81時限目【正義の悪魔】
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顧問のフォルネウス、クロエルにモコエル、その上マールとガブリエル2世ですら彼女、マナエルの存在を認識していない!
ロリエルの小さな胸が騒つく。
胸騒ぎがどんどん大きくなり、走り回って辿り着いた場所は……
今回もロリエル視点継続だ!
◆◆◆◆◆
パワースポットに繋がる長い階段が目の前に立ちはだかっている。マナエルを捜している内にこの場所まで無意識に来てしまったようだ。
既に陽は傾き、辺りは薄暗くなり始めている。
白き天使ロリエルは拳を強く握りしめ、1人その階段を登る。暫く歩くと鬱蒼と茂った木々に夕陽は遮られ視界が一気に悪くなる。
ガサッ
「ひゃっ!?」びくん!
目の前に飛び出した野生のパタパタぬきは一瞬空中で停止しては驚くロリエルを見つめる。
「な、なんだ……パタパタぬきか……」
クェェッ!
「ひゃんっ!?」びくびくぅっ!
天鷲の鳴き声に反応したパタパタぬきはすぐさま草むらへと身を隠してしまった。ロリエルは辺りを見渡してみる。
良く聞くと様々な野生動物達の鳴き声が聞こえてくる。
(うぅ……こわい……先生の言ってた通りだ……)
ロリエルはキャンプの日にフォルネウスが言っていた言葉を思い出す。
夜の森は危険な野生動物が出るから1人では絶対に入ってはいけないぞと口酸っぱく言っていたのだ。フォルネウス的には魔界の森を思い浮かべていたのだろうが。
(大丈夫……デビパープル……私に勇気と眉毛をちょうだい……! 何となくだけど、この先にあの子がいるような気がするの……!)
ロリエルは深く深呼吸をして落ち着きを取り戻しては再び長い階段を登り始めるのであった。
時間は経過し、いよいよ完全に真っ暗になる。ロリエルは息を切らしながら長い階段を登る。
その時だった。
ロリエルは周囲に気配を感じ歩みを止めた。目を凝らし見渡してみたロリエルは身体の力が抜けてその場に尻もちをつく。
いつのまにか天狼の群れが小さき白天使を取り囲んでいたのだ。
天狼、——天界に住む幻獣であり、天界で最も危険な野生動物である。
危惧すべきことはその天狼の習性である。天狼は天使のルミナスを喰らうことで自らの生を繋ぐ。
そんな天狼からすれば、
「はぅぁっ……こ、これって…」
身体が震えて立ち上がれないロリエルとの距離を徐々に縮める天狼達。その内の一頭が真正面から無慈悲に飛びかかった。
ロリエルは目を閉じ小さくなる。
(……あれ?……)
覚悟を決めたロリエルだったが、その小さな身体に天狼の牙が届くことはなかった。
飛びかかった天狼の顔面にめり込む靴。
吹き飛ばされ地面を滑る天狼、そしてその様を見てすかさず距離を取る群れ。
倒れた天狼は痙攣して動かない。
「おうおう、俺の可愛い生徒に手を出すとはいい度胸じゃねーか……! アイツと同じ目に遭いたいならかかってこい! 全員この天使部顧問のアビス・フォルネウス2世が相手をしてやるぜ!」
(せん……せぃ……!)
ロリエルは目の前の漢の姿を見るなり大粒の涙をポロポロと流した。
「ロリエルちゃーん! 助けに来たっす!」
「こんな犬、フォルネウスに任せておけば大丈夫なの〜! だからもう安心なの〜!」
犬ではないぞ、ガブリエル2世!
「ロリエルちゃん……!? も、もも、もう、大丈夫ですからっ!」プルプルプル!
「はい、泣かないで〜? これで涙を拭いて〜?」
天使部の皆も少し遅れて集結。
ロリエルは驚いた表情でモコエルからハンカチを受け取り涙を拭いた。
「うっ……皆んな……ぅぁ……」
「あら、また泣いちゃったっす。ロリエルちゃん、拙者達はロリエルちゃんの苦しみが分からないっす。
でもロリエルちゃんは何か大切なことを皆んなに伝えてるんだって、それだけは分かるっす!
……この先にその何かがあるなら……一緒に行くっす!」ぴょこぴょこ!
「……マールちゃん、皆んな……」
「それにはまず、この状況を何とかしないとな! お前らは下がってろ! こんな犬っころ…!」
(魔界のケルベロスに比べりゃなんてことねーさ!)
フォルネウスは構える。
すると後方からガブリエル2世が言った。
「さっさと全部やっつけるの〜! でないと噛み付くの〜!」
「へいへい、任せとけ!」
(この場合、ガブリされてる方がなんぼかマシかもな!)
天狼の群れはこの場を去る気はないようだ。
やはり、白天使が目当てだろう。
フォルネウスは拳に力を込めその群れに飛び込む!
天使達は心配そうにそれを見つめて祈った。
◆◆◆◆◆
フォルネウスよ、見事天狼を制してみせよ!
そしてその先にいるかも知れない、記憶から抹消された存在に辿り着くのだ!
そうすれば、きっと……!!
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