雨
「まて。お前ら全員、診察してやる」
蒼が私たちを引き止めると、気持ちがせいで露骨に嫌な顔をしてしまった。
「ほう……この僕にそんな態度とるってことは……」
分かってるな?と言ってポケットから何かを取り出そうとしているのを見て、私達はすぐさま白旗を振る。
一通り診察が終わると、蒼は少し疲れた顔をしていたが、それでも元気にはしゃいでいた。
「みんな問題ないな! それじゃ行くか!」
そう言ってフワリと漂って向かう蒼の足取りは、普段より上機嫌で軽やか。
暗い宇宙に着いても、口笛を吹きそうなほど楽しさを明らかにしながら、蒼はどんどん進んでいく。
前は暗いところへ行くと、露骨に不機嫌になっていた。
理由を聞いたことがあるが、自分の他の人とは違う目の白いところが光ってみんな怯えてしまうから、という事だった。
それを克服したのか。相変わらず蒼は強いな。
私が和やかに後ろから視線を投げると、蒼がこちらを振り向くものだから、慌ててしまった。
だが、蒼はそれどころではなさそうに、逼迫した状態で叫ぶ。
「雨が降るぞ!!」
そう叫ばれて、私たちは一斉にお互いの方を向いて、みんなで手を繋いで纏まった。斬の逞しい手と、実の綺麗で手入れされた手が、私を引っ掴む。まもなく、近くに自然の星のかけらが降り注いだ。ぶつかってまた小さくなる。光るそれらは綺麗だが、今の私達にとって、酷く恐ろしい自然の脅威だった。ぶつかって跳ね、去っていき、光りながら楽しそうに通り過ぎていく星達。
どうか当たりませんように、と祈るしかない私たちを誰が見ていたのか、全部私たちには当たらずに去っていった。
「綺麗でしたね」
恐怖のあまり動きが鈍くなっている私たちに、神宮は
それに溜息をもって答えると、いつの間にか手の震えは止んでいた。
「どうです? まだ旅を続けますか?」
まああなたとだけ行くのも良さそうですね、と言って私の肩を掴むが、その横で今にも噛みつきそうな顔をしている斬と実、そして1番敵意を露わにしているのは、杏子だった。
「有里に触るんじゃないわよ」
唸り声すら聞こえてきそうな調子で杏子は神宮を圧する。
神宮は全く動じる事なく、冗談ですよ、と笑って言って、あっさり手を離す。
「では脱する人はいないということでよろしいでしょうか?」
みんなは当たり前だ、と言わんばかりの目で応じる。
「やれやれ」
そう呟くと、神宮は向かっているのと逆方向を見て、指笛を鳴らした。
一目散に飛んできた彼の弟分たちが闇から現れ、私たちは
「なんで今更呼び寄せたんだ?」
「いえ、ずっと後を追わせていたのです。彼らの命まで預かる価値があなた方にあるか、確かめさせていただきました」
「ということは、俺達はお前のお眼鏡に適った、ということでいいのか?」
言葉が見つからない私の代わりに、斬の声が走った。
はい、と軽く言ってのけ、神宮は弟分に紹介をさせた。
「
「
まだ油断ならないな、と私が考えていると、ニヤニヤとした神宮の目が意地悪く私を覗いていた。
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