激突

「それ、来たぞ」


 神宮の視線を辿っていくと、武装した兵士たちがこちらへ向かってバイクを飛ばしてきた。後ろの噴出口から空気を存分に吹き出し、飛んでくる不思議な物体。


 あれ、何度見ても蛇にしか見えないんだよな……


 フリフリ蛇行してこちらへ向かう彼らは、両手に手榴弾を持っていた。

 戦慄するみんなに背を向け、神宮はどこかへ去ろうとしているように見えた。


「おいちょっと待てもう少し手を貸せ!」


 そう私がいうと、神宮は呆れた顔でこちらを見た。


「これくらい、自分で片付けてくださらないと困ります」


 私は言葉につまり、そして覚悟を決める。


「よし、みんな準備はいいな?」


 振り返ると、のんびりとした皆がいた。心強い彼らに目配せをして、私は、日記を取り出した。


「日記はここだ! 残念だったな!」


 声を張り上げると、彼らは一斉に私の方に目を向け、片手でハンドルを持った。もう片方で器用に、光り輝く刀をすらりと抜きながら。


 ブゥン、というバイクの音と共に近づいてくるその刀先を、自分の体に巻きつけていた紐を引っ張ることで後進してかわす。


 全く、天地がひっくり返っても、暴力に訴えることは変わらんのか。


 少し失望を覗かせると、相手がほんの少しだけ怯んで動きを止めた。


 パン、という音が、バイクの音を奪い去って響き渡る。


 斬を見ると、煙をだした銃身はこちらへ向いていた。


 自分を撃ち抜く可能性だってある、と私は微塵とも思っていなかった。


 斬の能力はこんなもんじゃないし、こんなことに、命を奪うことに、使っていいわけがない。

 少しだけ後悔を滲ませそうになり、首を振って思考を断ち切った。


 こんなことを考えていては斬にまた叱られてしまうな。

 それでもいいかも、と思いつつ、だが斬の獲物を奪ったりはしない。


 私は瞬時にしゃがんで、上を通り過ぎる風と悔しげな男の表情を無視して前に転がり、距離をとる。

 ジリジリと見つめ合う私たち。

 男は私の武器を探すように私の体を注意深く見ていたが、耐えきれなくなったらしい。突撃してくるその男の刀が私に届く前に、私は右手に隠し持っていた銃で男を撃ち抜く。倒れ込んだ男は、フワリと浮かぶ。

 他の奴らは、と周りを見渡すと、ほぼ全員が敵を無力化していた。


「思ったように! 動けないわ! もーー!」

 1人、宇宙服を着てワタワタしている杏子は、それでも敵を殴りつけて撃退している。


 斬は敵に一発拳を打ち込み、全くダメージがないと侮る敵に、銃を御見舞いしていた。どれも体を避けるように打ち出し、敵は無傷なのに恐怖のあまり動けなくなっていた。


「こいつら戦闘なんざしたことねぇのか」

 斬が驚いた様子で観察眼を発揮する。


 実は容赦なく銃をぶっ放すが、極力足に一発、くらいでやめていた。

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