第6話 四井重工の先進技術

僕は大きく首を振ると現実に戻った。


既にF53は紀伊半島の沖合の太平洋上空を進んでいた。後席の真理が声を上げる。

「和幸さんのC230が6万フィートを速度……えっ? マッハ…2.5でこの機体を抜いて行きます!」


「えっ? C230の最高速はマッハ2.2じゃなかったのか?」


「……情報が古かったか、それともあの機体が特別仕様なのか……だと思います」


「なんだって、それで和幸の行程時間はどのくらいだ?」


「えっと、223分です。こちらは219分なので、まだ私達の方が先に戻れると思います」

僕は肩を撫で降ろした。(まだ何とかなるか……)



「拓也さん! あの島です!」

後席の真理が声を上げた。僕も遥か下方に見える小さな島を視界に捉えていた。


「和幸さんは下地島でヘリコプターに乗り換えてこちらに向かっています」


「そうか、まだアドバンテージはこちらに有るな」僕は頷いていた。


「えっ? 拓也さん大変です。彼のヘリコプターの速度は200ノットも出てます。これは現代のヘリコプターの最大速度160ノットを遥かに超えています。最新の二重反転ローターに前進プロペラを組み合わせた四井重工の試作ヘリコプターS97と思われます」


「何だって? それによる和幸の時間は?」


「待って下さい。計算が出ます。私達よりも7分早く東京に戻れます」


「くそっ!」

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