78時限目【上位互換】
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ついに動き出した四大天使は、こちらの動きを察知し、マナエルという刺客を送り込んでいた!
マナエルとは何者なのか!? サンダルフォンとラジエルが捕まった今、その事実を報せる術もない。
天使部に脅威が迫る!
そして、四大天使の残る2人、彼女達が療養中のメタトロンに迫る!
◆◆◆◆◆
キャンプ場。
美味しそうにデザートを食べる○○エル達。
相変わらずガブリエル2世に噛み付かれたままのフォルネウスだが、観念してそのままデザートを食べている。
フォルネウスは時間を見て夜更かしの天使達にそろそろ寝ろと促した。
「はぁ、もうこんな時間っすか……楽しい時間はすぐに過ぎてしまうっすね」
「うぅ、でも大丈夫なの〜! まだまだ夏休みは長いの〜! 今度はお祭りにも行くの〜!」
「そ、そうっすね! ところで先生はどこで寝るっすか?」
「ん? 俺は外でいいよ。見張っててやるからテントで寝ろよ?」
フォルネウスはそう言ってはガブリエル邸の執事が用意してくれたリクライニング式の椅子に座る。
天使部の○○エル達はテントへ移動した。フォルネウスは星の綺麗な天界の空を見上げながら静かに目を閉じて、夜虫の鳴き声を聞いている。
テントの中からは定期的にクスクスと笑い声が聞こえてくる。こうして一度笑い始めると中々寝付けないものである。
暫くするとその声も聞こえなくなり夜のキャンプ場は静まり返る。
フォルネウスはそっとテントの中を覗いてみる。
仲良く寄り添って眠る生徒達の姿は本当に微笑ましい限りだ。
音を立てないようにその場を後にして再び椅子に腰掛け、雲一つない綺麗な夜空を再び見上げた。彼は今、何を思うのか。
一方テント内ではロリエルの小さな手を握るマナエルの姿。マナエルはフォルネウスが居なくなったのを確認してそっと目を開く。
そしてロリエルの小さな胸にその白く細い指先で触れる。
ロリエルの吐息が漏れる。
黒き天使マナエルは一瞬動きを止めたが再びその手をロリエルの胸に当てる。
「せん、ぱい」
時計の針の音がやけに大きく響く。
否、この場所に時計はない。
その音はロリエルの体内で響くアルビナの鼓動。
止まっていた鼓動が、再び動き出したのだ。
マナエルはロリエルの身体から離れそっと立ち上がる。眠る先輩達を見るその黒い瞳がキラリと光ったようにも見えた。
「ロリエル先輩……楽しかったですよ」
さよなら、ごめんなさい
☆☆☆☆☆
カラフルな可愛いお部屋のベッドに眠る大天使メタトロン。そんな彼女を見つめるルシフェル。
テーブルの上のオムライスは綺麗になくなっている。——時刻は零時、
その時だった。
なる筈のない玄関のドアがコンコンと音を立てる。
(来客……? サンダルフォン達か?)
ルシフェルはゆっくりと玄関に近付いていく。
のぞき穴を覗いてみたがそこには誰も居ない。
恐る恐るドアノブに手を触れた。
が、ドアを開けてはいけないと直感で感じたルシフェルは咄嗟に振り返る。
「メタトロン!」
四大天使、ミカエルとガブリエルの降臨。音もなく現れた2人は、眠るメタトロンの小さな身体に聖剣を突き付けている。
大天使長ミカエルはルシフェルを流し目で捉えては瞳の中に宿る模様を光らせる。
「……堕天、ルシフェル。やはり貴方もこちらで管理するべきでしたね。この子達のように、側に置いておくべきでした」
ミカエルは剣先をメタトロンの細い喉に突き付ける。
「やめろ……! メタトロンを解放しろっ……今の彼女は闘えない……傷付けるなら……」
「……勘違いをしないで下さいね? 貴方達を生かしていたのは天使としての慈悲からです。それを反故にしたのは貴方達です。裏切り者には、神の裁きを受けていただかな——」
「——黙れ四大天使ーー!」
ルシフェルは神速の速さでミカエルの懐に入りルミナスを解放した拳を振りかぶる。
瞬時に反応したミカエルは後方へと回避する。
ガブリエルは何も言わずそれを見つめる。
ルシフェルのルミナス解放で部屋の壁に飾られたぬいぐるみ達が転げ落ちた。
物音に反応してまだ身体の自由がきかないメタトロンが目を覚まし身体を起こす。そして目の前で起きていることの重大さを感じ取り立ち上がろうとするが、
「ぐぅっ……」
「メタトロン! 僕に掴まれ! とにかく逃げるぞ!」
「いかんっ! ルシフェル!」
一瞬だった。
一瞬、大天使長ミカエルから注意を逸らしたその一瞬に放たれた一閃がルシフェルの身体をかすめる。体勢を崩したルシフェルの身体に手のひらを当てたミカエルはそっと力を込めた。
空間が歪む。
「うおぉっ!!」
ルシフェルの大きな身体が嘘のように飛び、小さなテーブルを大破させ、そのまま壁に打ち付けられた。
「ルシフェル!? よ、四大天使……これ以上はやらせんぞ……」
メタトロンは震える身体で立ち上がりルミナスを解放する。横目にルシフェルを確認するが、気を失っているようだ。
ルミナスを解放したことで、光る翼に神々しい天使の輪、大天使メタトロンの真の姿が露わになる。
「無駄です。確かに貴女は優秀な大天使です。しかし力の差は歴然ですよ。
さぁ、抵抗はやめて下さい。手荒な真似はしたくありませんので。天使として、慈悲をもって貴女方を断罪します」
ミカエルは光る聖剣をしまい無防備になった。
大天使ガブリエルはそれを見てメタトロンに声をかける。
「メタトロン……お願いだから……言うことを聞いて」
「はぁ、はぁ……そういう訳にはいかん。私達は誓ったんだからの……絶対に勝つと!
そして友を……ハニエルを救ってみせる! これ以上っ……あの儀式の犠牲者は出さんと決めたのだっ! 答えろ四大天使、あの儀式に何の意味がある? あれは本当に、神の意志なのか!」
メタトロンは力を高めていく。身体が悲鳴をあげるのも顧みず。
「神は存在します。儀式により尊い命が捧げられること、私の心も痛みます。ですが、世界の均衡を保つ為にはやむを得ないこと」
「くっ……もしそれが……自分の娘でもか!」
ミカエルは「はい」と即答する。
「ガブリエル! お前も同じか!? もし、あの子がアルビナなら……どうするつもりなんだ!」
「私は……」
「ガブリエルさん、貴女は引いて下さい。もしもの話に耳をかす必要はありません」
ミカエルはガブリエルを制し、再び聖剣を抜いた。
「言っても分かりませんか、残念です」
大天使長ミカエルは淡い桜色の髪をなびかせながら片手をメタトロンに向ける。
「貴女の力は私と同じ、光。聖なる力。……それがどういう意味か分かりますか?
それはつまり、完全なる上位互換です」
◆◆◆◆◆
じ、じ、次回に続く!!
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