第2話「愛宕の演説」



「部長として、みんなに話がある。」ついに私は言う。


ジャズダンス部の新入部員が毎年減る一方でもう片方のモダンダンス部の部員はうなぎのぼりに増えている。モダンダンス部に入部するために入学する生徒もいる程だ。


「片や全国常連の部、一方で我々の部は毎年五人も集まらない。三学年合わせて十人前後というのはもはや部活として成立していない。顧問からもこのままではジャズダンス部に併合されるしかないと言われている。」同学年だけを集めたこの場で伝える。三人中三人が出席している。男子三人、気兼ねしなくて良い関係なのはありがたい。上級生はあと三ヶ月もすれば卒業してしまうし、下級生は入部してまだ一年も経っていない。どういった結末になろうともいずれ最上級生になってしまうのだから、我々がこの部の行く末を決めなければならない。



「愛宕、俺はモダンダンス部と併合してしまうのもアリだと思う。」飯田が言う。彼は我が部のエースであり、唯一のダンス経験者だ。顧問以外に経験者としてこの部活を引っ張っていけるのは彼しかいない。


「モダンダンス部にも初心者パートがあるんだし、全国を目指さず、好きなペースで練習できる今のような場所がなくなってしまうわけではない。そもそも方針が違うだけで内容自体が変わらないのであればジャズダンス部に固執する必要はないんじゃないのか。」



飯田の意見も最もなのだが、それだったらどうして飯田がジャズダンス部に入ったのかがわからない。ダンス経験者である彼こそが全国常連のモダンダンス部に入るべきなのではないかとも思うが、彼には彼なりの言い分があるらしい。



「俺としては、この部活でやれた方が力まずやれて良いけど、モダンダンス部の初心者コースしかないならそれはそれで仕方がない。次期部長である愛宕には悪いが、たまたま都合が良いからジャズダンス部に入ったものの、本心としては踊れさえすればどちらでも良かったんだ。」



飯田の言う通り、全国を目指す括りと好きなペースで取り組む括りで分けられるのであれば、ここにこだわる必要なんてどこにもない。踊れるのであれば何もこの場でなくても問題ない。しかし真の初心者はどうしても気兼ねしてしまう。それが気がかりだ。

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