第5話 甘い? 想い出……

「でっ、私と付き合いたいって?」

茜は大きな瞳で上目遣いに僕を見ながらそう聞いた。


「そうだ、約束通り、和幸を抜いて成績トップになった。テニスも県大会で優勝した。だから充分その資格があるだろう?」


彼女が右手の人差し指を自分の唇に当てる。

「うーん、どうしようかな……?」


「えっ? だって約束は……!」」


彼女はその人差し指を僕の唇に当てた。僕がその彼女の動作にドギマギしていると、彼女はゆっくり首を振った。

「それは過去の資格よ。新しい認定資格が在るわ、花婿候補のね!」


「えっ?」僕は驚いて茜を見つめた。


「知ってるわよ。貴方、MITに留学するんでしょ? じゃあMITを首席で卒業する事。それで貴方を花婿候補に・し・て・あ・げ・る」


彼女はそう言うと、指を僕の唇から外し、首を傾げて満面の笑みを見せた。

「じゃあね。待っているから」


そう言うと彼女はきびすを返して去って行った。僕は呆然と彼女の背中を見つめていた。

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