予想外の珍客
「いやぁ、随分と舐められたものですねぇ」
背後から聞こえた声に反応する前に、斬が動いた。
彼は問答無用と言わんばかりの勢いで銃を放ち、確実に火薬を消費していく。
1人の人間に対して過剰すぎるほどの弾丸を使って、カチリと銃が空になった音がするまで撃ち続けた。
砂埃なんて舞いそうもない宇宙、相手の様子はハッキリと見えた。
なんで、まだあいつは立っているんだ!?
「昔話をしましょうか
宇宙に適合できる、と言われたとき、かなりの人が残虐な一面を見せたのです。
今までの人類は、ノアの方舟のように、一旦リセットされました」
フワフワと漂う、人畜無害に見えるその男。手には、物騒すぎるマシンガン、メリケンサックが握られていた。
「なんでそこまで……」
絶句する私に同意しつつ、斬は私を守るべく前に立ち塞がる。その瞬間、杏子と蒼が動こうと殺気を放ち襲いかかる、前に、マシンガンが火を吹いた。
「なんでお前がここにいるんだ!?」
斬の叫びが耳に刺さる。
動揺した私と斬を嘲笑うかのように麗筆に、手紙を書くように流々と打ち込んでくる。
「いや、帝さんが裏切るかもしれない、という直感が湧いてきまして」
要するに勘です、とその男は何でもないことのように言い捨てる。
何でこいつ無傷なんだ!意味わからん!
「ちょっと、そちらの方達、武器と殺気をしまいなさい。さもなくば、ここで彼女を殺しますよ」
杏子と蒼は瞬時に男の言葉に従う。
つまり、3人がかりでも私を守りきれないほどの敵、ということか。
「私の名前は、
その名前を聞いて、すぐに脳内でヒットした。
「ヤクザの大元っ…!!」
「その二つ名、そんなに気に入ってないのであまり使わないでくださいな」
三白眼を一層細めて、私に頼み事、いや、命令をする。
「なんでっ……!」
おや、といわんばかりのわざとらしい仕草で、斬に声をかける。
「お前もそっちにいるのですか、残念です。
それと、なんで、に対する答えは先ほど述べたでしょう」
最後の方は苛立ちを滲ませる。
斬はそれだけで怯えるように一歩下がった。
だが、私の前からは絶対に退かなかった。
「つまり、私もあなたも、あなたも、斬でさえ、人間が作り出した人造人間なのですよ」
「だから?」
相槌が返ってきたことをむしろ楽しむようにニコリと笑って口を開ける。
「だから、そんな私たち失敗作が出回る前に戻してやればいい!地球はまだ再生できるのですよ。
そのための装置が、私が今から手に入れる、あなたのお爺さまが作られた、磁石なのです」
「話が広大すぎて意味がわからん」
斬が吐き捨てると、神宮は笑っていった。
「そりゃそうですよ。これは、私が何年もかけてやっと辿り着いたものなのですから」
「つまり」
私が満を辞して声を上げる。
「お前の目的は、ブラックホール外の人物云々ではなく、すべての今生きている人間を殺すことなのか?」
「いいえ」
神宮は捻れた笑いを噛み殺すようにして発言する。
「今生きているのは人造人間であり、人間ではない。実験によって元人類が変容するのであれ、それはもはや人間ではないのですよ」
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