出会い
朝、部屋の窓から光が射す。白斗は、スマホのアラームで目を覚ます。画面には13時スターカラーズと表示されていた。
「はぁー…夢じゃないよな。」
昨日の出来事が今になっても信じられない。自分が望んでいたキラキラしたものが、やっと手に入るかもしれない。まさか、スカウトされ芸能界に足を踏み入れることになるとは、夢にも思っていなかった。
「さて行くか…」
いくら動き方が変だという容姿は全く関係ない理由でも、芸能界において、身だしなみを整えることはとても重要である。ましてや今日は初めて事務所へのあいさつに行く大切な日だ。
いつもよりも早めに目を覚ました白斗は、夢ではないことを確認しいつになく気合を入れて準備を始めた。
マネージャーであるみどりにも、少しでも良くみてもらえるように、髪をしっかりと整えてから、外に出る。あたりは、例年より早く咲いた桜が満開に咲いていた。
「綺麗だなー」
景色を眺めながら駅へと向かう。事務所まで、駅からはそんな遠くないと聞いていたが、心配だったので、一時間早めに出ていた。最寄りの駅から渋谷に降りた彼は、スマホで住所を検索しその地図を頼りに向かう。心配とは裏腹にすぐに到着することができた。
「あ!白斗くん!ちゃんときてくれたんだ」
事務所の入り口にある大きな桜の木の前で、みどりが満面の笑みを浮かべ立っていた。
「おはようございます!」
今日もきれいだなー…なんてことを思いながらあいさつする。
みどりはこの後、別のタレントの現場に同行する必要があるらしく、事務所内のある程度の説明をして、その場を後にする。白斗が覚悟を決め、事務所の扉を開けると、重たそうな荷物を抱え、階段を登っている少女が目にとまった。彼は咄嗟に階段を駆け上がり、彼女に手を差し伸べる。
「大丈夫ですか?」
「あ!…はい大丈夫です。これ資料室に持って行かないといけなくて。」
顔を上げ、彼女は笑いながら彼に答えた。その姿はまるで、お人形さんのように可愛く思わず。
「か…かわいい」
彼は慌てて口を押え、話題をすりかえる。
「あ、俺今日からここに所属することになってて、社長室に向かうとこなんですが、まだ時間あるので、良かったら手伝います!」
「ほんとですか!?ありがとうございます!!」
話を聞くと、彼女の名前は紅ノ 咲。今女優の卵として所属し、日々レッスンに励んでいるかたわら、事務所内でお手伝いをしながら、暮らしているらしい。
(すごいな。まだ若いのにしっかりしてるな。)
これが彼と彼女の二度目の出会いである。
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