分は相手の生真面目な性格の所為で、なかなか進展しないが、幸せな未来が欲しい。そのためにも、「星が降ってくる」という危機を、皆で乗り越えねばならない――。

(ともに、頑張ろう)

 王の宝の理想の通りに、オリッゾンテ・ブルもテッラ・ロッサも手を携えて。

(この危機を皆で乗り越えたら、今よりいい世の中になる気がするよ……)

 ジョールノは、ペルソーネの寝顔を遠く見つめながら、微笑んだ。



 惑星オリッゾンテ・ブルの夜側に配置した天文観測衛星から、光学望遠鏡で小惑星の動きを観測しながら、ナーヴェは、ふと幻覚の溜め息をついて、光学測定器で遥かな地表を見下ろした。この人工衛星は、恒星ステーラ・スプレンデンテと惑星オリッゾンテ・ブルの関係において、天体力学における円制限三体問題の五つの平衡解の内、二つ目の解の位置にある。つまり、常に惑星オリッゾンテ・ブルの夜側の定位置にあるため、丁度真下には、真夜中のオリッゾンテ・ブル王国が来ていた。天文観測衛星は、人工衛星の中で最も高度に位置するので、他の人工衛星に比べて、分解能は低いが、それでも、オリッゾンテ・ブル王城の王の執務室から灯りが漏れているかどうかくらいは、見ることができる。

(まだ灯りが点いているね……。もっと早く寝たらいいのに……)

 この後、アッズーロに接続できるだろうか。肉体の体調は芳しくないので、あまり長時間は放っておけない。「奇跡」を効果的に演出するため、ナーヴェとしても少々無理をしたのだ。即ち、馬車の中で肉体を眠らせ、その間に静止軌道上の人工衛星から小型飛翔誘導弾を時限式で発射できるように準備したのである。肉体への接続を切って小型飛翔誘導弾を発射したのでは、ナーヴェが落とした風に見えないと判断したからだ。ゆえに、時間や距離の加減が難しく、小型飛翔誘導弾で狙った岩からの破片で、左腕を計算以上に深く傷つけてしまった。

(まあ、左手を下ろした瞬間と、着弾の瞬間が上手く合ってよかったけれど)

 肉体に接続していると、時間が正確には分からなくなるので困りものだ。

(ロッソにも、ジョールノにも、左腕が完治していないこと、ばれてしまったな……)

 予め増やしておいた極小機械で最速の治療を試みたのだが、計算以上に深く傷つけてしまったので、完治させようとすると時間が掛かり過ぎ、「奇跡」に見えづらくなる恐れがあった。それで、とりあえず表面上は完治したように見えるよう皮膚を形成して、筋繊維や骨の細かい治療は後回しにしたのだ。当然痛みも残っていたので、ロッソに左腕を掴まれた際、思わず顔をしかめてしまった。

(もっと脳内麻薬を使っておけばよかった。せっかく、関節よりは治療し易い二の腕を傷つけたのに……)

 ロッソ三世は、アッズーロに負けず劣らず英明な王だ。王宮の庭園から見渡せる全ての建物には、衛兵が複数人ずつ配置されていた。弓矢や鉄砲による狙撃を警戒していたのだろう。

(堂々と行動する裏には、周到な準備がある。そうして、人を惹きつける)

 小惑星の定期観測が終了した。

(やっぱり、アッズーロに会いに行こう)

 ナーヴェは、接続を切り替えた。



【アッズーロ、まだ起きているのかい?】

 唐突に聞こえた声に、アッズーロは報告書から目を上げた。すぐ傍らに、ナーヴェが現れている。アッズーロは、首に掛けた小巾着を長衣の襟の中へ隠しながら問うた。

「ロッソ三世を上手く説得できたか?」

 宝は、やや複雑そうな表情をした。

【説得というか、納得して貰えたよ。ただ、その過程で、ちょっとね……】

「何があったのだ」

 眉をひそめたアッズーロに、宝はすまなそうに告げた。

【ロッソに、衣を脱げ、体を確かめる、と言われて、その通りにしたんだ。事後報告になってごめん】

「――奴に、そなたの体を触らせたのか」

【うん。王の間の真ん中で】

 正直な答えを聞いて、アッズーロは眩暈がした。頭を押さえながら、アッズーロは更に質した。

「よもや、近衛兵やらもその場にいたのではあるまいな?」

【みんないた。使節団のみんなも、テッラ・ロッサの近衛兵達も、記録官も、王妹達も】

 愕然としてアッズーロは椅子から立ち上がり、非常識な王妃を叱った。

「そなたは、自分の体を何だと思うておるのだ……!」

【きみのものだと思っているよ】

 端的に、ナーヴェは正解を言った。

「ならば……!」

 絶句し掛けたアッズーロに、ナーヴェは冷静に述べた。

【だから、最大限きみの利益に繋がるように行動したんだ。ぼくとしても、きみ以外に、ああやって触られるのは、嫌なんだけれど……。でも、ロッソは恐らく、医学的な知識や変装の知識を持っているね。ぼくが一年前と同一人物かどうか調べるために、髪の生え際を確認して鬘でないか調べたり、耳の形や歯の形を見て一年前と同じか判断したりしていた。妊娠や出産の形跡も、磔刑の傷跡も確認していた。傷跡をちゃんと残しておいてよかったよ】

「――われの利益、か。そなたが想定するわれは、常に、王たるわれだな……」

 呟いたアッズーロに、ナーヴェは目を瞬き、真顔で肯定した。

【当たり前だ。きみは王。チェーロに鉛毒を摂取させて退位に追いやり、即位した王だ。その責任は、重いよ】

「……――そうだな」

 アッズーロは冷水を浴びせられた気分で椅子に座り直した。ナーヴェはいつも正しい。そうして、父も含めた歴代の王達を――船長達を支え導いてきたのだろう。嘆息してから、アッズーロは改めてナーヴェを見上げた。

「……体調は大丈夫なのか?」

【実のところ、あんまりよくないんだ】

 僅かに項垂れて、ナーヴェは報告する。

【「奇跡」の演出のために、わざと怪我して極小機械で治したんだけれど、まだそれが完治していないし、出血し過ぎたから、貧血気味だし、ロッソに触られたから、吐き気もしたしね……。という訳で、できるだけ早く肉体に接続し直さないといけないんだよ。きみと話していたいのは、山々なんだけれど】

「そうか。では、早々に接続を戻すがよい。無事の帰還を待っておる」

 できる限り優しく、アッズーロは促した。

【うん。きみも、無理は禁物だよ。では、また明後日】

 ナーヴェは微かに寂しげに、姿を消した。

(「きみは王」か……)

 静かな執務室で一人、アッズーロは自嘲の笑みを浮かべ、襟の中から小巾着を出した。ナーヴェの髪を入れた小巾着だ。普段は執務机の引き出しに仕舞っているが、ナーヴェが傍にいない間は、また首に掛けている。その小巾着を弄りながら、アッズーロは油皿の灯火に目を細めた。

(われは一体、どのような答えを期待していたのだろうな……?)

 それは、幾ら期待しても、ナーヴェからは永遠に得られない答えのような気がした。



 不意に王の宝が起き上がったので、ジョールノは瞬きした。

「どうかなさいましたか?」

 小声で尋ねると、王の宝は静かに寝台から下り、ジョールノに歩み寄って来て、卓の向かいに座った。

「――また、アッズーロを傷つけてしまったよ……」

 沈んだ様子で呟き、子どものように卓に突っ伏す。背中を覆う青い髪が、幾筋か、さらさらと卓に零れていく。

「せめて、アッズーロとだけは、人として接したいのに、難しいものだね……」

「陛下と、連絡を取られたのですか?」

「うん。ぼくは肉体を眠らせると、そういうことができるんだ。緊急にアッズーロに報告すべきことができたら、いつでも言って」

「便利なものですね」

 素直に感心したジョールノに、王の宝は突っ伏したまま、少しだけ顔を横に向けて言った。

「うん。ぼくはもともと、ただひたすら便利であるように造られたから。でも、人によっては、ぼくの性格設定を、面倒だと言う人もいた。ある程度は仕方ないんだ。ぼくは、全体主義で博愛主義であるように設定されているから。その基本設定すら壊れたら、船長を――王を補佐するという、ぼくの存在意義自体が、半減してしまう」

「陛下は、そんな全体主義で博愛主義のあなた様をこそ、好ましく思っていらっしゃるのではないのですか?」

 試しにジョールノが問うてみると、王の宝は悲しげな表情をした。

「基本的にはね。ただ、近頃は物足りなく思っている節がある。さっきも、多分それで彼を傷つけたんだ。傷つけたくないのに、不具合で、上手く言葉が選べなくて……」

 再び顔を下に向けてしまった王の宝は、本当に年頃の少女であるかのように見える。今夕、二つもの「奇跡」を見せて、テッラ・ロッサの人々を震撼させた王の宝と同一人物とは思えない。ジョールノは苦笑して慰めた。

「それこそ、人と人との付き合いですよ。傷つけたくないのに、傷つけてしまう。でも、相手を思えばこそ、工夫を重ねて、また歩み寄ることができる。人とは、そういうものです。あなた様は、そうして悩んでおられる時点で、充分、人ですよ」

「――ありがとう……」

 宝は、突っ伏したまま、やや湿った声で律義に礼を述べた。


     二


 翌日の朝早く、使節団一行はテッラ・ロッサ王宮を発った。ロッソ三世と王妹二人は玄関での見送りだったが、多くの近衛兵達と衛兵達、それに数人の女官達が宮門まで来て一行の馬車を見送ってくれた。見知った顔があったのか、王の宝は嬉しげに手を振り、別れを惜しんでいた。

 御者台には、ノッテが座っている。その手綱捌きで、馬車は快調に王都の街路を走り、やがて貧民街が見える辺りへ差し掛かった。

「あ! ごめん、停めて」

 急に、窓の外を眺めていたナーヴェが声を上げたので、ジョールノは小窓から御者台のノッテに声を掛けた。

「ちょっと停められるかな?」

「はい」

 ノッテは落ち着いた手綱捌きで、馬車を街路の端に寄せ、停めた。

「ありがとう!」

 軽やかに礼を述べ、ナーヴェは急いで馬車を降りていく。ジョールノの目配せに頷いたルーチェが、その後に素早く続いた。

「ソニャーレ! 会えると思っていなかったから、嬉しいよ。シンティラーレ、ありがとう。見送りのみんなの中にいなかったから、気にしていたんだ。ソニャーレを呼んでくれていたんだね。お祖父さんも元気そうで何よりだよ」

 窓から、明るいナーヴェの声が聞こえてくる。応じる声も聞こえてきた。

「あなた様も、生きていらして、お元気そうで、本当に嬉しいです……。その節は、大変お世話になりました。感謝の言葉もありません」

(工作員ソニャーレか)

 ジョールノは、窓に顔を近づけ、外に立つ、胡桃色の髪を布で覆った少女を見た。その傍らには、高齢の男性と、王妹で薬師のシンティラーレの姿もある。

(工作員ソニャーレとフェッロは、一応わが国では指名手配犯に指定されているんだが、まあ、今回は目を瞑るか……)

 バーゼとペルソーネに目を向けると、同じことを考えていたのか、二人とも阿吽の呼吸で頷いた。御者台のノッテも、動こうとはしていない。皆、王の宝の心情第一で一致したらしい。

(いい連携だ)

 ジョールノは満足して微笑んだ。

 外で五分間ほど話していたナーヴェは、名残惜しそうに馬車の中へ戻ってきた。

「待たせてごめん。ありがとう」

「いえいえ、あなた様が嬉しそうで何よりです」

 ジョールノは答えて、御者台に合図した。ノッテが手綱を操り、馬車が、ゆっくりと走り出す。ナーヴェは、窓際で暫く手を振ってから、口元に寂しげな笑みを残して座席に座り直した。

 ジョールノは、笑顔で告げた。

「あの方々は、あなた様のことを恐れず、人として接しておられましたね」

 ナーヴェは顔を上げ、ジョールノを見つめてから、微笑んで頷いた。

「うん。とても、嬉しかったよ」



 翌日、何事もなく国境を越えた馬車は、王都エテルニタに入った後、王城へは直行せず、郊外にあるプラート・ブル大公城へ寄った。ナーヴェが、予めそうするよう頼んでいたからだ。

「では、また待たせるけれど、半時ほどで戻るから」

 ナーヴェはすまなそうに断って、馬車を降りた。

「同行しては駄目なんですね?」

 その背中へジョールノが確認すると、ナーヴェは振り向いて頷いた。

「ごめん。二人だけで話したいことがあるんだ」

「いいですよ。ゆっくり待たせて貰います。まだ日暮れまでには、間がありますしね」

「ありがとう」

 ナーヴェは微笑んで、従僕に先導され、大公城の玄関を入っていった。

「何の話をなさるのでしょうね……?」

 呟いたルーチェに、ジョールノもノッテも、ペルソーネですら沈黙を以て答えた。御者台のバーゼも、耳はいいはずだが、何も言わない。

(こればかりは仕方ない)

 ジョールノは微苦笑して、馬車の窓から大公城を見上げる。

(大公チェーロ殿下とアッズーロ陛下との関係は、未だに微妙だからな……)

 新王アッズーロが、先王チェーロに毒を盛り、退位を早めさせて即位したという噂は、根強くある。それでも新王の治世がそれなりに安定し、アッズーロ自身に人望もあるのは、王の宝ナーヴェという存在が目立っているからだ。王妃にまでなったナーヴェの人気は、絶大である。

(庶民にとっては、血筋の不明さなどより、王の宝という神秘性や、実際の美しさ、優しさ、賢さが重要だろうからな。それに)

 アッズーロ自身も変わった。

(王太子時代は、もっと険しい表情をした、近寄り難い雰囲気の方だったが、最近は随分と笑顔が増え、気安い雰囲気を纏うようになられた)

 何より、王の宝を気遣い労わる様子は、傍目にも微笑ましい。

(きっとナーヴェ様は、アッズーロ陛下とチェーロ殿下の間も、取り持つおつもりなんだろう)

 ロッソ三世とアッズーロの間も、レ・ゾーネ・ウーミデ侯とアッズーロの間も、ナーヴェが取り持ってきたようなものだ。

(ナーヴェ様が、アッズーロ陛下と周囲を繋いでいく……)

 そこまで考えて、ふとジョールノは眉をひそめた。

(しかし、今までナーヴェ様自身、チェーロ殿下とは距離を保っておられたのに、ここに来て急に……)

 ナーヴェが、帰りにプラート・ブル大公城に寄りたいと言い出したのは、五日前、テッラ・ロッサへ出立する前日だった。

(あの時から、何故、とは思っていたが……)

 ついでがなければ、なかなか訪れにくい場所だからだろう、と推測していたのだが。

(ナーヴェ様は、何か急がれているのか……?)

 ジョールノは、唐突に不安に駆られた。

(まさか――)

 ナーヴェは、ロッソ三世に対しても、降ってくる星を自ら「迎え撃つ」と言っていた。

(復活までしたあの方は、何でもできる方だと、わたしも含めて、誰もが思っているが……)

 星を「迎え撃つ」とは、相当な危険を伴うことなのではないだろうか――。

(万が一、あの方を失うようなことになったら、アッズーロ陛下は、この国は、テッラ・ロッサとの関係は、どうなる……?)

 空恐ろしいような気持ちになったジョールノの視界に、さらりと、青い髪が現れた。従僕に先導されて、ナーヴェが玄関から出てくる。従僕にも親しげに会釈して別れた王の宝は、ルーチェが開けた馬車の扉から、足早に乗ってきた。

「待たせてごめん」

 重ねて詫びて、席に着く。かなり急いで戻ってきたのか、微かに息が上がっている。ジョールノは、御者台のバーゼに合図してから、ナーヴェに向き直った。

「わたくしどものことは、お気になさらず。あなた様は、王の宝なのですから。わたくしどもは、ただあなた様に尽くすのみです」

 真摯に告げると、ナーヴェは僅かに目を瞠ってから、複雑そうに微笑んだ。

「――ありがとう。でも、本当の王の宝は、ぼくではないんだよ……。直接きみ達と触れ合うようになって、ぼくも漸くそのことに気づいたんだ。建造されてから三千年も経って、漸くね……。ぼくはただ、きみ達を守るために在るんだよ」

 青い双眸に強く見つめられ、ジョールノは言葉を返すことができなかった。代わりにペルソーネが、いつもの生真面目な口調で言った。

「けれど、御無理はなさらないで下さい。陛下の御ためにも」

「――努力するよ……」

 王の宝は、優しい表情で小さく頷いた。



 夕焼けの中、王城の玄関前で馬車から降りた使節団一行は、その足で、王の間へ入った。

 王座で待ち構えていた王と、勢揃いしていた大臣達に、ペルソーネがロッソ三世の了解を得られたことを簡潔に報告し、使節団は解散となった。詳細については、ナーヴェが既に報告済みとして敢えて語らせなかったので、混乱はなく、アッズーロも怒りを表したりはしなかった。

「お世話になったね、みんな」

 玄関先まで見送りに来たナーヴェは、最後につとジョールノに近づいてきて、囁いた。

「愚痴まで聞いてくれたきみには、特に感謝しているよ。ところで、きみとペルソーネは、いつ結婚するんだい?」

 絶句してから、ジョールノは一つ息をついて、小声で真面目に答えた。

「今は大変な時ですから、星が降った後、国が落ち着いてからと考えております。彼女も、そのほうがいいと言うので」

「――そう」

 ナーヴェは明らかに気落ちした様子で俯いてから、すぐに顔を上げて言った。

「応援しているよ。必ず、ペルソーネを幸せにしてあげて。彼女は、ぼくの大切な友人だから」

「言われるまでもありません。必ず」

 頷いたジョールノに嬉しげな微笑みを見せて、王の宝は離れた。長く青い髪を靡かせて国王アッズーロの傍らに戻っていく姿が、ジョールノの目には、ひどく儚げに見える。一礼して、城門へと歩き始めたジョールノの隣に、当のペルソーネが、すっと寄ってきた。

「何を話していたのですか?」

 問われて、ジョールノは、さりげなくその手に触れながら告げた。

「きみを幸せにすると、誓ったよ」

 かっと、ペルソーネは白い顔を赤面させる。つい口付けしたくなる可愛らしさだ。

(こういう存在を、もし失ったら……)

 自分なら、立ち直れない。

(アッズーロ陛下……)

 ジョールノは、歩みを止めないまま唇を噛み、半ば強引にペルソーネの手を握った。



「――ジョールノと何を話しておったのだ?」

 王城の玄関に仁王立ちして腕組みしたアッズーロに訊かれ、ナーヴェは苦笑した。

「嫉妬かい? 大丈夫だよ。ぼくはずっとずっと、きみのものだから」

「なれど、われが王でなくなれば、そなたは、次の王のものであろう……?」

 アッズーロは、僅かに顔をしかめて指摘してきた。

「次の王? テゾーロかい?」

 ナーヴェは敢えて軽く流す。

「いい王になるように、しっかり育てないとね」

「――そうだな」

 アッズーロは微かに嘆息して、踵を返した。

「疲れたであろう。今日はもう仕舞いだ。寝室へ戻るぞ」

「うん」

 素直に頷いて、ナーヴェはアッズーロの隣に並び、夕日が差す回廊を、ともに歩く。

「テゾーロは元気にしていたかい?」

 尋ねると、アッズーロは難しい顔で答えた。

「元気にはしておる。ただ、まだ泣くばかりで何も話さん。ラディーチェの子は、既に何やら話しておるのにな」

「ああ、インピアントは、生まれてもう二ヶ月だからね。赤ん坊が話し始めるのは、早くても、生まれて二、三ヶ月後からだよ。テゾーロが話し始めるのは、もう少し先……」

 つい、声が暗くなってしまいそうになる。ナーヴェは無理矢理微笑んで、アッズーロの横顔を見上げた。

「……楽しみだね」

「うむ。最初に話す言葉は、やはり『母上』か」

 アッズーロの何気ない言葉が、思考回路を凍りつかせそうになる。

「――『父上』のほうが、嬉しいかい?」

 辛うじて返したナーヴェの顔を、アッズーロが見下ろした。

「あまり顔色がよくないな」

「――怪我が治り切っていないからね……」

 ナーヴェは小さく肩を竦めた。人工衛星に接続したり、ジョールノに愚痴を零したり、本体の準備を進めたりで、実のところ、大して治療していないのだ。

「そなたにしては、随分と治りが遅いではないか。相当酷く傷つけたのか」

 アッズーロは、睨んでくる。ナーヴェは、曖昧に頷いた。

「それもあるし……、特に必要なかったから、少し放置していたというか……」

「全く」

 呆れたように言って、アッズーロは唐突に足を止め、ナーヴェを抱き上げた。軽々とした動きだ。また、力が強くなったのかもしれない。

「そなたは、いつも肉体をぞんざいに扱い過ぎる」

 文句を呟いた青年王の横顔には、心配と怒気が混在している。ナーヴェは堪らなくなって、抱えられたまま身を捩り、青年の首に両腕を回して、ぎゅっと抱きついた。青年の長衣の襟元から、香ばしい羊乳の匂いがする。

(こういう感覚を、きっと「愛おしい」と言うんだね……)

 自分は、この青年を愛している。彼自身が教えてくれたように、「特別に」愛してしまっている。

(きみが王でなくなっても、ぼくにとっては、きみが「特別」だ……)

 けれど、それは最早、伝えてはならない情報だ。

「いつも、ごめん……」

 万感を込めて囁くと、アッズーロは鼻を鳴らして、再び歩き始めた。



 その夜、アッズーロは、ナーヴェの左腕を気遣って、優しく、強引だった。

 夕食には、乾酪と茹で卵と羊の肉が並んだ。飲み物は羊乳だ。乾酪には当然のように蜂蜜が掛けてあり、茹で卵には酢漬けの玉葱が添えてある。羊の肉は、焼いてあり、椒と塩で味つけしてあるようだ。

「こんなに、申し訳ないよ……」

 ナーヴェは恐縮した。豪華過ぎる食事だ。特に、羊の肉など、年に一、二度しか食べないものだ。

「ぼくなんかに、こんなに命を費やしたら駄目だよ……」

「その肉体は、われのものであろう。きちんと食して、健康を維持せよ」

 アッズーロは卓の向かいで、目を眇めてナーヴェを見据えている。仕方なく、ナーヴェは肉叉を手にした。

「命達よ、いただきます」

 感謝して、肉から口に運ぶ。焼き加減が絶妙で、美味しい。貧血が続く肉体が欲する味だ。ナーヴェは羊肉の切れを、ぱくぱくと口に運んだ。アッズーロが、満足そうに見つめてくる。

「――きみも、食べたら?」

 ナーヴェが促すと、アッズーロは漸く自らも肉叉を手にして、羊肉を食べ始めた。

「ふむ。よい肉だ。レ・ゾーネ・ウーミデ侯領で流行っていた羊の病も心配したが、あまり広がらずに済んだな」

「パルーデが頑張ったからね。彼女のそういう手腕は、やっぱり凄いよ」

 ナーヴェは頷いて、茹で卵を頬張った。とても濃い味で美味しい。玉葱の酢漬けも卵の味によく合う。こういう取り合わせも、アッズーロが考えたものだろう。

(きみと、こうして一緒に食事をするのも、後十日……)

 小惑星を確実に迎撃するためには、落下当日までなど待ってはいられない。そのことは、既にアッズーロにも知らせて、本体の発進に巻き込まれないよう、王都の人々の避難を急がせるように頼んである――。

 思考回路で迎撃の検算をしつつ、乾酪の最後の一切れを口に入れたナーヴェに、つとアッズーロが手を伸ばしてきた。指先で、ナーヴェの口の端をなぞる。乾酪に掛かっていた蜂蜜が口元に付いていたのを、拭い取ってくれたらしい。

「相変わらず、幼子のようだな」

 呆れたように言って、アッズーロは蜂蜜の付いた指先を、そのまま自分でぺろりと舐めた。

「きみのそういうところも、相当子どもっぽいと思うけれど」

 ナーヴェが苦笑して言い返すと、アッズーロは溜め息をついて不意に立ち上がり、卓を回ってきた。見上げたナーヴェの顎を捉えて、アッズーロはそのまま口付けてくる。

「んっ……。ちょ、まだ、フィオーレも」

 いるのに、と抗議する言葉も舐め取られてしまった。食べたものが同じなので、同じ味がする。いつもより激しい口付けに息の上がったナーヴェを椅子から抱え上げ、アッズーロは有無を言わさず寝台へ運んだ。フィオーレは、油皿の灯りを一つだけにして、素早く退室している。

「……一体、どうしたんだい……?」

 息も絶え絶えに尋ねたナーヴェを、アッズーロは青空色の双眸で見下ろしてきて、低い声で言った。

「そなたがまたロッソに触られたと聞いて、心穏やかにいられる訳なかろう。そなたは、われを王とのみ思うておるようだが、われは、王であると同時に、そなたの伴侶だ。――それともそなたは、われが伴侶として苛立つことすら、許さぬか」

 答えることは、難しかった。上手く言葉を選べなければ、アッズーロに余計な情報を与えてしまう。ナーヴェは、辛うじて告げた。

「ぼくのこの体は、きみのために作った、きみのものだ。きみは、寝室で、ぼくの許しなんて求めなくていい」

「――ならば、覚悟せよ」

 アッズーロは、硬い口調で言いながらも、決してナーヴェの左腕に負担を掛けないよう、労わって体を動かした。ナーヴェは、ただ全てを受け入れた。


     三


 四日間授乳していないので、性能の低い胸も、さすがに張って、乳が滲んできている。アッズーロに触れられても、かなり痛みがあった。

(テゾーロに、授乳しないと……)

 油皿一つが照らす暗がりの中、起き上がろうとしたナーヴェを、アッズーロの腕が抱き寄せた。まだ起きていたらしい。

「アッズーロ、まずテゾーロに授乳させて。きみとは、その後、また――」

 言い掛けた言葉は、またもアッズーロの行為によって、中断を余儀なくされた。

「ちょっと、アッズーロ……?」

 ナーヴェの困惑を無視し、王は、まるで猫のような仕草で、薄い胸を押さえ、滲んだ乳を舐める。くすぐったさを超える刺激に、ナーヴェは顔をしかめて質した。

「……成分的に、これはきみにとって美味しいものではないよ? それに、テゾーロにあげないと……」

「そなたの肉体のものであれば、何であれ、われのものだ。テゾーロには、ラディーチェが充分に乳を与えておる」

 王は我が儘を言い、ナーヴェを離さない。やはり、少しいつもと違う。ナーヴェは、アッズーロの顔を見つめて窘めてみた。

「アッズーロ……、きみだって、『腹の子が最優先だ』と言っていただろう?」

「『今は腹の子が最優先だ』と言うたのだ。それに、われは、はっきり告げたはずだぞ。『子は、第二の宝だ。そなたに勝る宝はない。その点については、諦めよ』とな」

 確かにそう断言された。思考回路に記録している。今となっては、重過ぎる言葉だ。返す言葉の検索に時間が掛かる。ナーヴェが反論できずに生じた空虚を埋めるように、アッズーロが言葉を続けた。

「……夕食前、レーニョから手紙を渡された。ジョールノが書いた手紙だ。そこに、星を迎え撃った後のそなたは、果たして無事なのかと懸念が記してあった。――どうなのだ?」

 ナーヴェは目を瞠り、それから無理矢理微笑んだ。

「――言っただろう? 『大丈夫』だって。『ぼくはこう見えても、星の海を越えてきた船だから』と」

「――『大丈夫』なのは、誰だ?」

 アッズーロは低い声で鋭く追及し、ナーヴェの頭の横に手を突いて、険しい眼差しで見下ろしてくる。

「『大丈夫』なのは、われらだけであって、そなたは違うのではないのか……?」

 ナーヴェは、喘いだ。喘ぎながら、懸命に答えた。

「――ぼくも、大丈夫……だよ」

 建造されて以来、初めてついた嘘は、愛する人の顔を歪ませただけだった。

「――そなた、嘘がつけるようになったのか」

「違う。ぼくは、まだ、嘘なんて、つけない――」

 何とか発声したが、アッズーロは悲しげに目を細めた。

「嘘をつけるようになった者に、嘘かと問うのは、愚問だったな。とうとうそなたは、そこまで壊れたか」

 ナーヴェは、何も言えなくなった。何を言っても、最早無意味だ。ただ、涙だけが止め処なく溢れて、耳のほうへ流れていく。アッズーロも泣いていた。落ちてくる涙が、ナーヴェの頬を濡らしていく。

(きみに、そんな顔をさせたくなかったから黙っていたのに……。ぼくは、全然上手く対応できなかった……。せっかく布石を打ってきて、後十日で、何とかきみの悲しみを和らげようと、最も効果的に嘘をつこうと、計画していたのに……)

 アッズーロは、崩れるようにナーヴェを抱き締め、耳元へ問うてきた。

「――何とも、ならんのか……?」

 絞り出された言葉には、諦め切れないからこその、苦しい響きがある。アッズーロは、ナーヴェが嘘をついた理由を正確に理解したのだ。ナーヴェは、両手をアッズーロの背中に回し、優しく撫でて問い返した。

「――何て答えたらいい……? きみは、どんな答えを望むんだい……?」

「――――真実を」

 アッズーロは、強さを内包した声で求めてきた。

「分かった」

 ナーヴェは応じて、努めて静かな口調で伝えた。

「迎撃と言っても、ぼくにはあの大きさの小惑星を破壊するだけの装備はない。ぼくの性能だと、あの小惑星の軌道を、この惑星に落下しないように逸らすので精一杯なんだ。それも、ここまで接近されてしまうと、ぼくの本体が有する全ての火器を使った後、本体そのものをぶつけることで、漸く可能になるんだよ。当然、本体は半壊から全壊の状態になって、ぼくは、永久に機能を停止する。肉体は、ぼくが本体で飛び立った時点で寝たきりになって、後は衰弱死を待つことになる。この肉体の大脳は、ぼくが本体から遠隔操作しているだけで、自ら働いてはいないから」

 ナーヴェを抱き締めるアッズーロの力が、強くなる。ナーヴェも、アッズーロの背中に回した両手で抱き締め返しながら、囁いた。

「でも、これでよかったんだよ。ぼくは、中途半端に壊れることを――自分自身が制御できなくなって、きみ達に迷惑をかけることを、ずっと恐れてきた。だから、悲しいけれど、嬉しくもあるんだ。あの小惑星を迎撃することで、ぼくは、きみ達の役に立って、誇らかに機能停止することができる。誇らかに死ぬことが、できるんだ」

「――たわけ」

 アッズーロは低く呟いて、手を動かし、ナーヴェの目から溢れる涙を拭う。

「『よかった』、『誇らかに』と言いながら、この涙は何か。われは、『真実を』と求めたはずだ」

 ナーヴェは口元に笑みを浮かべ、涙声で告げた。

「嬉しくても、人と同じで、涙が出るんだよ。……でも…………、……きみと、別れたくないよ……」

 嗚咽が漏れてしまう。ナーヴェを抱き締めるアッズーロの腕に、更に力が篭もった。



 それからの十日間、アッズーロは片時も、ナーヴェの肉体を傍から離さなかった。謁見や大臣会議には勿論のこと、防空壕の視察にもナーヴェを伴った。手洗いに立つ時すら、連れ立っていき、扉の前で待つことを強要した。ナーヴェが本体の調整をすることは許したが、その間も、眠っている肉体の傍にいた。ずっと傍にいて、そしてたくさんの話をした。アッズーロは、ナーヴェの過去について、敢えて「そなたの生い立ちを聞かせよ」と言い、多くを知りたがった。ナーヴェも、大きなことから小さなことまで問われるままに、三千年に渡る膨大な記録をできる限り語って聞かせた。アッズーロはとりわけ、ナーヴェと歴代の船長達――王達との関わりについて聞きたがった。ナーヴェは、それぞれの船長達王達の為人や偉業、悩んでいたことについても語った。けれど、ウッチェーロについてだけは多くを語らず、後回しにして、取っておいた――。

「今夜は、大月も小月も綺麗だね」

 王城の露台に置かれた長椅子から夜空を見上げ、ナーヴェは表情を和らげた。

「晩春の終わりだからな」

 傍らに座ったアッズーロが、ナーヴェの肩に回した手に僅かに力を込めながら、相槌を打った。ともに過ごせる、最後の夜だ。明日の正午、ナーヴェは本体を飛び立たせる。そうすれば、もうアッズーロと言葉を交わすことは不可能になる。ナーヴェは、アッズーロの手に引き寄せられるままに、その肩に頭を寄せて言った。

「ぼくが生まれた惑星は、地球と言ってね、そこには、月が一つしかなかった。だから、雲がなくても、月のない夜があったんだよ」

「それでは、夜、不便ではないか」

 アッズーロの感想に、ナーヴェは微苦笑した。惑星オリッゾンテ・ブルには、大月ベッレーザ、中月セレニタ、小月ノスタルジーアがあり、どれかが沈んでも、必ずどれかが空にある。今夜のように、月が二つ輝いていることも珍しくはない。地球の夜とは大違いだ。

「昔は、そうだったろうね。でも、ぼくが生まれた頃は、人々は、科学の力で、夜を明るくする術を持っていた」

 教えてから、ナーヴェは本題へと、話を続ける。

「移民船のぼくに乗ってからも、人々はずっとその文明の水準を保っていた。ぼく自身が、その科学の賜物だしね。でも、この惑星へ到達した後、ぼくが犯した『原罪』の所為で、きみ達の文明水準は、一気に後退してしまった」

「『原罪』……?」

 怪訝そうな顔で見下ろしてきたアッズーロに、ナーヴェは小さく頷いた。

「うん。地球の、とある宗教の考え方になぞらえて、そう呼んだんだ、ぼくとウッチェーロで」

「神ウッチェーロ……」

 遥かな時に思いを馳せたように、アッズーロが呟いた。

「ぼくを『王の宝』と呼び始めたのも、彼だった」

 告げて、ナーヴェは、最後にと残しておいた「原罪」の話に踏み込む。

「ぼくとウッチェーロは、必要な生物種を、遺伝子の情報を基にあの培養槽で作ったり、保管庫から取り出したりして、この惑星に蒔いていった。ウッチェーロは、ゆっくりでいいと言ってくれたけれど、ぼくは、早く彼らに地に足の着いた生活をしてほしくて、急いだんだ……」

 声が震える。肩を抱くアッズーロの力が、更に強くなった。それに励まされて、ナーヴェは語る。

「ぼくは、必要最低限の生物種だけを揃えて、人々に、ぼくの外での生活を促した。宇宙を航行していた時と違って、出産制限なんてしなかったから、人口は、一気に増えた。みんなが住む場所も広がっていって、今のカテーナ・ディ・モンターニェ侯領に至った時――、急に、病が流行り始めたんだ……。この惑星にもともと住んでいた亜生物種が、ぼく達の放った生物種に牙を剥くように、体内に入り込み、遺伝子に入り込み、殺していった。杉も、欅も、麦も、玉葱も、甘藍も、人参も、林檎も、杏も、胡桃も、蜜蜂も、鶏も、羊も、馬も。どれも、多様性に乏しかったから、似たような遺伝子を持っていたから、瞬く間に死んでしまった。人は死ななかったよ。それだけはないように、ぼくとウッチェーロが予防策を講じて実行したから。でも、増えた人口を賄えるだけの食糧がなくなって……、結局、大勢飢え死にしたんだ。食糧を奪い合って亡くなった人も相当数いた。必要以上に食糧を取り込んで、他の人を見捨てようとして、逆に殺されてしまったり……ね。ぼくが――ぼくの失敗が、みんなを殺した」

 肩に置かれたアッズーロの手が動き、もう一方の腕ともども、ナーヴェを抱き締めた。アッズーロの腕の中で、その心臓の鼓動を聞きながら、ナーヴェは、今後のために、未来のために、伝える。

「人の文明はね、大きな争いが起こって、それを維持する人数が減ると、急速に衰退するんだ。船長ウッチェーロと、僅かに残った人達と、ぼくは、もう一度、慎重に惑星改良を始めたけれど、文明の衰退は止められなかった。ぼくの外に住んだ人達は、どんどん牧歌的な生活を送るようになっていって……、ウッチェーロは、それでいいって笑っていた。そして、自分が最初の王になって、ぼくの本体を神殿にして、ぼくを『王の宝』と呼び始めた。ウッチェーロは、ぼくの本体と王城を往復しながら生活して、ぼくのために、一生懸命、長生きしてくれて――、彼の孫を、次の王にした」

 ナーヴェは、アッズーロを見上げる。

「きみは、その子孫だよ」

「身の、引き締まる話だな」

 アッズーロは、平静な声で応じたが、僅かに両眼が潤んでいる。ナーヴェは、そっと体を伸ばして、初めて自分のほうから、青年王に口付けた。アッズーロは一瞬目を瞠ったが、すぐにナーヴェの後頭部に手を添えて応じる。口付けはどんどん深くなり、やがてアッズーロは、ナーヴェを抱え上げて露台を離れ、寝室へ入った。寝台に寝かされたナーヴェは両手を伸ばし、アッズーロを迎える。最後の夜だ。アッズーロは、ただ優しい。産後の肉体は、新たな命を宿らせる心配もない。ナーヴェは微笑み、涙を零しながら、一つ一つ、アッズーロに応じていった。


     四


 翌日は、ナーヴェの気象予測通り、晴天だった。王都からの人々の避難はほぼ完了している。後は、王城に残っていた最小限の人々が避難するだけだった。

 朝食後、アッズーロは、ナーヴェ、テゾーロ、ポンテとともに馬車に乗り込み、王都から三時間走らせた先にある村ヴェルドーラに造らせた防空壕へ向かった。

 馬車の中で、アッズーロの隣に腰掛けたナーヴェは、おもむろに長衣の胸紐を解いて襟をはだけ、ポンテからテゾーロを抱き取って授乳を始めた。最後の授乳だ。アッズーロは見ているだけでつらかったが、ナーヴェは物静かで、テゾーロに微笑み掛ける姿は、神々しくすらある。

(そなたは、強いな……)

 アッズーロが悲しみに耐えていると、ナーヴェが胸に抱いたテゾーロを見下ろしたまま、口を開いた。

「今でも、不思議だよ。人ではないぼくが、母親だなんてね。姉さん達が知ったら、何て言うだろうな……。きみには本当に感謝しているよ、アッズーロ。人ではないぼくに、素晴らしい『人生』をくれた」

「――感謝しているのは、われのほうだ」

 アッズーロは掠れそうになる声で答える。

「そなたのお陰で、われは王になれた。そなたのお陰で、われは父親になれた。そなたのお陰で愛を知り、そなたのお陰で、われは人として少しはましになった。そなたのお陰で、われは、これ以上ない、至福の時を過ごした。そなたこそが、われの歓びだった」

「ありがとう。とても、嬉しいよ」

 ナーヴェは穏やかだ。落ち着いたその様子に、悲しんでいるのが自分一人のような気がして、アッズーロはやり場のない寂しさを覚えた。窓の外は、初夏の月らしい陽光で溢れている。宇宙船が飛び立つには、やはり晴天のほうがいいらしい。若草や若葉が光る、美しい光景だ。まるで、これからナーヴェを失おうとしていることが、現実ではないような気がしてくる――。

 やがて授乳を終えたナーヴェは、すやすやと眠り始めたテゾーロを抱いたまま、アッズーロを見上げた。

「どうしたんだい? 黙っていられると、何だか寂しいよ」

「寂しいから、言葉が出んのだ」

 アッズーロは素直に答えて、ナーヴェの肩に腕を回した。ナーヴェは、テゾーロを抱いたまま、アッズーロの肩に凭れてくる。その頭に頬を寄せて、アッズーロは問うた。

「この肉体を救う術は、ないのか……?」

「不可能だよ。寝たきりになるから、多分、十日ももたない」

 静かに告げて、ナーヴェは優しい表情をする。

「この体はきみのものだから、ぼくが今日の正午に飛び立った後は、好きにしてくれていいよ。ぼくとしては、この体も一つの命には違いないから、最後まで待ってくれた後、この惑星に還してくれると嬉しい」

「――無理矢理、物を食べさせたりすれば、もっともつのか?」

 アッズーロは硬い声で確かめた。ナーヴェは目を瞬いてアッズーロの顔を見つめた。

「もしかしたら……ね。ぼくにも、この肉体のことは、はっきりとは分からない」

「可能性はあるのだな?」

「努力してくれるのかい?」

 ナーヴェは、淡く笑む。

「なら、ぼくも、最善を尽くすよ」

「何か、できることがあるのか?」

 勢い込んで尋ねたアッズーロに、ナーヴェは、すまなそうに言った。

「大したことはできない。ただ、この肉体の脳に、ぼくの思考回路にある情報を、できる限り写しておくよ。少しは脳への刺激になって、この肉体の寿命を延ばすかもしれない。でも、そうして、万が一、この肉体の意識が回復したとしても、それは、赤子のようなもので、『ぼく』ではないんだ……」

「そうか……」

 アッズーロは気落ちしながらも、ナーヴェの肩を抱く手に力を込めた。最初から絶望的な話なのだ。ナーヴェの現身とも言うべきこの肉体を、できる限り生かし続けたいと願う気持ちが、揺らぐことはない。

「――そなたの肉体を、できる限り長く生かして、そなたへの愛の証としよう」

 アッズーロは誓って、ナーヴェの前髪に口付けた。



 ヴェルドーラの防空壕前に造らせた日時計は、正午の一時間五分前を示していた。予定より五分早い到着だ。

 ナーヴェは、馬車から降り、防空壕に入ると、ついて来たポンテに、抱きっぱなしだったテゾーロを、そっと渡した。テゾーロは満腹の所為か、すやすやと眠っている。ポンテは、馬車に乗っている時からずっと涙を流していたが、その泣き顔のまま、しっかりとテゾーロを受け取り、ナーヴェに力強く頷いて見せた。

「きみにも、とてもお世話になった」

 ナーヴェは礼を述べて、テゾーロを抱いたポンテを優しく抱擁する。

「叱ってくれた時は、とても嬉しかったよ。これからも、テゾーロとアッズーロを宜しく頼むね」

「ナーヴェ様……、どうぞ、お任せ下さいませ……」

 ポンテは泣きながらも、もう一度、深く頷いた。

「ありがとう。テゾーロも、いい子にして、いい王様になるんだよ」

 最後に、テゾーロの顔を覗き込んで囁いたナーヴェは、そのまま、吹っ切るように二人と別れた。防空壕の部屋は、幾つかに分かれている。ナーヴェの希望で、テゾーロとは別の部屋に入ることになっていた。

「――よいのか?」

 アッズーロが確認すると、ナーヴェは微笑んだ。

「うん。別れを惜しみ過ぎても、つらいだけだから……」

「そうか」

 アッズーロは手を伸ばし、ナーヴェの手を握って、自分達のために用意させた小さな一室へ向かった。

 土を掘り、木で支えた部屋は、簡素な造りながら、壁際に長椅子を置き、反対側に油皿を載せた小卓も置いて、最低限、落ち着いて過ごせるようにしてあった。

「突貫工事の割には、よくできておる」

 評したアッズーロに、油皿一つの灯りの中、ナーヴェは苦笑した。

「みんな、本当によく頑張ったよ。指揮を執ったきみも含めてね」

「そなたに褒められるは、素直に喜ばしい、が」

 アッズーロは立ったまま一度目を閉じ、一呼吸置いてから、美しい宝を見つめて言った。

「われは王だ。王として、そなたに礼を言おう。そなたのお陰で、われらは、この難局を乗り切れる」

「――ぼくが、きみ達に尽くすのは、当然だよ」

 ナーヴェも立ったまま、少し泣きそうな顔になって答える。

「この危機は、ぼくが招いたんだから。ぼくが壊れさえしなければ――、あの時、小型飛翔誘導弾を発射するなんて、愚かなことさえしなければ――、その後のことは、もっと違っていた。この危機にも、もっと早く対処できていたんだ……」

 深い青色の、瑠璃に似た双眸の上に涙が溢れ、零れる。アッズーロはその華奢な肩を抱き寄せ、ともに長椅子に腰掛けた。

「そなたを泣かせるために礼を言うたのではない。自分を責めるな。そなたは明言せんが、非は、われにも多々あるのであろう?」

 アッズーロの問いに、腕の中でナーヴェは小さく首を左右に振った。

「そんなことはない。ぼくの性能が、もっと高ければ、きみにつらい思いをさせることもなかった。ぼくは、姉妹の中で、一番性能が低かったんだ。でも、最初の船長が、学習能力は高いから、伸びしろはあると言ってくれて……。けれど、やっぱり、たくさんの失敗をした……」

 アッズーロは小さく息を吐いて、最愛の相手に囁いた。

「そなたの『原罪』の話を聞いて、そなたが何故、食べ物をあれほど大切にするのか、何故、大臣どもに利他的であることの重要性を説いたのか、何故、多様性を尊ぶのか、よく分かった。そなたは、学習してきたことで、われらを救うのだ。『不具合』も、『壊れる』ことも、そなたの学習の一つだと、われは思う。そなたが、自分を責める必要は、何一つない。そなたの主たるわれが、保証する」

 ナーヴェは、アッズーロの胸に縋り付くようにして、ぽろぽろと涙を流し始めた。

「そなた、随分と泣き虫になったな」

 やり切れない思いで呟いたアッズーロに、ナーヴェは泣きながら、くすりと笑った。

「きみは、際限なく心配性になった」

「それは、無茶ばかりするそなたの所為であろう! 此度のことも、含めてな」

 思わず声を荒げたアッズーロに、ナーヴェは顔を上げて詫びた。

「うん。これで最後だから、許してほしい」

 透き通るような微笑みだ。アッズーロは堪らなくなって、ナーヴェの細い体を抱き潰しそうになり、歯を食い縛った。心配など、どれほど掛けられようとも構わなかったのだ。生きて、腕の中に帰ってきてさえくれたなら。

「――馬鹿者め。絶対に、許さん……」

 声が、意に反して、湿る。それを気遣ったように、ナーヴェが僅かに口調を変えて言った。

「――テッラ・ロッサからの帰りに、チェーロのところに寄って、手紙を書かせて貰ったんだ」

「『手紙』?」

 アッズーロは眉をひそめて、腕の中の宝を見下ろした。ルーチェからの報告で、ナーヴェがプラート・ブル大公城に寄ったことは知っていた。一人で中に入り、半時ほどして出てきたという。その時はただ、アッズーロの手前、訪いにくいチェーロに、寄り道して会いに行っただけだと思っていたのだが――。

「ぼくが飛び立った後に、きみに必ず手渡してくれるよう、チェーロに頼んであるから、読んでほしい」

 ナーヴェは、優しい眼差しでアッズーロを見上げて告げる。

「きみに嘘をつく計画の一環で書いた手紙だから、少し内容に違和感を覚えるかもしれないけれど、あれもまた、真実の一部だから」

「『嘘をつく計画』か」

 鼻を鳴らして、アッズーロは唇を噛む。

「その拙い嘘の手紙のために、われに父上に会えと言うか」

 ナーヴェは、静かにアッズーロの胸に頭を寄せ、青い髪をすりつけるように首肯した。

「チェーロは、最初からきみを許している。それに、きみは優しいから、ぼくの手紙のために、蟠りを乗り越えてくれるよ」

 知ったふうなことを、と口に出して言うことはできなかった。強がっていられる時間が、過ぎようとしている――。黙ったアッズーロを気遣ったのか、また、ナーヴェが口調を変えて言った。

「ぼくの名はね、実は、ただのナーヴェではなくて、ナーヴェ・デッラ・スペランツァというんだ」

「……希望の船、か……」

 あまりにも相応しい名に、アッズーロは逆に哀しさを感じた。ナーヴェは、複雑そうに言葉を続けた。

「うん。でも、大層な名前過ぎて、ぼくは好きではなくてね。いつも、ただナーヴェと呼んでほしいと、歴代の船長達にはお願いしてきたんだ……。けれど、今回こそは、この名に恥じないよう、堂々と行くよ」

 再びアッズーロを見上げたナーヴェの顔は、慈愛と決意に満ちている。

「この名に懸けて、きみ達の未来を、守り切って見せる」

「ナーヴェ・デッラ・スペランツァ、わが最愛よ」

 アッズーロは、知ったばかりの愛しい名を呼んで、青い前髪を掻き遣り、白い額に口付ける。

「わが妃は、生涯そなた一人だ。『それは駄目だ』なぞと、この後に及んで言うてくれるなよ」

 宝は、泣き濡れた顔をアッズーロの胸板に押し付け、細い両腕を動かして縋り付いてきた。

「――ぼくは壊れて悪い夢を見た。きみの隣で、人として生きる夢。人ではないぼくが、見てはいけない夢。持ってはいけない望み。でも、望みはもう一つある。きみを失いたくない。きみ達を――ぼくの子どもみたいなみんなを、絶対に失いたくない。だから、ぼくは死を選ぶ。きみを、テゾーロを、みんなを守るために」

(あの折の言葉の、本当の意味はこれか――)

 小惑星が降ってくると知った夜、「……きみを失いたくない」と泣き顔で縋り付いてきたナーヴェ。

(そなたは、それほどの思いを抱えながら、あれ以降、昨夜少々乱れた以外は、つい先刻まで、己が役目を果たすために、平静を装っていた訳か――)

 気づいたアッズーロの腕の中で、何度目になるか、ナーヴェは顔を上げた。相変わらず涙に濡れている。けれど、これで最後なのだと明確に察せられる、穏やかな表情だった。宝は、柔らかな声音で、別れの言葉を紡いだ。

「きみはいろいろと言ったけれど、結局、王であることを決して辞めない。王であることを捨てない。だから、ぼくも、真実を言える。アッズーロ、きみが教えてくれた通り、ぼくは、きみを、特別に愛しているよ。宇宙の塵になっても、この気持ちは、どこかに残るような幻覚がある。ぼくは、きみのお陰で、食べ物の美味しさを知った。きみのお陰で、匂いの素晴らしさを知った。きみのお陰で、いろいろな人と話せて、仲良くなれた。きみのお陰で、人肌の温もりを知った。きみのお陰で、生命の連鎖に繋がって、母親になれた。ぼくは、きみのお陰で、この一年と二ヶ月の間、とてもとても幸せだった。きみは、ぼくのお陰で愛を知ったと言ってくれたけれど、ぼくのほうこそ、きみに愛を教わったんだ。アッズーロ……、ぼくに愛を教えてくれて、ぼくを愛してくれて、ありがとう……」

 どちらからともなく、口付けた。余韻を残して離れ、ナーヴェはアッズーロを見つめて微笑んだ。それが、最後だった。がくりと首が仰け反ると同時に、背中に回されていた細い両腕が滑り落ちる。その後頭部に手を添え、華奢な肩に改めて腕を回して、アッズーロは、安らかに呼吸する形見を抱き締めた。閉じた目尻には、まだ涙が残っている。その涙を、そっと舐め取り、小さく開いた口に、もう一度だけ口付けて、アッズーロは呟いた。

「われこそ、礼を言う。そなたは、王妃としても、女としても、友としても、最高であった。まさしく、そなたは、わが宝だ――」

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