力の使い方
「何故そういうことでしか解決しようとしないんだ」
私は精一杯感情をのせて、説得する。
「外と内と、何が違うっていうんだ。別に何も違いやしないだろうが」
「違わないというのであれば、内と外の差を無くしてみろ。それをしない限り、外の人達の不満は消えない。一生俺はその影に怯えなくてはならない」
総理大臣は叫ぶように必死の思いを込めて、私に投げつける。
そして、投げやりに両手を広げる。
「あの人達は、平等にしろと、それを求めて俺たちを潰そうとしている。立場が逆転したとしても、それは平等では無いだろう。俺にできることといえば、その人達を……」
「殺すことだけ、か? 馬鹿じゃないのか?」
斬が私と手を繋いで、叫ぶ。
「その人達を全て殺害したとしても、また格差は出てくるぞ。人は、誰しもが得をする、という世界を造ることは無理だ」
「そんなの分かってる!」
とうとう地の性格を露わにする。そこには、1人の人間の素顔があった。
「俺が何かしたからといって、そんな人1人の力なんて限られている。俺は今、なんの影響力もない。フワフワと漂って生きてられる緩やかな世界なんだ、内も外も。その中、もっと、と求めてしまうのが人間なのだ」
はあはあと全身を歪ませて、息を整える彼を見て、私は正直意外に思った。
「なぜ、私の父と母を殺したんだ?」
パッと目をあげる。決意の色が濃くなる。
「それは、彼らが今の君たちのように、外の世界の人達を庇おうとしたからだよ」
それ以外、方法が思いつかないんだ!と駄々をこねるように叫び散らす彼は、何かから追い詰められる、という夢を見ているように見えた。
「父さん、そろそろ終わりにしませんか?」
「もとはお前がその社長を殺すという手筈だろう! 何故そうしないんだ! お前は、俺によって、俺のものになったはずだろう!」
「僕は、人間です。自分のことは、自分で決めますよ」
父親の姿を真っ直ぐ見て、実は言ってのけた。
茫然と彼を見つめる総理。その人に、実はある思いを重ねる。
「父さん、その解決法は、みんなに聞いて決めませんか? 何かいい案が浮かぶかもしれませんし、そうでなくても、外にいる人達へ、何かできるかもしれませんよ?」
「そんなの、何も分からない」
尚も後ろ向きの総理を、実は振り返らせる。
「何に怯えているのです?」
「それはお前を……」
目を見開く。
「お前を、何でしょう?」
必死に、自分の答えを纏める総理に、私達は希望を託す。
「お前を、守るために、やっていたことじゃないか。
何故こうなったんだ?
どこで俺は食い違った?」
涙を浮かべる彼に、実は優しい笑みを浮かべる。
「あなたは、人類のため、巨大な力を得ようとして、暴走しすぎたのですよ。
ただ、彼らの側にいるだけでも、彼らは助かるかもしれない。1人でも多く、救えたかもしれない」
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