第2話「目の前には魔王」
―魔王城―
暗い一室の中心に設置された六芒星魔法陣が青黒く光を放っている。
その手前には、魔法陣を展開させたと思われる術者が魔法の詠唱を完成させていた。
「
術者が高らかに声を上げると魔法陣が放つ光は勢いを増し、中心部分に人の形をした何かを作りながら光の勢いは収束した。
「つっ、ここが次の世界か? それにしても薄暗い一室だな、まぁ良い、おや? あんたは?」
魔法陣の中から現れた少年。
焦茶色の髪をし、
「ようこそ魔王城へ、吾輩は当主のハーデスである」
フィルリークと同じく
「なんだと! 貴様! 魔王か!」
ハーデスの言葉を受けたフィルリークは目にも止まらぬ速さで鞘に納める聖剣レーベンヴォールを引き抜きハーデスへ斬りかかった。
「ふむ、今回の戦士は随分とせっかちな事だ、何、吾輩は嫌いじゃないぞ」
ハーデスはフィルリークの斬撃を一旦指先で受け止めた後華麗に受け流した。
「チィッ! 女神の野郎! 破邪王を倒したばかりだってのにいきなり魔王と戦わせるとは上等じゃねぇか!」
斬撃を受け流されたフィルリークは、3度バックステップを踏みハーデスとの距離を取ると聖剣レーベンヴォールを空高くかかげた。
「聖身到来!」
フィルリークの身体に白い光が包み込むと、身に付け居ていた鎧が天使の翼をほうふつとさせる白く輝く鎧へと変化した。
「ブレイバー・フィルリーク見参! やーーーーーってやるぜ!」
フィルリークは聖なるオーラを聖剣に乗せ、魔王ハーデスに向け鋭い3連撃を放った。
魔王ハーデスは防御障壁を展開しフィルリークの斬撃を防ごうとするが、失敗。
威力こそ減衰出来たモノの最後の1撃が魔王ハーデスの頬を掠め黒い血を滴り落とさせた。
「ぬぅ、これは噂通りの勇者、吾輩は聖属性が苦手であるが故これ以上の戦闘は望まぬ」
今の一撃でフィルリークの実力を把握した魔王ハーデスは両手を上げ降参の意思をしめした。
「あ゛ぁ? テメー魔王の癖にいきなり降参だ? ふざけんじゃねぇ!」
そんな暴挙許す訳にはいかないと、フィルリークは聖なるオーラを再度聖剣に乗せようとするが、
『そこまでです、勇者フィルリーク、今回貴方の救いを求めるモノは貴方の力を試しただけに過ぎません』
女神アルテイシアが、魔王ハーデスを討ち取ろうとするフィルリークの魔力を一時的に封印し、その攻撃を止めた。
一時的に魔力を封印されたフィルリークは、身に付けていた
「いつつつつ、何しやがる! いや、ちょっと待て! 今なんつった!? つまり、勇者の俺が魔王の味方になれって事か!?」
『その通りです。 この世界で、世界を滅ぼそうと企てるのは人間です、それ故にこの世界の魔王は世界を守る為の存在なのです』
「ふざけんじゃねぇ! 俺は世界を守る勇者だ! 誰がどうして魔王なんかの味方をするかって言うんだ!」
『今自分で世界を守る勇者と言いましたね。 では魔王と共にこの世界を導いて下さい』
女神アルテイシアに言質を取られたフィルリークは目を丸くし、絶句してしまう。
「待ちやがれ!」
自分が言った事を捻じ曲げる事は不本意であるが、それでも魔王の味方となる事が気に食わないフィルリークは女神アルテイシアに異議の声をあげるも彼女からの返事は無かった。
「クソッ! たかが魔力を封印されただけだ! このままでも貴様程度に負ける俺じゃない!」
勇者である自分が魔王の味方をする事に納得が出来ないフィルリークは、再度魔王ハーデスに向かって斬りかかろうとしたところで、フィルリークの身体に激しい雷魔法が直撃した。
「ぐわあああああ!!!! テメェ!! 何しやがる!! これだけの力がありながら降参だ? ふざけんじゃねぇ!!」
フィルリークは、雷魔法を受けた衝撃で崩された態勢を整えると魔王ハーデスに剣先を突き付けた。
「むぅ、今のは吾輩じゃないぞい」
魔王ハーデスはフィルリークの後方を向けて指差した。
「なんだと!?」
フィルリークが驚きながら魔王ハーデスの指差した方向を振り向くと、黒色のロングストレートヘアーをしたやや長身で細身な美女の姿があった。
その美女はパッと見、人間と間違えてしまいそうであったが、魔王ハーデスと同じく頭部には悪魔の角が、背中には悪魔の翼が生えている。
「フン、人間風情が生意気な」
「テメェも魔族か! 上等じゃねぇか!」
彼女の挑発に対しフィルリークはためらう事無く応じ、身構えた。
「おお、我が娘フィアよ、彼は我が魔王軍の救世主だぞい、実力は吾輩が確認しておる、無駄な戦闘はやめなさい」
魔王ハーデスが言うには、フィルリークに突然雷撃を放った美女は彼の娘、魔王女と言う事になる。
「お父様? 人間風情の手を借りるなんて甘い事は許されませんよ?」
魔王女フィアは、父親の言う事など耳に貸すつもりも無いと言わんばかりに人間の身体を包み込むには十分な大きさの雷球をフィルリーク目掛けて放った。
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