第2話 理解不能

「嘘でしょ…!時代劇か何かの撮影にしてはリアルすぎだし、テレビカメラとかもない…」


音のする方へと向かったはいいもの、その正体は甲冑を身にまとった武士たちであった。しかも、兵士たちが持っている旗は織田木瓜おだもっこうの家紋であった。


「きっと、戦闘のほうにスタッフさんたちいるよね…!その人たちに説明して、どうにかして」


「そこのお前!何をやっているのだ!!!」


行列の中の馬に乗った一人の武士が、こちらにむかって槍を向けながら進んでくる。


「違います!目が覚めたら、この山の中に居たんです!ここがどこだかわからないので、教えて頂けませんか?」


兵士は何も言わずに、私の首元に槍を当ててきた。

撮影にしてはやりすぎだし、私が訴えれば間違いなく勝てるだろう。


「貴様は何をわけのわからないことを言っているのだ?ここは桶狭間山だが」


桶狭間。そのワードは歴史好きでなくても知っているあの戦いに関連してるのだろうか。

だとしたら、私はタイムスリップをした、ということになるのだろうか。いやいやいや、そんなことない。だが、一応年を聞いてみるか。


「あの、ここって今何年ですか?」


武士は怪訝な顔をしている。無理もない。

ここで、【令和】というワードが出てきてくれればものすごく助かるのだが。


「今は、永禄3年だ。それがどうかしたのか」


永禄3年、ということは間違いなくタイムスリップをしてしまった。

しかも、桶狭間。目の前の軍隊は織田信長軍で、これから今川義元を討ち取りに行くに違いない。


私が頭の中で色々考えていると、首元に冷たい感触を感じた。はっとして目の前の武士を見ると、鬼の様な形相をしている。


「怪しい奴め。ここで粛清してくれよう」


「違うんです!私、今から大体450年後からタイムスリップしてきたんです!」


「たいむすりっぷ?そんなことはどうでもよい!」


首から血が流れ始めている。シャツに血が滲み、全身から汗が流れ、自分の死を覚悟したときだった。

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コンビニに行こうと思ったら戦国時代にタイムスリップしてました。 悠華 @moriuchi_15

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