第14話 みんな集まれば、お菓子の香り

「幾つもの魔術師に出会って、本を書き続けていたけれど……」

 深夜、一人窓辺で外を見ているヒカリ。ルカのクッキーを食べながら何やら呟いている

「誰一人として、最後のページを書くことは出来なかった……」

 一人話終えると、コツンとコップを側に置く音が小さく聞こえる

「もう諦めて眠り続けていたけれど、こんな子に呼ばれて目覚めるなんてね」

 と言うと、ベットで眠り続けているアカリを見て、クスッと微笑む

「まあ、美味しいお菓子に出会えたから、良しとしましょうかね」




「起きないね……」

「仕方ないよー。私も使いすぎたらめちゃくちゃ眠るもん」

 日が開けて朝、アカリの部屋に集まったルカ達が、アカリの寝ている顔を見ていた


「ルカちゃん、このお菓子は……」

「あ、はい。マカロンですが……」

 ルカがヒカリの質問に答えながら、ヒカリのいる方に振り返ると、マカロンを持ったヒカリと奪おうとするリリが騒ぎ始めていた

「それは私のよ!」

「なによ、さっきも食べてたじゃないの!渡しなさい!」

「ちょっと二人とも。アカリの分も残さないと」

 ドタバタと部屋中を飛び回り叫ぶヒカリとリリ。ヒカリの持つチョコマカロンの争奪戦が白熱して、ユイも止められず、更に騒がしさが増していく


「……何?」

 騒がしさで目が覚めたアカリ。寝ぼけながらもうっすらと目を開けると部屋にユイ達がいて、ぼーっとドタバタとうるさいアカリとリリの様子を見ている

「起きた?おはよう」

 側にいたユイが気づいて声をかけてると、ゆっくりと体を起きようとしているアカリに、ルカがガバッと抱きついた

「アカリちゃん、よかった……」

 強く抱きしめられ戸惑うアカリ。二人の様子に気づいたヒカリとリリ。マカロンの争奪戦を止めると、アカリの側に来てヒカリがアカリの頭を撫でた


「あら、意外に早く起きたわね」

「そりゃあ、こんなにうるさかったら起きるよ」

 アカリの言葉に呆れるユイ。二人の話を聞きながら何だかよく分からない状態のアカリは、ルカに抱きしめられたまま、部屋の中をキョロキョロと見渡す

「ルカちゃん……私なんで?」

「倒れて一日中寝てたんだよ。体どこか痛い?」

 アカリの腕を触るルカは、安心して泣きそうな顔になっている

「大丈夫、痛くないよ」

 ルカとアカリ、二人の様子を見守るユイ。元気そうなアカリを見て、うーんと一つ背伸びをして立ち上がった 

「それじゃ、私は帰ろうかな」

「え?もうですか?」

 起きてすぐ帰ろうとするユイに、しょんぼりするアカリ。リリもまだお菓子を食べたくて、帰るのに不満そうな顔をしている

「私も本を書かなきゃいけないからね。また遊びに来るから」

 お菓子をめぐり、再びヒカリと喧嘩をし始めたリリを引っ張って、部屋の窓から帰ろうとしている

「ユイさん、すみません……」

 部屋から出る寸前、ユイに謝るアカリ。謝る姿に頬張っていたマカロンを食べながら、ちょっと困った顔になっている

「いや……。謝るのは私の方だから……。また遊びに来るから、今度も美味しいお菓子よろしくね」

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