第38話 仲間を求めて
「ノリス……仲間になってくれるのか?」
俺の問いかけにノリスは恥ずかしそうに頷いた。
「ロジカ1人じゃ心細いでしょ、私ならこの子達もいるから急にモンスターが現れたりしても大丈夫だし」
ノリスは自分のテイムしたモンスターを紹介するように見せてきた。
って言ってもテイムしたのはスライムとチキンベアだけか……
両方とも最底辺のFクラスのモンスターだ。
そういえば俺がテイムしたら、テイムした相手の能力は上がるけど、ノリスをテイムした場合、ノリスがテイムしたモンスターの能力は上がるのか?
「ロジカ、また悪い癖がでてるぞ」
「すぐ、ひとりで考え込むんだから」
「あっ、悪い……じゃあ本当にテイムしていいんだよな?」
「そう何度も確認されるの恥ずかしいよ……大丈夫だから、いいよ……」
改めてこう確認すると告白でもしてるような気持ちになるな……
パルマもなんだか、複雑そうな表情で俺達を見てる。
「テイムする」
ノリスに表示されていた、ウィンドウがノリスに吸い込まれるように入っていった。
テイム成功だ。
いつも通り、あっさりとしたテイム後だ。
テイムが成功しても見た目にはなんら変化はないが、ノリスは自分の身体を確認し始めた。
「不思議な感じ、頭がすっきりしたっていうか……すごく身体から力が溢れてきてる気がする」
「テイムするとみんなそんな感覚になるみたいなんだ、実際能力が上がってると思うよ」
「ほぅ、この小娘が強くなったと……」
ゴクーが変なところに食いついてきた。
「ちょっと待って、私は力上がって言っても戦えるようなタイプじゃないからね、変な考えをするのはやめてね」
「クックック、また簡単に俺にさらわれるのがオチだろうな」
「もうそんな事されません〜」
ノリスがゴクーに向けて舌を出した。
「はぁ、なんだかんだノリスもロジカにテイムされちまったか……」
パルマが遠くを見るような目で俺とノリスを見た。
「フッ、パルマ、嫉妬してるのか?」
「かもな……でもロジカなら大丈夫だ、ロジカは俺たちの中で一番優しいやつだからな」
パルマは俺をいつも認めてくれる、それでいつもれ助けられてた。
「パルマ……本当にありがとな、お陰で前に進めそうだ」
パルマは照れ臭そうに鼻を指で擦った。
「俺の力じゃない、ロジカが自分で立ち上がったんだ、さぁ早く仲間を迎えに言ってやれよ」
確かに、少しでも早くヤヨイ達と会いたい。
すぐに迎えに行きたい!
「私はいつでも準備できてるよ」
ノリスが笑顔で俺に話しかけた。
「よし、じゃあ行くか!」
「おい」
話を終えて小屋を出ようとするときにゴクーが話しかけてきた。
「これから先、強いモンスターと戦う可能性があるんだろ? その時は手を貸してやる、何かあれば言いに来い」
「おいゴクー、それは俺の言うセリフだろ、なんでテイムされてるゴクーが決めるんだよ」
「俺はパルマの代わりに言ってやったつもりなんだがな」
「……ったく、口の減らない奴……」
パルマとゴクーの関係ってなんかいいな。
いいコンビって感じだ。
「どこもテイムした相手には苦労するんだな」
「そりゃそうだ、みんな感情があってそれをぶつけ合ってるんだからな」
パルマと一緒に苦笑いした。
◆◇◆
パルマと別れてテイムしたノリスと一緒に行動を開始した。
仲間を探そう! なんて意気込んでしまったけど、まずはしばらく帰ってなかった拠点に戻って準備をするべきだってことで、俺達は拠点に向かっていた。
「ノリスがテイムしたのはその二匹だけなのか?」
ノリスの後ろにはスライムとチキンベアがテクテクと付いてきている。
チキンベアは、熊ベアなんて名前が付けられてはいるが、身長は俺の腹までくらいしかなくて、臆病で可愛らしい、ペットとしても飼えそうなモンスターだ。
「そうだよ、テイムしたら2人とも可愛くて、他の子がテイムできなくなっちゃって……」
ノリスは昔から一度気に入ったらずっとそればっかり持ってたりするタイプだからな、新しいモンスターをテイムして今のモンスターを使わなくなっていくのが嫌なんだろうな。
「あっ、シュトロイドホリーク=バロン、疲れちゃったの? 抱っこしようか?」
ん? シュトロイドホリーク=バロン……?
「こらこら、よそ見して歩いてたら危ないよシュシュラベル=ドリーレミィ」
ん? んんん? シュシュラベル=ドリーレミィ……?
まさか、この二匹の名前じゃないだろうな……
「可愛い名前でしょ、このスライムちゃんがシュシュラベル=ドリーレミィで、チキンベアちゃんがシュトロイドホリーク=バロンって名前なんだよ」
「覚えられるか! 長いわ!」
なんてネーミングセンスなんだ……
モンスターに名前を付けてやるのはいいことだけど。
「変かな? いい名前だと思うんだけどなぁ」
「変かはわからないけど長いよ……二匹ともちゃんと反応してくれてるか?」
「ま、まだ名前呼んだらどっちも振り向いちゃったりするけど……これから分かってくれると思うの」
ダメだこりゃ……
「あっ、見えてきたねロジカのお家」
唐突なノリスの言葉だった。 話をしているうちに随分近くまで来ていたみたいだ……
拠点……
数日いなかっただけで、ずいぶん久しぶりに感じるな……
ここに誰もいないなんてはじめての事だ。
前までは静かにしてて欲しい時でも、フランとセリルがバタバタ暴れまわって家を壊して。
ヤヨイもわけわからないことを始めてナイナに怒られてで、いつだって騒がしかったのに。
それを思い出すが嫌だったから拠点に一人で帰ってこれなかった……
「ほら、ロジカ! また落ち込んでるよ、吹っ切れたんでしょ、元気出して!」
「あっ……」
そうだ、俺はもう気持ちが整理できたんだ、寂しいけど、これからみんなを迎えに行って、また前みたいなワイワイとした拠点に戻すん……
「あっ! ロジカおにぃちゃんだ!」
えっ……?
今の声……
「本当だ、ロジカおにぃちゃーん!」
セリル?
フラン?
拠点の出入口付近からこっちを向いているセリルとフランが見える。
なんで2人が拠点に……?
「おーい、ナイナおねぇちゃーん! ロジカおにぃちゃんが戻ってきたよぉぉ!」
ナイナ!? ナイナも帰ってきてるのか?
家の中からバタバタと騒々しい音が聞こえる。
ものすごい勢いで出入口のドアが開きナイナが出てきた。
戻ってきてくれてたんだ……
ナイナは俺を見るなり号泣し始めた。
「よ、よがっだぁ……ロジカざん、もう帰ってきてぐれないと思いまじだぁ……」
フランとセリルは俺に抱きつき泣き出した。
「「えぇぇーん。 ロジカおにぃちゃん、会いたかったよぉぉ」」
なんだ……俺の考えすぎだったのか…………
もうみんなに会えないと思ってた。
みんなに謝って、迎えに行こうと思ってたのに……
「よかったね……ロジカが思ってるよりもみんな、ロジカの事を大切に思ってたみたいだよ」
「…………うぅ……ん……」
胸につかえていたものがようやく抜けていった。
それと一緒に抑えてたものが止まらなかった……
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