第22話 この本は誰のもの

「アカリちゃん、大丈夫?やっぱり私、家にいた方が……」

「ひ、一人は怖いから……」

 ルカをおんぶして空を飛びながら、ゆっくりゆっくり進んでく。いつの間にか消えてしまった巨大な何かを当てもなく追っていた

「そうね。眠っちゃったら帰ってこれないし、一緒が良いわね」

 本になって、アカリの目の前でふわり浮いているヒカリの話も上の空。暗くなった町の空を、とりあえず進んでいくと突然、強風が吹いてきた

「どうしよう……風が……」

 風にあおられ、ゆらゆらと落ちそうになっていると、更に強い風がアカリ達に吹いてきた


「えっ?」

 強風に負けて、地面に落ちていくアカリ達。地面に着く直前、アカリの体がふわりと浮いて、どうにか直撃を免れた二人。ゆっくりと地面に足をつける。二人が落ちた場所は近くの公園。静かな公園に二人の話し声が響く

「危なかった……ルカちゃん、大丈夫?」

「うん、どうにか……」

 おんぶしたままだったルカを降ろして、パラパラと本をめくると、新たなページにまた知らない文字が現れていた

「また文字が……」

「のんきな事言っている暇ないわよ。アカリ」

 ヒカリの声で顔をあげると、目の前にとても大きな本がいた

「……なにあれ?」

「本ね」

「だから、何で本が……」

 冷静に話すヒカリにアカリがちょっと怒って言い返していると、ルカが突然叫んだ


「アカリちゃん、危ない!」

 ルカの大声で慌てて振り返ると、二人の近くにあった木がアカリとヒカリを狙うように倒れてきた

「……ルカちゃん、大丈夫?」

「うん、どうにか……」

 なんとか逃げきれて、木の倒れた勢いで地面に倒れてしまったアカリとルカ。二人の話し声と物音が聞こえたのか、本の上から人影が現れた

「なにこのお姉さん……」


「僕にその本くれるの?だったらケガする前にちょうだい」

「あらあら、ワガママ言っちゃダメよ」

「いいじゃないか。どうせ僕のものになるんだから」

 巨大な本のページの上に乗る男の子が一人、アカリ達を見て不機嫌そうに誰かと話している


「なに?誰?」

 パニックになっているアカリが持つ本を見て、ニヤリと笑う

「よそ見してたらケガするよ」

 と言うと本の上にふわりと浮いて、大きな本がパラパラとめくられ、男の子はアカリの方を向いて呟き始める


「ちょっと待って!」


「悪いけど、この本は私が狙っているの。邪魔しないでくれる?」

 突然、アカリ達の前にユイが現れ、男の子に注意をしている

「……ユイ姉ちゃん。あの本は僕がほしいの」

「ダメよ。一冊までって言われてるでしょ。子供はさっさと帰って寝なさい」

 無表情で話す男の子に、更に大声で帰るよう諭すユイ。二人の様子を、アカリ達が後ろで手を繋いで聞いている


「帰りましょう。二人相手にはさすがに勝てないわ」

「仕方ないか。お姉ちゃん、またね」

「もう来なくて良いわよ」

 ユイの言葉を聞きながら、本と共にふと消えていった男の子。居なくなってホッと大きなため息をつく

「ユイさん。ありがとうございます」

 ペコリと頭を下げるアカリとルカ。その間にヒカリが本からぬいぐるみっぽい姿に戻ると、リリを見てなぜか不機嫌な様子で近寄っていく


「リリ。助けるなんてなんのつもり?」

「ちょっとヒカリ……」

 アカリが止める間もなく、言い争うヒカリとリリ。アカリが言い合いを止めれずに、あたふたしていると、ユイがリリの後ろから抱きしめると、二人の言い合いがやっと止まった

「どうせ喧嘩するならアカリちゃんのお家でね」

 ユイがリリに話した言葉に、キョトンとするアカリ。それに気づいたユイが、アカリに向けてニッコリと微笑む

「お礼のお菓子もらわなきゃね」

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