真実

「何言っている杏子!僕の目が節穴だとでも言いたいのか?お前はこんなの本心じゃないんだろ!言ってみろ!僕がどうにかしてやる。絶対に」


 力強い蒼の説得にも耳をかさずに、杏子さんは私に語りかける。

「実ちゃんはね、総理大臣のお孫さんなの。彼は、実ちゃんにスパイになるべく色々な試練をやらせたんだよ?」


 私が実を見ると、彼は打ちひしがれていた。それでもやっとの思いで口を開いた。


「きっかけは、そうだったのかもしれない。でも、有里と仲良くやっていきたい、というのも本心なんだ。頼む有里、大人しく言うことを聞いてくれ」



「はぁ?」


 流石に私がブチギレる。その剣幕に実も帝でさえもタジタジになった。


「私がそんなので納得するわけないだろ。おまえがやりたくないことは私もやりたくない。何かに縛られてるんだったら解放してやる。だから、こっちへこい。杏子、実」


 2人は目を見合わせる。


「そっちへいったら私たちは死んでしまうのに?」

「それでもだ」


 強く瞳を2人にぶつける。杏子はため息を一つこぼして、話を進める。


「教えてあげるわ、有里。

 私は、人間代表、実ちゃんは、人造人間の代表なの。

 私たちは、あなたの祖父である新田一郎の発明品なのよ」


 状況についていけず、私は地団駄を踏む。


「どう言うことだかさっぱりわからん!ちゃんと詳しく説明しろ!発明品だからと言って、何が悪いわけでもないだろう!」


 杏子がくすっと笑ってみせる。

「有里ならそういうと思った。

 でもね、私たちが総理に歯向かったり星のことを漏らすと、中に埋め込まれている爆弾が大変なことになるのよ」


 杏子が説明するところでは、今生きている人たち、つまり私たちはなんらかの方法で政府に生かされている状態なのだという。


「それより、実が人造人間って……どういうことなんだ?」


 やっと実が意を決したようにしっかりとしたいつもの声で説明する。

「地球が爆発する、となったとき、今までの人類の形では宇宙で死に絶えてしまう、という事だった。それで僕らは、遺伝子交配で望み通り、宇宙にいても生きていけるような、そういう種になったのです。

 だけど、違法に行われた実験で、人としてそのままで、つまり重力に愛されたまま宇宙でも生活できる、杏子が生まれた。彼らは、それを作るのに躍起になった。誰も死にたくないだろうし。でもその時の成功率は1%にも満たないどころか、杏子と僕しかいなかった。僕は完全に重力による影響を失って、どこでも歩けるようになった。杏子は重力に捉われない真空の場所だと簡易だが機械をつけなくてはならない。

 だから、杏子と僕は成功した子供として、色々な実験という名の、拷問のような日々を送った。それを有里のお爺様が止めてくれたんだ」


 とっくにキャパオーバーの私は、ただ聞くことしかできない。斬の顔がよぎって、何とか立て直し、恐るべき質問をする。


「私も……人造人間ということか?父と母は?」

 少し顔を和らげて、実は言ってくれた。


「僕らが生まれた時から生きていた貴方のご両親は人間だよ」


「だから、その人間だの人間じゃないだの言うのが気にくわん」


 そう叫ぶように言うと、2人は間の抜けた顔になる。


「人造人間だって、人間だろ!人は人から生まれる、だがその魂は神が入れるものだ!何もかもを掌握したような気になっている科学者たちが気にくわん!!実験を行なっているそれだって、神の領域である魂とは結びつかんだろう!」

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