俺? 勇者の引き立て役のモブだけど?
鴉杜さく
第1話 異世界転移か......
学校の一日の最後の鐘が鳴る。
鳴ると同時に教室いっぱいに大声で、礼の言葉が言われる。
「ありがとうございましたー」
礼を言い終わるか否かの段階で皆は伸びを始めていたが。
自分も固まった凝りを解そうと肩を回していると背中に重みが加わった。
その重みはいつもこの時間になると来るので、慣れたように話しかける。
「
「荒砥はなんでそんなに平気そうなんだよー!」
佑都、
このクラスの中心的存在である。
正直に言うとよくラノベ展開とかである『異世界転移』ってやつが起きたら佑都が勇者になりそう。
今フラグを建築した気がしなくもないが気にしない。
言い忘れてたが俺は
俺たちは中学3年生と所謂『受験生』なのだが、誰も彼もが2年生に比べると格段に難易度が上がった授業に疲れを出していた。
しかし、彼らは精神的なところは何故か人一倍強いので遊ぶのは合格してからと決めているのだ。
そして遊びたいが為に皆勉強にひた向きになっていた。
だがそんな頑張っている者たちを貶すものはいつだって、どこにだっている。
それがこのクラスでは『
音を立てて開けられた扉の向こう側に彼女は立っていて。
一つだけ大声で言いはなった。
「真面目に勉強とか、偉いねぇー? じゃあね私は今から遊びに行くから~」
頑張ってね、なんて心にもないことを平然と口に出すと歩き出した。
静寂に包まれた教室は佑都の腹が鳴ったことで笑いに包まれた。
「帰るかー。佑都ー、コンビニ寄ろうぜ」
「うん。お腹空いたー」
ガヤガヤと佑都と数人の男子が帰っていく。
女子もその流れに沿って帰っていく。
俺も教室から出て、数メートル歩いてからすれ違いざまに真凜がいたことに違和感を抱きながらも下駄箱に向かった。
下駄箱から靴を出して履き替えると、道路を靴でしっかりと踏みしめる。
そのまま歩き続けて家を目の前にして学校に忘れ物があることに気づいた。
一つ溜め息を溢すと歩いてきた道を再び逆方向に歩いて行った。
夕日に照らされた学校を見上げながら下駄箱から靴を取り出して履き替える。
階段を二階まで上がり、右の通路から三つ目の教室に入った。
普段は掛かっているはずの鍵が掛かっていなかったのが、チクリと刺さったが気にせずにドアを開けた。
開けた先には普段のクラスメイトが誰一人として欠けることがなくそこにはいた。
教室に入った瞬間、忘れ物などないことに気づいた。
「はっ!? どうなってんだ?」
「俺たちも分からない......気づいたらここに居たんだ」
そう言ったとき足元が光出した。
急速な光は何かを教室の床に描き出した。
最初の光の場所へと収束するとそれはまるでラノベ展開でよくある『魔方陣』の様で。
はっとしてから叫ぶが遅かった。
「不味いっ、皆教室から出ろ!!!」
カッと光を溢れ出させるそれに呑み込まれる寸前、俺はドアの近くにいた誰かを押して出した、そんな気がした。
「お前だけでもっ!!」
「あっ! イタッ!!?」
それは儚い女の子の様な。
優しさを隠している。
そんな少女だ。
異世界転移された彼等よりもつらいのは彼女。
「分かっていたのにっ!
救えなかった......!!」
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