新田一郎の日記

 俺は、視線を交差させて決められた代表として、日記を声に出して読む。

 一文字たりとも変えること無く、読み上げる。



「とんでもないものを開発させられてしまった。

 警察等のために、全ての星に付くことの出来る磁石を作れ、だと?

 無重力下になった空間で、警察なぞいるもんか。

 力の行使なんて無理に決まってる。

 逆に、その磁石が引き金となって争いが起こりかねない、と何度も石田に言っているというのに、全く聞く耳を持ってくれない。

 作らなければ俺の息子を殺す、と本気で言っていた。

 それだけ、治安維持は世論で叫ばれているのだろう。みんな血眼になって、新しい状況での対策を探している。

 俺はどうすればいいんだ。」




 一息つき、別の日に移る。




「あの『全ての星に付くことのできる磁石』、

あれは一部関係者以外には門外不出にする、という結論が出た。

 石田は俺に、磁石を安全に保管するにはどうしたらいいだろうか、と言ってきた。

 存在自体を知られずに、大切に保管だなんて何と無茶苦茶な。」




 そして、肝心のその日を、俺は読み上げた。




「思いついてしまった。

 あれをわざと、無意味なものでも希少価値のあるもの、として保管しておけばいい。

 あれは危険すぎる。

 『出来損ないの星』として噂を流し、初の星だと有名にして、情報を錯乱させよう。」

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