夕焼けの闇
途中に何度か起こる雨を見事掻い潜り、一直線に政府の人間が集まるであろう、集会場を目指す。
あんな所で閉じこもっていて、自分達が何を決められるっていうんだ。
胸の内でギラギラと輝く憎悪を仕舞い込み、私は皆の後ろからついていく。
「有里ちょっとすまんな」
そう言って斬は私の脇を掴む。
「えっ!?ちょ……まっ……」
私が何をされるかわからずにオロオロしていると、彼は私の体を持ち上げて、肩車をしてみせた。というよりかはただ浮かんでいるのを掴み取っている、という方がしっくりきそうな有り様だった。
少しの間、私は堪えたが、彼の不器用そうな笑みを見て、たまらず笑い転げてしまった。
笑ってくれた、とばかりにこちらを見つめてくる斬と、俺を差し置いて何をしている、と言わんばかりの実の表情。
「私、やっぱりみんなの事が大好きだ」
しみじみとそう言うと、皆は少し照れた様子で各々の隠し事をしたときにする仕草だろうものをしていた。
しばらく漂っていると、神宮が手を横に広げて私達の前進を止める。
「やはりな……かなりの護衛がいるぞ」
言われてみれば周りから少しだけ殺気が滲んでいた。
「実、味方の弾の残量は?」
実が答えた数に動揺する。
少なすぎるな。ボスが神宮だと思っていた分、景気良く使ってしまったからだろう。
「神宮、そっちはどんなもんだ?」
それで答えられた数字も、政府と全面戦争する時には足りない。そもそも、味方と敵の兵力差が凄まじく、とても真っ向からぶつかって勝てる相手とは思えなかった。
私が内心泣きそうになりながら考えていると、斬が言葉を紡いでくれた。
「別に殺さなくてもいいんじゃないか?」
私は呆然とする。
「平和的にどうにか解決できないものなのか?俺を救う時、お前はこいつを殺そうとしたか?」
「すまん……その事を忘れてきた。面目ない」
神宮が笑い出す。
「ああ面白い。あなたたちの絆って面白いですね!!」
大声で言って、グルグルと回る彼に、みんなで溜息を吐いて抗議した。
「では、そろそろ着きますよ」
心の準備が出来ていない、とみんなで焦るが、神宮にとってそんなことは関係ない。
どんどん進み、私たちは置いていかれないよう、なんとか突き進んでいく。
目の前に見えてきたのは私の会社よりも一回りは大きそうな赤い星。それはよく見ると、地球と呼ばれていたそれにそっくりだった。
みんなが絶句する。彼らはこんなもののことを一切教えられていなかった。
最低限の人間のみが入れるようになっていそうな探しにくい場所にあるそれは、それでも足りない、というように
誰も立候補なし、票入れもなし、ただこの星で住むことだけに特出した、過去の人達がここにいるのだと知り、私の怒りが、胸を張り詰めさせようとしていた。
「この政府とやらに何かをしてもらった記憶はないのだが」
斬が
「この荒廃は、中に人が住んでいるのに、手入れがされていない。つまり、前主席だった人たち老人がいるんじゃないか?」
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