第36話 仲間がいなくなっていく……

「悲しいねぇ、ようやく会えたと思ったらこんなモンスターになってるんだもんなぁ」


ヅィリィが気を失っているヤヨイに向けて敢えて言葉を投げかけた。


ヤヨイに反応はない……


小さくだが呼吸はしてる、今のところは無事なようだけど、一回のバーストであれだけ消耗してたのに、その状態でもう一度使ってしまったんだ……


ダメージは計り知れない……



ヤマトは「ヤヨイ」と呟いた後、しばらくヤヨイを見て止まっていた。



「ヤマト! 言葉が通じるんだろ? ここに何をしに来たんだ?」


俺の問いかけにヤマトは反応したが、何も返事はしなかった。




「予想外だったな、ヤマト……」


ヅィリィがヤマトに話しかけた。



ヤマトはヅィリィに顔を向けた。

ヅィリィの顔を見る、ヤマトは不快そうな表情をしている。



「その女が貴様が守りたかった者だったか……こんなところで会うなんてなぁ」


ヅィリィはヤマトに対してもニヤニヤと煽るように話しかけている。



ヤマトの身体に纏わり付いている、青白い電流が徐々に強くなっている。


ヅィリィに対して苛立っているのかもしれない。



「さぁ早く目的を果たしていけよ、いいチャンスなんだ」



「グウゥゥゥゥゥ……」


ヤマトの電流がさらに強くなり、電流の弾ける音が聞こえ出した。



ヅィリィとヤマトの会話の意味はわからないが、ヤマトが、そしてソウルガンドがここに来たのにも練劇会以外の目的が

あったのかもしれない。



「グウゥォォォォォォォォォ!」



ヤマトが咆哮を上げた。



また動き始めるのか!?



ヤマトは俺に迫ってきた。



「えっ、俺!?」


今までの流れから急に俺に来るはずがないと思っていた……

思わず声が出てしまった。


ヤマトは驚いている俺の腕からヤヨイを奪い取った。



「あっ、ヤヨイ!」



一瞬の出来事だった……



ヤマトはヤヨイを奪い去りその場を離れていった。



「ヤマト! 貴様逃げるつもりか!?」


ヅィリィがヤマトにけしかけるが、ヤマトは素早く走り去り城からいなくなった。



頭の中が真っ白になっていた……



ヤマトがヤヨイを連れて行ってしまった。



「ロジカさん! 何してるんですか!? ヤヨイが連れていかれちゃったんですよ!」


ナイナが、俺に迫ってきた。


泣いてる……




なんて言えばいいんだ……



ヤヨイはヤマトのことを探すことが目的だった。

けど、そのヤマトが見た目がモンスターになってて連れて行って……


言葉も喋れて反応もしてた、城を襲ってきた凶暴性は否定できないけど、何か理由があって、ヤヨイを連れて行った……


でもそんなことナイナがに伝えても納得してくれる訳ないだろうし……




ダメだ、頭を整理してるつもりだけど、どうするべきなのかわからない……




「残念だよ……」


王が立ち上がった。


ヤマトが視界からいなくなったことを確認して、王は試合場を離れ城の中へ入って行った。



隠れていた城の者たちがヤマトがいなくなったことを確認し一斉に動き出した。



「被害を確認しろ!」


「救護班を最優先だ、医務室だけじゃ足りない、部屋を確保しろ!」


「まだ、油断はできない、残った兵士達は城の警備を継続だ」



それぞれが動き始め、騒がしくなってきた。



「なんで、何も言ってくれないんですか……」


ナイナは何も答えられない俺に愛想をつかすように塞ぎ込んで泣いていた。



「ナイナ! ちょっと手伝って!」


城の者に声をかけられて、ナイナは慌てて涙を拭って立ち上がった。


城の緊急事態で人手が足りないのか、ナイナはその後も様々な人から声を掛けられていった。



「ごめんなさい、ロジカさん、私行きます……」


ナイナは俺の顔を見ずに俺の元を離れていった。



何も言えなかった……




そういえば、フランとセリルは?


さっきから声が聞こえない……




キエルが、フランとセリルを担ぎ抱いている。


二人とも寝ているようにおとなしくしてなってる。



「おい、フラン、セリル!」


二人を呼びかけても何も返事がない、この男いつの間に……

何をしたんだ?



キエルの近くに魔法陣が浮かび上がる。


「この子達は預からせてもらう……」


次々になんでそんなことが起こる……


「そんな……無理やり」


「元々この子達はうちのギルドの子だ」


「そうだけど、今は……」


「ハーハハハハッ! バラバラだなお前達の仲間達は」


ヅィリィも話に入ってきた。



「ヅィリィ、すぐにそういうことを言うな、俺達も計画が失敗だったんだ、いつまでもここにいるべきじゃないだろう」


計画が失敗……?

ソウルガンドはこの大会の中で何かをしようとしてたんだ。



キエルとヅィリィはフランとセリルを連れて魔法時の中で消え始めた、ワープする気だ。



「やめろ……この子達は俺の仲間なんだ……」



ヅィリィがにやけながら答える。


「仲間? 貴様の周りには誰もいないじゃないか」



こいつ……



「また会えることを楽しみにしている……」


そう言い残しいなくなってしまった。




「ヤヨイ…… フラン、セリル…… ナイナ……」


みんないなくなってしまった……


俺は何も出来なかった、テイマーが仲間を守れないなんて、仲間から信頼を得られないなんて最悪だ……



俺は、最低なテイマーだ……

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