第2話 待って、マジ?

頭がぐらつく。

吐きそう。


待てよ、さっき何をしてた?


「ッ!!」


「良かった、起きたー!!」


勢いよく身体を起こした俺の周りにはクラスメイトがいて、でも足りなくて。


ぐらつく頭を押さえながら、周りのクラスメイトに聞いた。


「佑都は......?」


まだ意識がと言い、黙る彼ら。

ガンガンとなり続ける頭を抱えながらも彼の側へと歩いていった。


彼は額に大粒の汗を浮かべながら、呻いていた。

しかし、次の瞬間目を開けた。


彼が目を開けた瞬間、クラスメイトは俺を押し退けてまで彼の側へと駆け寄った。


グラリとよろめいたが、ギリギリ倒れないで済んだ。


でも、あそこまで他者を押し合ってまで彼に取り入れる必要がどこにあるのだろうと俺は思うよ。


未だに鳴り響く頭の痛みを無視して、彼に近づく。


「起きたか? 佑都」


「うん。ありがとう。で、ここどこ」


そう佑都に言われ、周りを見渡す。

そこは先程、と言っていいのか分からないがいた教室とはかけはなれている。



薄暗い石造りの壁。

壁に立て掛けられた小さな灯は小規模な範囲しか照らすことしかできない。


そんな部屋の中央に俺たちは転がっていた。

クラスメイトの顔を一人ひとり見ていき、一人足りないことに気づいた。


赤星 真凜 がいない。

ということは、俺が最後に突き飛ばしたのは彼女だったのだ。


そう考えてから騒いでいる彼らの声に混ぜて呟いてみた。


別に成功するとは思っていなかった。

ラノベで良くあり得る異世界転移ならばこの言葉が通じるのでは思った。


『ステータス』


小さく青白い半透明の板が出てきた。

周りは気づいていないのか、こちらを見ていない。


今のうちだと脳に情報をする。

様々な数値や言葉が一気に入ってきて痛みが出てくるが無視して、丸暗記を完了させる。


そして、右上に付いていた✕印を押す。

押すとまるで最初から存在しなかったかのように、跡形もなく消えた。


その時後ろから肩を 叩かれた。


後ろを振り返るといつの間に動けるようになったのか、佑都が立っていた。


彼の後ろには同じようにクラスメイトが立っていた。


重たい腰を上げて、彼の隣へと立つ。

彼の少し後ろの横で立つ。


つい、癖で制服のズボンのポケットに手を入れているがそれはご愛嬌というやつで。


そうしたとき、奥の祭壇の様なものが開いて下の階段から数人、人が出てきた。


一瞬だけ見えた地下への階段の先は暗くて見えなかった。


中央に立っている少し歳が老けているおじいさんが声を掛けてきた。


「もう、目が覚めたのですか。少しは状況整理ができましたかな?」


それに答えそうになっていた佑都を視線で制すると、代わりに俺が答えた。


「はい。

状況の確認ですが、ここは異世界であっていますか?

あっているのならば、帰ることは可能なのかを教えていただきたい」


大方魔王討伐でもしないと帰れないだろう。

そして、たとえ魔王討伐ができたとしても今度は存在の抹消にかかるだろう。


正直、厄介だ。


「帰ることは可能ですな。

しかし、魔王討伐をしていただかないと......」


暗にここは異世界だと言っているな。


「分かりました。ならば、討伐後の身の安全を世界で保障してください」


「世界で......! 分かりました。検討は致しましょう」


その後、テンプレ通りのステータス確認などが行われた。


そして、上への階段を昇り個別部屋に案内された。


佑都はやはり勇者だったが......あれは一体。

静かにステータスを開く。


職業欄に『剣士』と記されているものを指でそっとなぞるとそれは消えていった。


代わりに『魔王の配下』と『勇者の親友』と書かれていた。


確かに職業欄は可笑しかったから、誤魔化した。



明日からは大変だなと思いながらも、とても柔らかな布団に意識を手放した

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