真実とは
「彼らには好きにやって貰えばいいじゃないですか。
私たち政府の人間は、みんなを平等にする、とそれだけなのです」
もはや自分自身が政府の人間だと言ってのけた側近の男は、何かおかしな感情を表に出していた。
「お前、何を考えているんだ?」
「何も?」
フワフワと笑いながら、チェシャ猫の様に瞳の色が変わっていく、様に見えた。
「何故、破滅の未来に向かわせる事が出来るんだ?」
私がそう言った瞬間、狂ったように笑い出した男に、私達は動揺する。先程までの思慮深そうな男は何処かへ消えていた。
やっと笑いの発作が抜けたようで、男は、言葉を続ける。
「地球を、取り戻せるとしたら、どうします?」
何を馬鹿な、という目が男に集中する。
「地球は、滅びてはいないのです」
思い切りよくそう断定する。男の真剣な瞳に射抜かれて、私たちはギクリと動きを止めさせられる。
「地球は温暖化が進み、焼けてしまって使い物にならなくなった。そうは言っても、オゾン層が破壊された、とは言っていないでしょう」
「そうでなければ、地球があんなになる理由が無いだろう」
私が溜息をつきながら答えてやると、その男は軽く笑い捨ててみせる。
「単純に、オゾン層の厚さは関係なく、地球上でその原因があったとしたら?」
歴史は、変えられている。それは、どの範囲までなのだろう。
「お前は、何者なんだ?」
「地球から来た者です」
「なに!?」
1番驚いたような顔をしていたのは、大臣だった。
「そんなこと、あり得ない!!」
「宇宙に人が住む、ということですが、それも有り得ない、と言われていたことですよ」
ふふふ、と何がおかしいのか笑ってみせる男。彼は口を開く。私たちの常識を塗り替えるために。
「地球は、原子力爆弾によって汚染され、それによって人類は宇宙へと私たちをばら撒き、希望を託した。将来、地球が復活して、自分たちのような人間がまた生まれ落ちるように。輪廻転生を信じて」
くるりと梟のように首を柔らかく曲げて、私と目線を合わせる。
「彼らは、自分たちの過ちにより、死に絶えた。私たちは、彼らの希望。地球は、まだ生きています。原子力爆弾の効力が消えるまで、宇宙で暮らしてきた私たち。そろそろ、本題に戻ってもいいと思うのですよ」
「あの星は、過ごしやすいからな」
私達は、ゆるりと、信じられない、という目で、蒼が口を開くのを認めた。
「僕は、地球が存在した時から生きているんだ。地球で暮らしていたが、新田一郎さんの実験のおかげで、今まで生きている」
私たちを見て、泣きそうな顔で、言う。
「地球は死んでいない。この男は本当のことを言っている」
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