第23話 守るためなら奪い取ってでも

「そうか。ルカ君が住むって言っているのかい」

「そう、今日も泊まっているよ。今は二人で出掛けてるけど」

 ノドカとミツキが電話で話している。嬉しそうなノドカの声に、遠くから様子を見ている二人の女性が紅茶を飲みながら、じーっと見てる

「そっか……朝には帰る予定だけど、それまで二人の事、頼んだよ」

 と言うと、ミツキとの話を終えて、ずっと見ていた二人にニッコリと微笑む

「……と言うことらしいよ。ヒナタ、ルナ」


「素敵ね。毎日ルカちゃんの手作りお菓子を食べれるなんてね」

「そうね、ルカはお菓子作り得意だものね」

 カチャンとティーカップをテーブルに置く音と、嬉しそうに話す声が聞こえる

「ところで、ユラ君はどこに?」

 ノドカが二人の間に座って、紅茶を一口飲みながら問いかける

「今日は、書庫の掃除当番らしくて朝から文句言って出掛けたわ」

「そうかい。ユラ君らしいね」

 ノドカの左側にいる髪の短い女性が答えると、紅茶を一口飲みながら、クスッと笑う


「それにしてもヒナタ。よくアカリちゃんに本を行かしたわね。あんなに本が行かないように過保護に守っていたのに。行かないように出来たでしょ?」

 向かいにいる髪の長い女性にため息混じりに聞くと、笑みを浮かべて答える

「だって、誰も書き終われなかった本がアカリに行くなんて、楽しそうじゃないの」

 と言った後、話しかけたその女性をじーっと見る。紅茶を飲んでいる女性は、視線に気づいてチラッと見ると、今度はクスッと笑っている

「でもね、ルナ。あなたに言われたくないわ」


「ルカちゃんに行く予定だった本を、全て奪い取って書いているんですもの」


「ちょっと、奪い取るなんて言い方はないんじゃない?」

 カチャンと音をたててティーカップを置きヒナタに言い返すが、微笑むヒナタがルナのティーカップの隣に置かれた本を指差す

「ちなみに、その本は何冊目?」

「……三冊目。もう書くことは無いんだけどね。ルカのためだもの」

 と言うと、厚さも表紙も違う本がポンッと二冊現れて、ページがパラパラとめくられ、周りを囲うようにふわふわと浮いている


「管理人に何か言われないの?」

「一応、三冊とも別の魔術を書いているから……まあね」

 ルナの周りに浮いている本を一冊を取ると、ページをめくり本を読んでいく。その二人の間でニコニコと笑って会話を静かに聞いているノドカ。その隣で笑う姿をルナが見て、ふぅ。とため息をつく

「まあでも、ルカがあなた達の家に住むなら安心だわ。結界も張ってるみたいだし」

「そうね。しばらくはルカちゃんに本が行くことも無いだろうしね」


 その後も三人で楽しく紅茶を飲んでいると、ルナがカタンと音をたて椅子から立ち上がる。すると、ヒナタが持っていた本がふわり浮いてルナの手元に戻っていく

「さてと、そろそろ私は本を書きに行くから……」

 と言うとノドカとヒナタから離れていくルナ。その後ろ姿を見ながらヒナタがクスッと笑う

「それじゃあ、美味しいお菓子を焼いて、帰りを待ってるわ」

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