第2話 ドッタンバッタン大騒ぎ!

 翌朝

「うっ、頭イてぇ・・・」

 起きるといつもの部屋ではない事に気付き、身体を起こすと酔い潰れた者たちが床やらテーブルの上やらに、ヨダレを滴ながら横たわって爆睡していた。

「ああそうか・・・。昨日は夜通し飲んでたんだっけ・・・」

 と記憶を掘り起こしていると、やけに身体に重みがあるので少しずつ意識を覚醒させると───。そこには美少女が、という訳ではなくドワフが俺の腹の上に横たわっていた。

 ・・・通りで重い訳だ。

 ドワフをテキトーに床にゴロンと転がし立ち上がろうとすると、足がもたつき何かに引っ掛かって転ぶと顔と手に柔らかい感触が・・・。

 もにゅ。

 これは、まさかっ!と思い顔を上げると、そこには受付で良くしてもらっている受付嬢の姿が・・・。ま、まずい。まずいなこれは。とにかく離れようと立ち上がろうとすると、突然抱き寄せらた。

 か、顔に柔らかい感触が・・・。いい匂い・・・。と、しばらくこの状況を甘んじていると後ろから殺気が。

「ネオ?何をしているのかしら・・・?」

 首を恐る恐る上げるとそこには鬼の形相をしたリンが。

 ホント、マズイ───。

 リンに顔面を一通り腫らすまで殴られた後、エリーとミリーを起こし俺達四人は家に帰るのだった。

 家に着きリビングに入るとソファーでダランと寝っ転がっているドーランの姿が。しかもシャツ一枚で。危ない。色々と危ない。ひとり危機感を抱いていると隣にいたリンはドーランの方に向かいお尻をぺちーんっ!と叩き、手形がつく程強くやっても起きる気配がない。ので、諦めたのかリンはとぼとぼと部屋のある二階に上がってしまった。

 エリーとミリーもそれに続き、眠たそうに眼を擦りながら二階へと上がっていった。

 ひとり残された俺はドーランを起こすのは面倒なので無視することに決める。結構眠いが酒臭いまま寝るのは嫌なので風呂に入ってさっぱりしてくる。

 風呂から上がりリビングに戻るとすでにドーランの姿はなかった。

 井戸から汲み上げてきた水をコップに注ぎ、一杯飲んだ後部屋に戻る。

 そして部屋に戻りドアを開けると、そこには俺のベッドで寝ているドーランが。

 な、なんで・・・?帰ったんじゃ・・・?と困惑していると、ドーランの目がカッと見開き俺をベッドの中に引きずり込む。

「お、ちょ待て!か、帰ったんじゃなかったのか、んっ!?」

 口を動かしていたらドーランの人差し指が俺の唇に触れる。

「しーっ。そんな大きな声を出したら皆に気付かれちゃう」

 とそんな事を言ってくるが俺はそれでどころではない。今の状況マジヤバい。布団の中に俺とドーランふたりで入り、すべすべの白い脚を絡ませてきて胴体はピッタリとくっ付き、大きく柔らかいたわわな胸が押し当てられ、ドーランの息遣いが耳元で聞こえ、良い匂いが鼻腔をくすぐり理性が今にも壊れそうだ。

「ねえ、いい・・・よね?」

 と甘い声で耳元に囁かれた瞬間、俺の理性は崩壊し事を致そうとしたその時───。

 ダンッ!!

 思いっきり開かれたドアから入ってきたのはリンだった。

「ドーラン、いい加減にしなさいよ・・・?」

 リンは鬼の形相でこちらに詰め寄り、後ろには般若が見える・・・。怖い・・・。

「あら良いじゃない。ネオは私のものなのだから」

「あなたまだそんな事ほざくつもり?」

「あなたもよ?」

 またもや俺の前で目に見えない火花が散っている・・・。

「と言うかあなた、何で私達の家にいるのよ」

「別に良いじゃない。私の服、ネオの部屋にも置いてあるんだから問題ないわ」

「いや、問題ありだわ・・・。ん?今ネオの部屋に服を置いてるって言わなかった?」

「ええ、そう言ったわ」

 リンが俺に向き直り。

「ねえネオ・・・。何でかしら・・・?」

 指をポキポキ鳴らしながら問い詰めてくる。ひえぇ・・・!

「え、ええと。俺も気付いた時にはあって、えーっと、そのまま気にせず置いておきました・・・」

「ふたりして私に殺されたいのかしら・・・?」

「ひ、ひえぇ!す、すすすみませんしたぁぁぁ!!」

「私は謝らないわよ?」

「なら取り敢えず、殺すっ!」

 早くも本日ニ度目、リンからのグーパンチ・・・。

 もう寝かせてくれ・・・。

 無事、ではないがリンからのグーパンチで寝る事ができ(気絶とも言う)、起きた時にはもう陽は沈みかけていた。

 身体を起こしベッドから下りて伸びをすると腹が減っている事に気付き、そろそろ晩ごはん作ろうかと思い一階に降りキッチンに行くと、リンがすでに晩ごはんを作ってくれていた。

「ネオ起きたのね」

「ああ。ん、ドーランは?」

「帰らせたわ」

「そ、そうか」

「なにその反応?帰らせたらまずかったの?」

「い、いえ、決してそんな事はないです」

 今日のリンはいつにも増して怖い、怖すぎる・・・。

「ふん、ドーランに好き勝手される訳にはいかないわ」

「さいで・・・」

「それよりも、晩ごはんまだ時間掛かるから待ってて」

「あいよ」

 そういう事なのでリビングにあるソファーに座る。

 それにしても今日は大変だったな・・・。朝っぱらからリンに殴られては、今リンは不機嫌で冷たいし・・・。と一日を振り替えっていると(と言ってもほとんど寝てるだけだったが)、昨日今日の疲れがどっと出てきて睡魔が俺を襲う。

 ウトウトと舟を漕いでいるとギシギシと階段を踏みしめる音が聞こえてきた。

 階段の方に視線をやるとエリーとミリーが起きてきたみたいだ。

「お、エリーとミリーもう大丈夫か?」

「うん・・・ふあぁ」

「なんとか・・・」

 エリーは答えた後大きく欠伸をし、ミリーも眠たそうに眼を擦りながらこちらにやってきた。

「ん、もうすぐご飯?」

「お腹空いた」

「まだ掛かるから待っててね」

「「わかった」」

 とハモって答えた。

 かわいいなあ、とひとり和んでいるとエリーとミリーがパタパタと走って俺の下へやってきた。

 はあぁ、めっちゃ和むわ・・・。

「ネオ座らせて」

「あいよ」

 とエリーが。

「ネオ抱っこ」

「おいしょっと」

 そしてミリーがねだってきた。ふたりともまだ幼く、背も俺の腰辺りまでと低いが百聞は一見に如かず。この娘たちを侮ってはいけない。

 エリーとミリーは幼いながらも暗殺に長けており、なんでも俺達に会う前は暗殺者になるために親をはじめ、親の知り合いである現役暗殺者からも指導を受け英才教育を施されたらしい。

 そのため俺達のパーティーではふたりとも遊撃手として居てもらっている。因みに俺が前衛でリンが後衛。しかしエリーとミリーも役職を除けば普通の女の子。しかもまだ幼いので俺達、特に俺によく甘えてくる。それがまた凄くかわいいのよ・・・。例えばお手伝いで洗濯物を自分たちでやりこなした時なんか俺の下に来て「お手伝いの洗濯物出来た」「褒めて」と撫でてもらうために頭を少し下げてきて、撫でてやると嬉しそうに目を細め頬を赤く染めて笑う・・・。思い出すだけでもう・・・かわいすぎる・・・。

 と俺の膝の上に座っているかわいいエリーとミリーを撫でまわしていると。

「ご飯出来たよ~」

「「「はーい」」」

 三人とも声をハモらせて返事をした。

 食卓につくと豪華メニューでどれも美味しそうだ。

 まず今日依頼クエストで倒した中型ドラゴンのステーキ、そして鳥では体長六メートルと一番の大きさを誇るオオワシのもも肉を使ったシチュー。そしてデザートは中庭で育てている果物が並んでいた。

 そして四人とも両手を合わせて。

「「「「いただきます」」」」

 まずはフォークとナイフを手にステーキから。

 塩こしょうで味付けした肉はナイフで切り込むと共に肉汁が溢れてきて、鉄板がジュウーっと音を鳴らす。 口に入れ噛みだすと、歯応えのある食感に塩こしょうの絶妙な味加減、さらには溢れんばかりの肉汁が出てきてとても旨い。

 リンが作ってくれた料理を堪能していると。

「ネオ」

「なんだ?」

「昨日のやつ」

「昨日の・・・ああ、わかったよ」

「むう」

「リンだけズルい」

 とエリーとミリーは不満そうにこちらを見ていたが、それ以降は特に文句は言わずに晩ごはんを食べていた。

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