第15話 考えるより大事なこと

 ユイが帰ってすぐ、コンコンとアカリの部屋のドアを叩く音がした

「……はい」

 アカリが返事をすると、部屋の扉を開けて入ってきたのは、心配そうな顔をしたノドカ。ルカと一緒にベットを背もたれにして座って、元気そうなアカリの姿を見て、ホッとした表情に変わってく


「……お父さん」

「アカリ、起きたのかい?よかった」

「ごめんなさい。心配かけて」

 落ち込むアカリの隣に座り、そっと頭を撫でて微笑むノドカ

「お腹すいたかい?お粥作ろうか?」

 ノドカの優しい声に、ちょっと顔をあげて小さく頷く

「ルカちゃんもお昼一緒に……いいかい?」

「はい。ありがとうございます」

 微笑んで話すルカにノドカも微笑み返すと、立ち上がって部屋を後にしようとする

「じゃあ、準備するから、ご飯出来たら呼ぶからね」

 ノドカが言った後、パタンと扉が閉まってすぐ、布団の中に隠れていたヒカリが、またマカロンを食べ始める

「ごめんね。ルカちゃん……」

「ううん。無事でよかった……」

 謝るアカリの手を握って微笑むルカ。二人も食べながら、ちょっと一息。美味しいルカの手作りマカロンに、アカリの気持ちも落ち着いていく


「ねぇ、アカリちゃん……本を書くの?」

 話始めたルカの質問にマカロンを食べながら、うーんと考えるアカリ。そんな二人の会話にヒカリが割って入ってきた

「大丈夫よ。アカリなら書き続けていけるわ」

 口一杯にマカロンを頬張りながら、ヒカリは話を続けてく

「練習も何も無しに、一ページ目を書けたんですもの。魔力はこれから、日々強くなってくわ」

「でも、それは怪我したり、眠っちゃったりとか……」

「それは、当たり前じゃないの。本を書くのは簡単なことじゃないもの」

 ルカの心配する声もあっけらかんと答えると、ふわりと浮き、考えすぎてうつ向いているアカリの頭に乗る


「ルカちゃんが心配するのは分かるけど、これはもう決まったこと。アカリが願ったことよ」

「私が……?」

「そうよ。願いが強いから私が来たの。何の願いかなんて、知らないけれどね」

 と言うと、アカリの頭の上から降りて笑ってまた食べかけのマカロンを頬張って、一人考え続けるアカリに、ヒカリは真剣な眼差しを向ける

「そんなことよりもアカリ、大事なことがあるのよ」

 ヒカリの表情と言葉から何かとアカリとルカが身構えると、ふぅ。と深呼吸をしてアカリにニコッと微笑んだ

「お粥、私の分も持ってくるようにね」

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