第13話 Nigelle
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by. 碧
あの不思議な夢を見た日から、私の中で一つの想いがカタチとなってハッキリ
していくのが分かった。
“やっぱり、私は蒼さんに恋をしている。
蒼さんが、好き・・・。”
いつから自分がそういう想いを抱き始めていたのか分からない
穏やかに流れる二人での暮らしの中、いつも私を気遣って寄り添い、そして
導いてくれる蒼さん・・・。
思い返せば、初めて会った時から、蒼さんにだけは心を許していたようにも思う。
でも・・・
恋心を自覚すると同時に、自分は叶わぬ恋をしたのだと悟る
蒼さんの辛く悲しい過去
そして、梨花さんへの想い・・・
蒼さんが梨花さんに抱く想いが、どれ程のものか・・・
それは、あのベージュの布で隠されていた画を見れば一目瞭然だった。
“私は、梨花さんには敵わない・・”
あっと言う間に、季節は秋から冷たい冬へと向かっていた。
その日、私はある決心を胸に蒼さんが居るであろうリビングに向かった。
いつものようにリビングのソファーで寛ぐ蒼がそこに居た。
「蒼さん、ちょっと話があるんですが・・・」
「ん?何?」
「蒼さんのお陰で私には戸籍も出来ましたし、何時までも蒼さんに甘えて
いてはいけないと思うんです。
考えたんですが、そろそろ自分の力で生活していこうかと思いまして・・・。」
私はずっと考えていた事を蒼さんに話した。
蒼さんは、驚きと戸惑いの綯交ぜになったような表情のまま固まっていた。
そして、一呼吸置くと
「碧ちゃん、その話は今度来る碧ちゃんの誕生日が過ぎてからでもいいかな?
それまでは、今まで通りここに居て欲しい。
誕生日が過ぎたら、俺も一緒に今後の事を考えるから・・・。
少し時間をくれないか?」
まだ、ここに居てもいいんだ・・・。
まだ、蒼さんの近くに居られる・・・
「はい、分かりました。
誕生日までは、今まで通り頑張りますね。」
後数か月、桜の咲く頃には私はここには居ない。
でも、それまでは・・・
悔いの残らないように、蒼さんと二人、楽しい時を過ごそう
そう、心に誓った。
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