第19話 取り返せない体

ここは異世界、自分たちよりも強い者がいることを今目の前で思い知らされた。

科学技術の発展した元の世界の兵器を使ったとしても、敵わない相手がいた。

その結果がこれだ。目の前に残る直径約10mのクレーター、そこにあったはずの

塹壕、原型すら残されていない誰か、吹き飛ばされてうなっている人(兵)達、

駐屯地から大急ぎで向かってくる輸送用のトラックが負傷者を運ぶ。

そして目にするは片腕が捥げ、足があり得ない方向に曲がって倒れている・・・


「桜!桜!返事して!桜ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


息はあった、だけどその時だけは我を忘れていたのかもしれない。

この傷を完璧に治すことができる技術が私にはないことに関して

私は自分を恨んだ。


「アカサカ様!早くサクラ様をこちらに!」


担架に横たわり、トラックに乗せられイヌルに戻っていくのを見送ることしかできなかった。


「ミリタリーの技術最初から全部使えばこんなことにはならなかったはず・・・

ごめんね桜。」


近寄るなというオーラ全開だったのか誰も話しかけてこない。

その静けさと心苦しさを紛らわすために、設計図に筆を走らせる。

もうだれも傷つかずイヌルからでなくて済むような兵器を。





目を開ける。痛い、体がないような感覚、周りを見てみると、実夢ちゃんが

机に向かって怖い顔をしていた。多分あの時のせいだ。


「み...ゆ...ちゃん?」


「あ、桜、起きたんだ。大丈夫?」


「うん、私はどうなったの?」


「自分で見たほうがいいと思う....。」


「...え?」


体全体を覆っていた毛布をめくってもらって、改めて見た体は、

右の膝から先がなくなり、胸からお腹にかけて包帯が巻かれていて

血がにじんでいる。


「あ、あ、あ、あ、足が...」


右足が一切動かない


「ごめんね、桜...。もっと私に技術があればこんなことにならなかった。」


悔しさと涙を抑えているような表情をして謝罪をしてくる。


「ごめん、実夢ちゃん一人にして...。」


扉をあけてもう一度謝罪の言葉を言っていたけど耳に入らなかった。

そして、一晩中泣きながら体をさすることしかできなかった。










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