第5話 勇者たちに協力

朝食を勇者たちと一緒に食べようと思い、部屋から出るとメイドがいた。


目を白黒させているとそのメイドはにこりと笑った。


「お食事はどちらでお食べになられますか?」


「今日は食堂で」


「かしこまりました」


メイドの数歩後ろを歩いていると遠くから同級生の姿が見えた。


そいつはまだ眠たいのか目をしばしばさせていた。


だが、俺を確認すると勇者たる佑都がいないことをいいことにあからさまに睨んできた。


彼らは佑都の取り巻きだが、幼馴染みという肩書き故に近くにいる俺を敵視している。



憎悪の感情を常に俺に向けてくる。

だが、それは佑都がいないときや意識のないときだけだ。


佑都は元々顔がいいから、それで俺は邪魔なんだろうなと容易に想像はできる。


たまに佑都の方から流れてきたのか分からないが俺なんかの平凡顔に告白するやつもいたが。


そのとき前を歩いていたメイドから激しい怒りの感情を感じとり、視線を向けると明らかに取り巻きに敵意を向けていた。


冷静に、だが慎重に観察をすると僅かに唇が動いた。


それは音となって紡がれた。



_これだから勇者たちは。平等が大切なのに......。



『平等』


等しく接さなければならないということなのか、どうなのかというものに対しての考えが行き着く前に彼女はにこりと笑いかけ行動を促してきた。


「急に立ち止まってしまい申し訳ありません。行きましょう」


そして、この世界の文字で食堂と書かれたプレートの様なものがぶら下がった扉の前にてそのメイドは扉を開け案内を完了させた。



既に食堂の中には佑都たちが揃っていた。

いないのは数名とさっきの女だけだった。


佑都はこちらを見つけ、すぐに席を用意してくれた。


内心、いやお前は何様なんだよと突っ込んでいたが。


そうして漸く佑都の隣に座った。


「佑都、昨日はどうだった?」


「うん? あぁ、たくさんの色々なことが一気に起きすぎて疲れて眠ってしまった」


それに同意するかのように頷きあっているあたり、取り巻きたちも同じな様だ。


「そういう荒砥は昨日はどうだったんだ? 食堂には来なかったけど」


それを荒砥がいうと周りから咎めるような瞳がついてくる。


ゾクゾクとする感覚が身に走るがそれはまだだと抑えつける。


「昨日は少し、考えることが多かったからな」


「荒砥のそういうところはいいと思うけど、協調性は欠けないようにしないと友達なくすよ」


そういう言葉が俺から友達をなくしてるんだけどな、なんて言えずに乾いた笑みを浮かべた。


それから30分後、ある男が入ってきた。

鎧を身につけて、頭部だけははずしていた。


その人は談笑をする俺たちに近づくと話しかけてきた。


「君たちが勇者召喚に応じたかな?」


佑都や取り巻きが発言をして下手な状況にしない為に、彼らの前に手を出して黙るように目で言った。


「随分と皮肉が効いているが、あなたは何者だ。あなたは俺たちのことが分かっているがこちらが分からないのは気に食わない」


「これはこれは、今回は弁が達者だな。俺はこの国を守るべき騎士団の長を務めさせていただいている、ヴィンセントだ」


ヴィンセント、そう名乗った騎士団長はどこか蔑むような目で佑都を見つめた。


それを一瞬で和らげると手を叩いた。


「今日から君たちには職業にあった戦いを訓練していく。それぞれ監督してくれる者を用意したからついてこい」


その後、訓練所という場所に連れていかれそれぞれの職業に合わせてそれぞれの監督がついた。



しかし、何故か俺は今、ヴィンセントと剣を向かい合わせている。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

俺? 勇者の引き立て役のモブだけど? 鴉杜さく @may-be

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ