第2話
東京の南方に位置し、東京ドーム3個分の土地を占める学校がある。陰陽連予備修練施設『華彩院』 日本で唯一の陰陽師を育てる学院である。
この学院では妖怪の知識、対策訓練など現役の陰陽師が教え、入学時に行われる試験によって、S~Eのクラスに分別される。上位のクラスになるほど、上位の家系の生まれや次期当主となるものが多く、凛音と壮馬はどちらもSクラスである。
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「憂鬱だなあ……… 」
朝のホームルームの前にいつも通りの時間に来て、自分の席に着いたと同時に心の声が出た。
昨日は、いつ振りか忘れた任務がない日だと思ってたら、『鬼没』が発生してS級妖怪が現れるし、「宇治院家」の人たちは死にかけてるし散々だった。
まあ無事助けられたからいいんだけどさ。
「今から学園長が今日は休みって言ってくれねえかな。」
「そんなこと言うわけないだろう壮馬。」
白髪の男は俺の横に立ちながら言った。
「冗談だよ、いや半分本音だけどさ…… って叶、お前なんだその両手に持った大量の手紙が入っている箱は? 」
「今日来たら、自分の机の上に置いてあったんだよね。多分ラブレターだと思うんだけど…… あっ壮馬、少しいる? 」
「お前が妖怪だったら、今すぐにでも祓ってやりてえよ。」
土御門家と同じ陰陽連御三家の一つ「
右京家は代々、式神の扱いに長けており、一般の陰陽師が1体しか使役できないのに対して、右京家の人間は同時に20体を使役することができる。
その中でも叶の才能は一線を凌駕しており、同時に100体を使役することが可能で、その分野だけならば俺を超える。
そして俺と叶という過去に見ない強さを持つ二人に対して、この戦いを終わらせる救世主と期待されている。
ちなみに陰陽連御三家「
そのため、俺たちはあまり最上家とはつながりはがない。
それはさておき、この右京叶はモテる。そうモテるのだ。
御三家という肩書で謙遜されやすい俺たちだが、こいつに至ってはそんなことは微塵も感じさせない。
毎日大量のラブレターが届き、休み時間には周りに女子が群がり、女子生徒の大半がこいつのファンクラブに入っていてその数は1000人をこえる。
そしてあろうことか一般人が通う他校にまでそのモテウィルスが感染し始めているらしい。俺は近づくだけでお辞儀され、身を引かれるのに……
「壮馬はみんなからしたら憧れであり、手が届かない空の上の人だからね。」
「それを言うならお前もそうだろうが。」
「僕は…… 壮馬よりはかっこいいからかな。」
「今すぐ祓ってやろうか! 」
俺は机に手をつき立ち上げって、叶をにらみつけた。
そんな俺を見て叶は少し勝ち誇ったように笑った。
だめだ本当に術を使いそうになる。
「ちょっと二人ともやめなさいよ。凛音が怖がるでしょう。ほら壮馬座った座った。」
「壮馬君と
「やあ、しおりと凛音おはよう。」
「凛音おはよ…… っておい、肩に手で圧をかけるなよゴリラ女。」
「あっ? 今なんて言った?」
この今、俺の首を絞めてくるポニーテールのピンク髪の女は
こいつは呪力を使った身体強化を得意とする「
こいつは俺に対して気を使わない数少ない一人で、凛音を含めた4人は昔からよく遊んでいた中だ。
「そうだ凛音、宇治院家の人たちの様子はどうだ?」
「うん! 壮馬君が治してくれたおかげ、誰も一大事にはならなかったよ。今はみんな安静にしてる…… ほんとうにありがとう。」
「そうか、またなんかあったら俺に言ってくれ。力になるから。」
「うん! 」
「へえ、あんたもたまには人の役に立つのね。」
「いやたまにどころか毎日人のために任務をこなして…… いやなんで首の締め付けが強くなるんだよ! 」
こんな感じで過ごせる学院生活もあと1年で終わる。
18歳になれば学院を卒業し正式に陰陽師となる。
そうなればこうやって集まって話すことは少なくなるだろう。
そう思うとこの時間も悪くは…… 首絞められるよりはましか。
「ね、ねえ壮馬君! 」
「どうした凛音? 」
「その、昨日助けてくれたことをみんながお礼したいらしくて、うちに呼んできてほしいって言われてるんだけど…… 学院終わった後、時間ある? 」
「今日は昨日の振り返りで休みもらったからいけるよ。」
「じゃ、じゃあ今日は私と一緒にかえ…… 」
その瞬間、クラスの床に赤い陣が現れた。
その陣は誰も見たことがなく、その中にいた者たちは咄嗟のことで反応することが出来なかった。
だが二人だけはこの現象に対処しようと反応していた。
一人は、この陣から皆を非難させるための式神を、もう一人はこの陣を無効化する術を。
しかし両者がしようとしたことは、現実にはならなかった。
「式神を呼べない!? 」
「術が使えねえ…… まさか呪力を無効化してるのか! 」
その赤い陣から放たれる光はいつしかクラス全体を包み込み、皆は理解ができない現象に抵抗できず不安の表情を浮かべる中で、一人だけ今の状況を楽しんでいるかのように笑っている者がいた。
そして光は直視できないほどに明るくなり誰もが目を閉じた。
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