弱小ダンス部の憂鬱

鷓鷺

第1話「愛宕の憂鬱」



限界だ。


運動部の掛け声、ギター部の演奏、そして帰宅部の笑い声がこの会議教室の外から聞こえてくる。どの生徒も思い思いの放課後を過ごしている。それに引き換え、我が部は進退を迫られ鬱屈としている。


同じ高校にダンスの部活が二つもあること自体がおかしいのだが、ダンス部の活動が著しく目立つので仕方がないのかもしれない。その辺りの謎はわが校始まって以来の歴史の中で眠っている。


ダンス部の片方は全国大会常連の集団で、もう片方は初心者の集まりだ。ダンスには様々なジャンルがあり、フォークダンスからフラダンスから盆踊りに至るまでありとあらゆる種類のものがあるけれど、我々の高校に存在するダンス部はモダンダンス部とジャズダンス部の二つだ。ダンス自体の内容は瓜二つだが、活動の規模は両極端に位置する。


後者のジャズダンス部はゆったりとした活動を主としていて、初心者から中級者までが集っている。何人かは全国区であるモダンダンス部にいてもおかしくない程の実力を有しているが、こちらの方が自由に取り組むことができるという理由でジャズダンス部として活動している場合もある。このようにジャズダンス部の存在がダンス初心者を含め全国区でバリバリ活躍したいと思う生徒以外には一役買っている。


対してモダンダンス部は本格的な指導が売りで、顧問の力の入れようも半端ではない。それも一過性のものではなく何年にも渡ってモダンダンス部を全国大会へと導いている。全国で活躍することで生徒たちをプロの道へと送り出すことも評判となり、公立高校ながら全国から生徒が集まってくるという。流石に全国区ともなると近隣の高校とは試合を行わないらしく練習試合と言えば専ら地方遠征を行う。練習試合の開催すら一苦労の我々からすると羨ましい話だ。


しかしこういった体勢は部外者にとってはただの疑問でしかない。同じダンス部活の中でクラス分けをすればそれで良いのではないかという意見が圧倒的多数を占める。それは他の生徒からの意見であり、保護者からの意見であり、そしてこれから受験をしようとするダンスに興味のない中学生たちの意見でもある。


我々ジャズダンス部は存続の危機に立たされている。そして私はいわゆる弱い方のダンス部、ジャズダンス部の次期部長として部員たちと歩む道を決しなければいけないという崖っぷちに立たされている。

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