生き抜くために.....

しんさい

一人分にも満たないパン

貧しい母と子がいた。

二人の手元には一人分にも足りないパンの切れ端がある。

どうしたらいいと考えるだろうか。

 他者への愛と献身についての説法でよく使うたとえ話だ。

飢えを知らない者たちの答えは単純だ。

「希望を一つ与えてくれた神に感謝を捧げて二つにする」

 全員が平等。

少しでも食べられるだけでありがたいなどと考えているのかもしれない。

 それもそのはず。

 このご時世に、何日かに一度しか食事をとることができない子供は宗教的に生きていけるほどのがない。

本当の答えは冷酷非情そのものかもしれない。

「子供を投げ捨てて、親が一人で食う」

 キリスト教の熱心な信者にこの答えは通じないだろうが、根拠を述べるとしよう。

 いつ食事にありつけるかもわからない親子の場合、二人で分け合えば共倒れは避けられないだろう。

明日なんか来ない。

そもそも子供だけに食わせたって親が死んだ後に生きる術なんて持ってない。

親さえ生きてりゃ子供なんてまた作ればいい。

己が生き延びて食えるようになってから、次の子供を新しく作れば命は繋がる。

野生動物はそうして生命をつないでいくのである。

私にとって言わせてみれば、キリスト教の模範解答は、現実的でない。

存在自体が怪しい神に感謝をささげる余裕があるのならば命をつなげていくこと優先していくべきではないか。

幸いにも、現在、捨てられた子供たちにも人権が認められているため捨てられても生きていける。

本当にひもじい人々が子供を殺してしまうことが世界では今でも日常的に行わっれてしまっているのだが、私はそのような行いについて情を感じない。

人間が頭で色々考え過ぎているのではないか。


生きていくうちに大切なものを切り捨てなければならぬときが来るかもしれない。

そんな時、自己犠牲などと言って自らの可能性をつぶしてしまうのは、少し、考え過ぎてしまっているのではないだろうか。

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