第11話 フランとセリル
「おい、お前は本当にこの子達がドラゴンとまともにやりあえると思ってるのか?」
ヤヨイはヅィリィに問いかけるが、薄っすらと笑みを浮かべるだけでヅィリィは何も言わなかった。
怯えながらもフランとセリルはドラゴンに向かい前に進み出した。
ドラゴンは2人が近づいて来たことがわかり目を見開く。
オオオオオオオオオオオオォ
2人を威嚇するようにドラゴンが叫び声を上げた。
「ひいっ! やっぱり怖いよ」
「頑張ろう、フラン! ソウルガンドに居るためにはこれしかないの!」
フランを励ましている、セリルも手が震えてる。
どう見ても戦えるような状態じゃない……
「2人とも逃げろ、本当に死ぬぞ!」
2人に向けて叫んでも、聞いてくれそうな状況じゃない……
《スカウトサーチを使用します》
フランとセリルに黄色いサーチウィンドウが表示された。
黄色いウィンドウでは確実にテイムできるかはわからないけど、ここでテイムしてしまえば逃すことはできるはず。
「テイムする」
こんなギルドにいるくらいなら俺達といた方がいいに決まってる。
サーチウィンドウが点滅しはじめた。
こんなの状態は初めてだ。
《テイムできませんでした》
サーチウィンドウが黄色のまま点滅しなくなった。
「くっ、ダメなのか……」
「ハッハッハッ!」
大声をあげてヅィリィが笑い出した。
「貴様はテイマーだったのか、貴様ごときがドラゴンをテイムしようなんて無理に決まってるだろ!」
俺がドラゴンをテイムしていると勘違いしてるのか、そんな場合じゃないのに……
ヅィリィに何を言っても無理そうだ、もう1人のダルリンって奴に話しかける。
「あんたも2人を助けないのか?」
ダルリンは冷たい表情で、俺に顔を向けた。
「これがうちのギルドの方針だ、他人にとやかく言われる事ではない」
「仲間なんだろ? 死んでしまうかもしれないんだぞ?」
「お前には関係ない事だ」
ダルリンも助ける気は無しか……
そうしてるうちにドラゴンが2人の間近に迫ってきてる。
せめてテイムできてれば、なんとかできるかもしれないのに……
「た、倒さなきゃ……」
セリルが、祈るようなポーズでドラゴンに身体を向ける。
「お願い、出て」
セリルの前に小さい魔法陣が浮かび、そこから小さい火の玉がドラゴンに向かって飛んで行った。
だが小さい火の玉はドラゴンの身体にあたるものの焦げ跡もつけられず消滅した。
「効かない……ごめんフラン……」
「ど、どうしよう……」
やっぱり無理だったか。
今の攻撃で返ってドラゴンを挑発してしまっただろうし、もう後がないだろ。
ドラゴンは大きく息を吸い込みだした。
「ようやく終わりだな……」
ヅィリィの声が聞こえた。
ようやく? 終わり……?
まさか、ヅィリィ達、元々この2人をを見殺しにするつもりで連れてきたんじゃ。
俺の視線にヅィリィが勘付き、ニヤリと笑った。
「貴様が思ってる通りだよ……貴様らは知らなかったみたいだが、うちは大規模なギルドだからな、入りたいと言ってくる者も後を絶たない、一人一人面倒は見てられないからな、使えない奴はこうやって間引いていかないとパンクしてしまう」
「お前は……いや、お前らは最低だ」
ヤヨイが刀を握り、怪我をしてなければ斬りかかっていきそうなくらい、怒っている。
「フフフ、褒め言葉に聞こえるな」
息を吸い込んでいるドラゴンの口が赤く染まり、煙が出ている、火を吹くつもりか。
何が出来る訳ではないが、とっさに2人の元に進んでいた。
「「えっ?」」
フランもセリルは俺が来たことに驚いていたが説明をする間もなく、ドラゴンの口から灼熱の炎が吐き出された。
とにかく炎から身を守るんだ。
俺はフラン、セリルの前に立ち、腕を交差し、防御の姿勢を取った。
俺はドラゴンの炎に焼かれて死亡するのか……
咄嗟にしてしまったことだけど、後悔はしてない……
せめて、後ろのフランとセリルは無事であってくれればいいんだけど。
炎が俺を通過していく……
熱さもすごいが、圧もかなりのものだ……
これに耐えられれれば。
ってあれ? 俺、ドラゴンの炎を受けて意識があるってことは死んでない……ってことか?
炎が過ぎ去っていった。
ドラゴンは目の前にいる。
俺が生きてることに驚き、後退りをしてる。
「げっ、腕が!?」
俺の両腕が焦げている、感覚も鈍いし、両腕が使えなくなってしまったか? で、でも……
「生きてる……」
後ろを振り返ると、フランとセリルはお互い抱き合って身を守っている。
2人も目を開きまだ自分達が生きてることを確認した。
「あれ……? 炎は……」
「私達無事なの……?」
「そうだ、まだ俺達は死んでない」
「あなたが……守ってくれたの?」
セリルが恐る恐る俺に聞いてきた。
「そうだ、2人をほっとけなかったから、勝手だが助けさせて貰った」
「そのせいで腕が……」
フランは俺の焦げた腕を見て、驚いていた。
「ああ、この腕が君らを守ったんだ、2人も命を救えたんだからこの腕も満足してるだろ」
「「なんで……」」
2人とも、涙を流しだした。
「おーい、感動のシーンを邪魔して悪いが何も解決してないぞ」
ヅィリィが嫌味に声をかけてきた。
たしかにドラゴンの一撃を避けただけで、まだ助かった訳じゃないか……
ドラゴンはこちらに近づいてきた。
「2人に話がある、こいつを倒したら俺の仲間にならないか?」
「「仲間?」」
《スカウトサーチを使用します》
また2人にサーチウィンドウが表示された。
さっきは黄色だった画面が黄緑になっている。 揺らいでいるのかもしれない。
「大丈夫だ、ロジカは信じられる奴だ! 2人とも一緒に来い!」
ヤヨイが2人に向けて言った。
「そ、そんな急に言われても……」
「うん、私達ソウルガンドに入ってるし……」
悩むのも当然だ、目の前にはドラゴンも迫ってるし。
「行きたかったら行っていいぞ、君達はうちのギルドには必要ないからな、そもそもここで死ぬだろうがな……」
ヅィリィが横槍を入れてきた。
もう、2人を見殺しにすることを隠す気もないのか……
「俺達はそんな酷い事は絶対にしない、一緒に来るんだ!」
「「…………でも……」」
《テイム可能です、テイムしますか?》
よし、悩んで入るようだけど、2人ともいけそうだ。
「テイムする!」
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