76時限目【サンダルフォンとラジエル】

 

 ◆◆◆◆◆

 メタトロンの部屋でいつのまにか眠ってしまったルシフェル!

 片想いの大天使は頬を染める!

 今回はそんな2人と、気になるキャンプも覗いていくぞ! つまり、神視点だ!

 便利な視点ばかりですまん!!w

 ◆◆◆◆◆



 メタトロンのベッドにもたれるようにして眠るルシフェル。静まり返った部屋でそんなルシフェルを見つめるメタトロンはやれやれと毛布をかけてやる。


(……せっかく作ったというのに寝るとはの。仕方ないの、先に治療を始めるとするかの。寝ていてもらった方がやりやすいしの)


 メタトロンは出来立てのオムライスにラップをかけてエプロンを外す。そして眠るルシフェルの前にある小さなテーブルをずらしてはその前にちょこんと座ってルミナスを解放する。


 金色に輝くメタトロンはその光の翼で眠るルシフェルを優しく包み込んだ。

 鼓動がやけに高鳴り中々集中出来ないメタトロンは瞳を閉じて精神を集中させる。



 ☆☆☆☆☆


 ……


 一方こちらはサンダルフォンとラジエル。


 キャンプ場に降りてきた天使部一行は疲れた表情を浮かべる。しかしそれは何かを達成した際の清々しい表情にも見える。

 2人の大天使はそんな姿を影から監視する。


 キャンプ場には勿論ガブリエル邸の執事達が召喚されていて夕飯の支度に追われている。


「ちょっとはやく作れなの〜っ! じゃないと噛み付くのー!」


 執事達の動きは2倍速に。

 そんな執事達の姿を見兼ねたフォルネウスがガブリエル2世に言った。


「まぁそう言ってやるなってガブリエル。腹が減ってるのは分かるけど」


「それなら代わりにお前が噛まれろなの〜!」


「な、何でそーなるっ!? って待て!? タンマタンマ! ぬおーっ逃げろぉっ!!!!」


「まーてーなーのー!」


 ガブリエル2世に追い回されるフォルネウスをよそに天使部の○○エル達は椅子に腰掛け買って来たジュースを飲みながら雑談する。


「今日の特訓は中々成果があったっすね!」ぴょこん


「そうね。やっぱり先生は凄いよ。説明の仕方が上手というかさ」


 ロリエルが言うとクロエル、モコエルも頷きそうだねと口を揃える。


「それはそうと〜マナちゃんって凄いよね〜? まだ1年生なのに凄く安定しているんだもん」


「そ、そうですねっ! さ、才能、というかっ……なな、何と言うか」プルプル


 2人の先輩に褒められた後輩天使マナエルはその立派なまつ毛をパタパタさせながら首を傾げる。


「……はて? 自分、そんなに凄くないと思いますが?」


「そんなことないっす! マナちゃんは素質抜群っすよ!」


「あ、ありがとうございます……マール先輩には敵いませんが」


「そうね、マールちゃんはやっぱり部長だけあって凄いよ。見習うところがいっぱいで本当勉強になるよ」


 ロリエルが頷きながら言うと、マールは頬を赤らめ首を横に振る。


「そ、そんなに褒められると……ちょ、ちょっと照れるっすよ……!」


 マールは嬉しそうに頬を染め暗くなり始めた空を朝に変えるのではないかと錯覚するくらいの、強烈に眩しい笑顔を見せる。


 ……


「……今のところは異常は無いみたいですね、ラジちゃん……!」


「……うん。……」

 ラジエルはまっすぐキャンプ場を見つめたまま気の抜けた返事をする。


「……? ……どうかしたの? ラジちゃん?」


「……あ、いや、とにかくこのまま監視を続ける」


「ふぇ〜、お腹空いたよぅ……」


「さっきコンビニでちゃんと買って来なかったサンダルフォンが悪い」ぱくっ


 ラジエルは先程コンビニにて購入した菓子パンを食べながらキャンプ場を見つめる。

 それを見ているサンダルフォンのお腹が、くぅ、と可愛い鳴き声をあげる。


「……だって……」グスン


 今にも泣き出しそうなサンダルフォンをチラリと流し見たラジエル。


「ん」


「……へ?」


「……半分、あげる」


「ラ、ラジちゃん天使!」


 サンダルフォンはそう言ってラジエルが差し出したパンを受け取り一口食べた。


「天使だし」


 呆れたラジエルはもう一口パンを口に含み、それを流すようにカフェオレを飲む。すると隣で、


「んぐぅっ!? っの、喉がっ! ……ゔっ」


 隣にパンを喉に詰まらせ悶絶する大天使がいる。

 ラジエルは仕方なくカフェオレも少しあげるからとサンダルフォンに差し出した。

 サンダルフォンはそれを飲み、詰まらせたパンをその小さな胃袋に流し込む。


 ズズズゥ……プスス、ズズ、


「ぷはぁ〜、死ぬかと思ったよ〜! ありがとうラジちゃんっ!」満面の笑み


 カフェオレを飲み干した、——大事なことなのでもう一度言うが、カフェオレを飲み干したサンダルフォンは満面の笑顔でラジエルに空容器を返す。


 ラジエルはカフェオレを分けてあげたことを心底後悔しながら残ったパンを飲み物なしで食べるのであった。



 ☆☆☆☆☆


 そんなに広くはないカラフルな部屋に光が満ちる。眠るルシフェルを包み込む大天使メタトロンの翼はかれこれ2時間は輝きを放ったままである。


 ルシフェルはまだ目を覚まさないようだ。

 2人の距離はかなり近い、というかほぼ抱き合っているに等しい距離だ。

 これはメタトロンには少し刺激が強いだろう。


 目の前で眠る初恋の相手。

 幼女の心拍数はこの上ないくらいに上がる。


(……ったく、罪な男だの……)


 大天使メタトロンは更に強く光を放つ。



 …………そして、


 ……3時間が経過した。



 時刻は午後9時半、


 ルシフェルが目を覚ます。

 そして部屋を見渡す。

 テーブルの上にはラップがかけられたオムライスがある。身体がやけに重く感じる。

 ルシフェルは自分の身体にのしかかる何かに気付き途端に頬を染める。


「……メタトロン……」



 ◆◆◆◆◆

 おいおいルシフェル、いいのか!?

 ハニエルちゃんに怒られても知らないぞ!?

 と、冗談はさておき、


 次回、元天使部が、


 ◆◆◆◆◆

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