変化

幸運にもその日、白斗は激レアバイトで新作映画【色鳥々の世界】の撮影に、ADの一日体験で参加していた。


(まじで書類出したときは通ると思わなかったなー、映画の撮影現場とかテンション上がるー♪)


「では色鳥の世界のキャストさん入りまーす!よろしくお願いしまーす。」


スタッフの掛け声とともに、キャスト陣がスタジオに入ってくる。みたことのある役者たちのなかに、ひと際綺麗な女性がいた。


(綺麗な人だなー、女優さんかな?)


白斗がその人のことを見つめていると、彼女が彼に視線を向け返してきた。


(やっべ、見つめてるの気づかれたかな。)


彼は目線を反らし仕事に戻る。しかし彼女の目線が彼から離れることはなかった。女性経験の全くない彼にとってそんな経験は初めてで、彼の頭の中は混乱していた。

(撮影中ずっと俺のことみてたよな…俺何かしたか?それともついに俺の時代きた?まあね見つめたくなるのわかるよ?カッコいいもんね俺?やっと気づいた?今波に乗ってるんじゃね?俺wってんなわけねーか、いつも通りあの人冴えなくねで終わるに決まってる。なんてことを考えているうちに、その日の撮影が終わった。


「お疲れ様でしたー」


「あーちょっと君!こっち来てもらえる?」


スタッフの一人が白斗に声をかける。


「えっ、はい。なんでしょうか?」


彼は戸惑いながら返事をする。


(どうしたんだろ?なにかミスった?あ、さっきの人)


「ああ、この方がね君のことを気に入ったみたいで」


(へ?何?どういうこと?)


「あの私、スターカラーズのマネージャーをしている霧島みどりと言います。」


みどりは彼に微笑みかけながら、口を開く。


「え、マネージャー?女優さんじゃなくて?あ、えっと、潮ノ谷白斗です。」


白斗は首をかしげながら返事をする。


「すみません急に声をかけてしまい、もしよろしければうちの事務所に俳優として所属して頂けませんか?」


彼女は、彼のことをまっすぐ見つめ、問いかける?


(ん?いやまてまておかしい。会ったばかりだし、それに俺は冴えない一般人だし、夢…か?)


「え?どういうことですか?詳しく聞かせてもらってもいいですか?」


彼は不思議に思いながら、彼女に聞き返す?


「あのですね…スタジオに入ってからずっとあなたのことが気になっちゃて。」


(え?まじ?ついに?俺の時代キターーーーやっぱね?ほら俺カッコいいもんね?)


「だって!動き変なんですもん。」


(動きかーーい!ん?分かってたよ?俺イケメンじゃないしね?)


「うまく言い表せないんですが、こう才能を感じました。」


彼女はとてもまっすぐに、彼に訴えかけていた。


(でもこの人一生懸命だし、今の生活に満足してるわけじゃないからな、これで何か変わるなら)


「えっと、分かりました。」


そんなこんなで事務所に入ることになった。

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