レーン
あっという間に鎮圧された敵に、思わずため息をもらしてしまう。
何かがおかしい。
流石に私は他のことを考えだす。
何故ここまで弱体化した?宇宙に放り出されたからといってこんなに弱い奴らしか最後の砦にいないのはおかしいだろ。
「あれ?」
私が鋭い声を出すと、完全に鎮圧し終えた皆が集まってくる。
「どうした?」
心配を滲ませ、斬が寄ってくる。
私はすぐさま神宮に近づく。
「お前! ここにお爺様の形見はあるのか!?」
みんなが身構えるのが見えた。
「あるわけないでしょう。あなたたちが襲ってくること分かっているのに、ここに置く馬鹿はいませんよ」
「「早く言え!」」
みんなの絶叫がこだまする。神宮は1人のんびりと耳を塞ぐ。
「うるさいですねぇ。どうするにせよ、ここの敵さん達には眠っておいて貰わないと、他の場所に移動する時に妨害してくるじゃないですか。手間は同じはずですよ」
「そりゃそうだが……心の準備というものがな……」
そう言ってやると、神宮はぽかんとしている。
天然か。そう思いながら、私は慌てて神宮に聞く。
「どこにあるんだ?」
「さあ、今頃政治家の手の上かもしれませんし、でももしかしたら……」
もしかしたらなんだ、と私は急き立てる。
「まだレーンに乗っているかも知れませんよ」
「ここまで執着してきたものをレーンに乗せるわけないだろう!」
おや、と神宮が冷たい笑みを浮かべる。
「その盲点をつく、とかなんとか言ってたみたいです」
ああ、盗聴器を仕掛けたのか、と私は納得する。つまりはヤクザ連中と政府の陣営は仲がいいようで、全くお互いを信用していなかったのだ。
レーンとは、『超強力な相手の磁石をもらって、中に物入れた筒を早いスピードで相手に届ける優れもの!』という宣伝文句が売りの商品だ。渡す方が筒の中に棒を入れて品物を突っついて、相手が回収する、というもの。だが、そういう雑な搬送で品が崩れてしまったりすることが多発して、今ではほとんど使われていない。最悪、途中で自然の星の爆発に巻き込まれたり、自然の星自身の接触によりレーンが壊れてしまったりするため、物珍しさで普及したものの、すぐ廃れてしまった。
「あれは危なすぎるだろ! あいつら、自分が扱っているのは世界を滅ぼしかねないものだと知っているのか?!」
「いやぁ、実は伝えてないんですよねぇ」
神宮がのんびりと言う。
「「お前なぁ!」」
またみんなが被った事で嬉しくなり、私は少しだけ冷静さを取り戻した。
「まあ言っても仕方がないか。レーンは恐らく今の総理大臣が抱えているはずだろ。大臣のところへ行ってみればいいんじゃないか?」
まあ、その通りですね、とまた伸びやかに言ってみせる神宮に、私達はため息をプレゼントした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます