明るいところ
尾八原ジュージ
明るいところ
深夜の散歩が好きだ。
夜道は人通りも少なく、ふと別世界に来たような気分になる。それが楽しい。
しかし思うに真夜中は、人間の作った世界のルールが少し歪む。
僕も散歩の最中、昼間はなかったはずの電柱を見たり、自動販売機の裏から話し声がしたりして、足を速めたことがある。
それでも煌々と明るい場所だけは、安全地帯だと思っていた。
昨夜、例によって夜の散歩に出た僕は、途中でコンビニに立ち寄った。商品を見ていると、甲高い声がした。
「ねぇアイス買おうよ!」
幼い子供の声だ。こんな遅くに子供が出歩くのは感心しないな……と自分の夜更かしを棚にあげてそちらを見ると、子供の姿などなかった。若い女性が一人いるだけだ。
彼女はレジの方に向かって歩き出す。と、そのパンプスを追うように、ピンクの運動靴を履いた小さな足首がふっと現れ、2、3歩パタパタと歩いたかと思うと消えてしまった。
やっぱり明かりが点いていても、油断はできない。
明るいところ 尾八原ジュージ @zi-yon
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます