第17話 パーティを開きました

「なんだロジカ、街で揉め事を起こしたらしいじゃないか……」


ズズ……っとお茶をすする音がする。


城下町でのクリーナとの件をヤヨイも知ったみたいだ。


「えーっと……あれは、トラブルと言うか、結果良い取引ができてクリーナっていう知り合いもできて意味があったっていうか……」


「歯切れが悪いな、普段から茶を飲まないから争い事なんて起こすんだぞ」


ヤヨイに言われるとくやしい……

しかもお茶はいつもヤヨイに飲まされてるだろ!


「そうだよロジカおにぃちゃん! お茶を飲まないからケンカなんてするんだよ!」


そう言ってセリルもお茶をすすった。


「あれ、セリル。 お茶が飲めるようになったのか?」

この前は苦くて飲めないって言ってたような。


「お湯で薄めたんだ、セリルには濃かったからな……何事も臨機応変だぞ、ロジカ」


「……」


くやしい……ヤヨイに諭されるなんて……


「あっロジカおにいちゃんが逃げた!」


もういい、ナイナの畑でも手伝おう。





畑の前にやってきた、いつものようにナイナが作物を点検してる。



「フーン♪ フフフ〜♪ ルールーラ〜♪」


機嫌良さそうに鼻歌を歌っている。

クリーナとのやりとりがあってからより野菜作りが楽しそうだ。


「あっ、ロジカおにぃちゃん!」


フランも手伝っていたみたいだ。

できた野菜やフルーツを布で拭いている。


「ロジカさん、どうかしたんですか?」


「ちょっと様子を見に来ただけだよ」


ナイナは畑で作業するときは汚れてもいいようにオーバーオールの作業着を着ているが、基本的にファーマーの能力でタネ植えから収穫まで一気に魔力でやってしまうから普段はほとんど汚れることはないみたいだ。


たまに品質の研究だっていいながら土いじりをしてるときは土の中であれこれしてるみたいで汚れてるみたいだけど。


お日様の下にいることが多いのに日焼けもしてないし、見た目だけならか弱い、青白い女の子なのによくこんな毎日畑に出ていられるもんだ。


「な、なんですか、そんな見つめられると恥ずかしいです……」


「あっ、ごめん、そんなつもりじゃ」


感心してたら、ナイナのこと見つめてしまっていた。


「ナイナは休憩しないのか? 疲れるだろ?」


ナイナは首を傾げた。


「私はこうしてるのが大好きなんで、畑にいる時に疲れたって思うことってないんです。 帰ってくると疲れたって感じるんですけどね」


畑が本当に好きなんだな、ナイナの言葉からそれが伝わってくるような気がした。


「ナイナ、たまには休みも必要だぞ!」


「そうだよ、ナイナおねぇちゃん!」


ヤヨイとセリルが珍しく畑にやってきた。

畑にみんな集まってナイナは驚いていた。


「みんなして、今日はどうしたんですか?」


「ナイナの作った野菜が旨いって評判らしいぞ!」


ヤヨイがナイナに話しかけた。


「えっ、そうなんですか? 誰からそれを……」


「私も聞いたよ! クリーナさんが言ってたの、街で大人気なんだって」


セリルが身を乗り出してナイナに伝える。


「そうなんだ、皆さんに喜んで貰えて嬉しいです」


ナイナが嬉しさを噛みしめるように軽めに微笑んだ。


「ナイナおねぇちゃんは凄いんだよ、こんなにおいしいお野菜を作ってるのにもっともっと皆んなに喜んでもらえるように頑張ってるんだよ」

フランがセリルに自慢するように話す。


みんなこうやって集まったんだし、いい機会だ。


「せっかくだからいつも俺らを影で支えてくれているナイナにお礼でもするか!」



◆◇◆



「まいどー」


クリーナが飲み物や、肉を持ってやってきた。


「「あっ、来た来た〜」」


待ちわびたように、フランとセリルが声をだした


「こんな旨い、野菜やフルーツがあると、私が持ってきた肉が引き立て役になってしまうかもな」


拠点のリビングを装飾し、食材も食べきれないほど注文した。



「なんでもいい、私は腹が減ったぞ!」


「「私も〜」」


「もう、今準備するんで待ってくださいね!」


ナイナを祝うはずのパーティのはずなのにナイナが動いてしまってる。




気付いたらクリーナも加わってパーティが始まった。


ヤヨイが焼いた肉をレタスで巻いてほうばった。

「この肉、信じられないような旨さだ……」


「すごーい! でもお肉を巻いてるレタスもシャキシャキでおいし〜」


「ねぇフランこっちのお野菜も美味しいよ!」


「どれも旨いだろ、私の自慢の商品たちなんだぞ!」

クリーナがニヤリと笑って言う。


美味しい料理でパーティはどんどん盛り上がっていった。


「セリル、お行儀悪いからイスの上に立ったらダメ!」


「ちょっとヤヨイ! お茶こぼしてます!」


なんだかんだ、ナイナはいつも手のかかるみんなのフォローに回って動き回っていた。



散々盛り上がって、フランとセリルはその場で寝てしまった。


クリーナも満足そうに帰っていった。


そんなこんなでパーティは盛り上がって終了した。


最後にリビングを確信してから俺も寝るとするか。


リビングに行くとナイナがひとりでリビングの窓から畑を眺めてた。


「ナイナどうしたんだ?」


俺の声を聞いて、ナイナは意外そうな表情で俺の顔をみた。


「あれ、ロジカさんまだ起きてたんですか?」


「ナイナこそ、今日は疲れたろ? 休まないのか?」


「ううん、疲れてないですよ、楽しかったです」


嬉しそうに微笑む姿はすごく可愛らしく見えた。


「今日は本当はナイナを労うつもりでパーティをしたのに逆に疲れさせちゃったかな」


「ふふ、私こういう時じっとしてられないんです、動くなって言われた方が多分気を使って疲れちゃいます」


「そっか、なんか悪いなって思ってさ……」


「私はヤヨイやフラン達と違ってクエストとかでは役に立てないんで……でも、こうやって少しでも皆さんを支えられるのは嬉しいんですよ」


「ナイナがいないとこの拠点大変なことになっちゃうもんな」

まとめ切れてない俺も悪いんだけど……

苦笑いするしかない状態だ……


「ロジカさんも大変じゃないですか? みんなに振り回されて……」


俺、ナイナにそんな風に見られてたのか……


「そういえばナイナはさ、ここに来る前は何をしてたんだ?」


「私は……ここ来る前はお城の研修室でファーマーのお勉強をしてたんです、あまり、実戦で畑仕事をやる機会ってなかったんで、今はすごく楽しいです」


「やっぱり、城にいたんだなナイナって……」


《絆が深まりました》

色々話を聴いてるうちにナイナとの絆が深まったのか。


もしかしてヤヨイの時と同じように成長させられるのか?


《ナイナとの絆報酬を設定できます》


やっぱりだ、ナイナも成長させられるんだ。


→ 《メインスキル向上》

《サブスキル設定》


ナイナはファーマーを伸ばしたいよな。


→ 《メインスキル向上》


迷いなくこれを選択した。


「どうしたんですか、ロジカさん?」


「いや、何でもない。 ところでさ、何か変化はないか?」


「えっ? 言われてみたらちょっと魔力が増えたような……あれ?」


ナイナが急に立ち上がった。


「私、今すごい事ができるような気がするんです」


ナイナはリビングの奥に置いてあった魔導石を持ってきた。


メインスキルが成長して、何か閃いたのか?


「ちょっとやってみるんで見ててください」


ナイナは手を合わし、魔力を込めだした。


「最初だから簡単なイメージで……」


魔力を固めた気体のようなものを魔導石に飛ばした。


魔導石が輝きだし、ナイナの飛ばした気体は魔導石を離れ空中を蠢きだした。


ナイナは蠢く気体に手をかざし、気を込めだした。


「多分こんな感じでできるはずなんです……」


気体が徐々に実体化仕出し、下に落ちてきた。


だんだんと形がわかってきた。


「肉だ……」


気体から実体化されたのは脂身の乗った旨そうな肉だった。

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