第37話 テイマーとして俺がやりたいこと
「……で、それから関係者以外の者は城から出ていくように言われて一人で帰ってきたってことか……」
「……あぁ……」
城での騒動から数日経った。
拠点には帰ると辛くなるからフラフラと元々住んでいた街に俺は帰ってきていた。
仲間がみんないなくなってしまい、途方に暮れていた俺はパルマとノリスに相談しに来ていた。
昔から3人で隠れ家のように使っていた小屋に集まって城での経緯を話した。
昔は3人だったけど今は仲間のモンスターを2人が連れてきてるから狭く感じる……
事あるごとにトラブルに巻き込まれる俺の話を始めは冷やかし半分で聞いていたみたいだが、落ち込んでる俺の様子を察して2人は次第にまじめに相談に乗ってくれ出していた。
「ソウルガンドってギルドは何をしに来たんだろうね、不気味……」
ノリスはソウルガンドに不快感を感じていた。
あのギルドは城に来て何をしようとしていたのかが謎だ、最後に作戦は失敗だったと言っていたのも気になる。
「ほんとすごいなロジカは、最近のここら辺で起きるの全部に関わってるんじゃないか?」
「……」
パルマが和ませようと思って言ってくれた言葉なんだろうけど、今は受け止めきれなかった……
一瞬で仲間が全員いなくなってしまった辛さは2人にはわかるはずがないんだ。
一人で考え込んでると、どんどん自分を追い詰めて言ってしまう……
俺がもっとしっかりみんなを守ってやれれば、ヤヨイもフランもセリルもいなくなることはなかった……
ナイナだけは城に残ってるはずだけど、復興作業で忙しいだろうし、最後の様子じゃ戻ってきてくれるかわからない……
「ロジカ、悩んじゃってるね……」
「こいつが、考え込むのは珍しいことじゃないだろ」
そりゃ悩むだろ……
お前らだって俺と同じ立場になればわかるはずだ。
「なんだ、骨のある奴だと思ってたのにウジウジと、情けない男だ」
一緒に話を聞いていた魔神猿のゴクーが痺れを切らすように話しかけてきた。
「ゴクー、ロジカは落ち込んでるんだ、今はそっとしといてやれよ」
「落ち込んでれば解決するのか? ウジウジしているところをお前ら2人に見せて慰めてもらったらこいつは満足して帰るのか? 違うだろ」
なんで、何も知らないこいつにそんな事を言われなきゃいけないんだ……
「なんだその目は、俺に対して苛立ってるのかよ」
「そんなに言われる筋合いはない、何も知らないくせに!」
「知らねえよ! 知りたくもない! だがな、前にパルマが言ってたろ、テイマーってのは迷ったらいけないってな」
ゴクーを仲間にするときにパルマが言っていた言葉だ。
「お前が自信を持って仲間を引っ張って行かなかったから今の結果があるんだろ? 何があったかに興味なんてないが信念も通せない奴に誰が着いていくんだ!?」
……悔しいがその通りだ……
モンスターに言い負かされてしまった……
「ゴクー、ロジカの気持ちを察してやれよ常に前を向いていられない時だってあるんだ……そう言う時に弱音を吐いたっていいだろ」
「いいんだ、パルマ……ゴクーの言う通りだ」
信念……
俺のテイマーとしての信念ってなんだ。
テイマーになってバタバタしているうちに初めから強くなってる仲間達のお陰で振り回されるばかりだったけど
それでも色々あった中でなんとかやってこれてしまった……
そんな中で俺がヤヨイ達にしてやりたかったことってなんだ。
俺はテイムできる奴らをただテイムしていけばいいと思ってただけなのかもしない……
「ロジカは私達の中で一番優しいからね、仲間が大事だったんだよね」
優しい……か。
ノリスに対するサーチウィンドウを確認すると、黄色になってる。
何故だ? 前と何が変わったんだ、ノリスのサーチウィンドウはずっと赤色でテイムはできそうになかったはずなのに。
でも、俺はもう、仲間なんて欲しくない……
またいなくなって悲しい思いをするくらいなら、テイムなんてしたくない……
「フッ、同じ人間でも随分違うものだな、パルマならこんな時でもすぐに次のモンスターをテイムしに行きそうなもんだがな」
「そうかもな、でもなゴクー。 そんな俺とロジカをどっちがいいって比べられるものじゃないだろ? ロジカは仲間が大切だから落ち込んでるんだ」
「なんだ、パルマは仲間が大切じゃないのか?」
パルマはため息を吐く。
「そうじゃない、解決方法の話だ。 俺は違う仲間を求めて過去を忘れようとする、ゴクーもわかってる通りそういう性格だからな」
「それが普通だろ」
パルマとゴクーは似てる、だからテイムできたのかもな。
「でもな、ロジカは大切にしてるんだよ、無くした仲間だって……だから胸を痛めてるんだ、そんなロジカが好きだから俺もノリスもずっと友達でいるんだ」
……ずっと我慢してたのに目の奥が熱くなって止まらなくなってきた。
「弱い奴だ……」
ゴクーはどこまでも厳しいな……パルマも大変だ。
パルマもノリスも本当にいい奴だ、本当に友達でよかった。
でも俺は……
大切なヤヨイ達をずっと守っていたかった。
仲間としてずっと一緒にいたかったのに……
まもる……?
俺は自然に前からみんなの事を守るって言っていたような気がする……
それが……俺のやりたかったこと……
「俺は、守りたかったんだ」
「えっ? どうしたの、ロジカ?」
「気持ちに整理がついたか?」
なんとなくわかった気がする、テイマーっていうのは優しい者がなれるジョブなんだ。
仲間と一緒いて、仲間達と成長していく、その中で自分はどう立ち振る舞っていくべきなのかずっと考えていたけど、ようやくわかった気がする。
防御力が高くなっていると感じたことがあったけど、あれは仲間達を守るための俺のテイマーとしての成長の証だったんだ。
パルマは仲間とともに一緒に戦っていく、攻撃的なテイマー。
ノリスは仲間をフォローしたり、回復したりする、後衛のテイマー。
そして俺は仲間の先頭にたって仲間の壁になって守りながら戦っていく守備のテイマーだったってことか。
「俺は守護のテイマーだったんだ」
パルマとノリスが不思議そうな顔で俺を見る。
唐突すぎて意味がわからなかったようだ。
「吹っ切れたようだな」
ゴクーがニヤリと笑ってる。
厳しいことを言ってたけど、ゴクーなりの励ましだったのか。
「俺はバラバラになった仲間を連れ戻す、もう二度と迷わない」
守りきれなかった仲間達を、今度こそ守ってみせる!
「急に逞しくなったな、ゴクーの言う通り吹っ切れたみたいだな」
パルマがうれしそうに笑ってる。
「相談してよかった、すごくすっきりした気分だ」
「いい顔になったね、よかった」
「ああ、これから自信を持って仲間を迎えに行ってくる!」
ノリスが俺に顔を寄せてきた。
「ロジカ、1人じゃ心細いでしょ私も手伝わせて」
「えっ……!?」
いきなり顔を寄せてこられてドキッとしてしまった。
《テイム可能です、テイムしますか?》
こんなタイミングで……
ついにノリスのサーチウィンドウが青くなった。
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