第3話 ご飯、めちゃくちゃうまいじゃん

コンコンッとドアがノックされる音で目を覚ました。


窓を見ると真っ暗になっていて結構寝たな、なんて思いながらもベッドから降りてドアを開けに行った。


「はいはーい、ちょい待ってなー」


ドアノブを捻って開けるとそこにはメイドさんらしき人がいた。


「およ?」


「夕食のお時間で御座います。お部屋でお食べになるか、食堂でお食べになるかをお選び頂けます。どうなさいますか?」


佑都がいるだろうが、俺は少し気になることもあるし。


「悪い、部屋で食べるわ。自分でこういうのって持ってくるの?」


「いいえ、私が持ってきますので少々お待ち下さい」


そう言って消えたメイドさん。

どこまでもファンタジーだなと思いながら少し笑った。



しばらくすると再びドアがノックされた。

開けるとご飯のトレイを持ったメイドさんが立っていた。


「こちらが夕食となります。食べ終わりましたらドアの前にトレイを置いてください。回収に参りますので。


申し遅れましたが、私はあなた様の世話や質問等を受け付けますメイドのヤウと申します」


一通り話すとヤウさんが去ろうとするので声をかけた。


「待って。聞きたいことが色々あるからご飯を食べながら話してくれないかな、ヤウさん」


「えっ、ご飯......ですか。分かりました。

あと、私ののことは呼び捨てでお願いいたします」


少し彼女は驚いた様子だったが、すぐに許諾してくれた。

そのことに安心を覚えながらも不安も感じた。



そうして、部屋での質疑応答の様なナニカが始まった。


「この世界では『魔法』という概念はある?」


「はい、あります。

基本属性と特殊属性と異属性に分かれております。

基本属性は火や水などの大地から借りる属性です。

特殊属性は闇と聖属性だけです。

そして、最後に異属性ですがこれはどれがこうといったものは言及されておらず現在どのくらいあるのかも不明です。


しかし、異属性は使えない人の方が圧倒的に多いので大丈夫でしょう」


魔法についてそこまでいいきると溜め息を吐いた彼女。


因みになんだけど、ご飯がすごくおいしい。

日本に馴染みのある米を食べているわけだが、しっかりとした固さで甘味もあって食べやすい。


もぐもぐしながら話を聞くのは態度的には良くはないが、仕方ない。

これくらいは許してくれるよね。


「んぐ。っと、じゃあさこの国の魔王サマについて教えてよ」


そう言うと大きく目を見開いた後に彼女は口を押さえた。


小さく聞こえた声には畏怖が混じりあっていた。


「この人なら......或いは」


小さく聞こえたその言葉は咳払いに消えていった。

姿勢を正して魔王について語りだした彼女。


曰く、魔王は数百年に一度復活し災厄をもたらす。

曰く、魔王が現れる数年前に啓示があるとか。

曰く、啓示が現れた際には勇者召喚を行うこと。

曰く、勇者の影には常に友がいるとか。

曰く、勇者の友こそが災厄をもたらすか栄光をもたらすかを決めるらしい。


曰く、曰く、曰く、曰く_......いくつものそれは伝承の数だけあった。


途中で捻れた伝承も伝わった年もあった。

しかし、それでも伝わった古来からの伝承を信じて捻れた伝承はあまり浸透ぜずにいた。


「ふーん、なるほどねぇ。ありがとう」


にこりとも笑いもせずに唇に寄せた指先をガリッと噛んだ。


静かに流れ出る血を唇で感じながらも頭の思考を止めることはない。






静かな彼を盗み見る。

彼はどんな人物か見てこい、なんていわれていたけども彼は危険だ。


頭が良くキレる。

慎重。


彼ら、勇者とは大違いだ。


彼も食堂に来て勇者様方と意見交換や共通意識などの共有を行うと思っていた。


だが、実際は自室に籠り私に質問をし自らの見聞を少しでも広げ、多くの情報を手に入れんとする。


これでは勇者様との差が出てくるのに。

この男は危険だ。






そうメイドが微笑んだのを俺はまだ知らない。

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