75時限目【メタトロンの部屋】

 ◆◆◆◆◆

 再び昔のように結束を固めた皆は一旦解散、まだ身体が完全ではないルシフェルは少しの間メタトロンの部屋で療養することになった!

 今回はメタトロンの部屋に潜入! その様子を神の視点で覗き見る!

 ◆◆◆◆◆


 サンダルフォンとラジエルの2人はフォルネウス達のキャンプ、否、天使力ルミナス強化合宿の様子を監視する為に保健室を後にした。

 静かな保健室に残されたメタトロンはルシフェルを見上げる。


 ルシフェルは背が高い。

 180センチは軽く超えている長身の顔を見ることは130センチ止まりのメタトロンには少しばかり骨だ。


「お、おいルシフェル……私達も移動するぞ?」


 そう言ったメタトロンの頬は少し赤く染まる。

 そんな幼女の目線に合わせ屈んだルシフェルはいつもの優しい笑顔を見せる。


「あぁ、頼むよ。ほんとにいつも頼りっぱなしで悪いな」


 ルシフェルは笑うといつもは鋭い目つきが嘘のように優しい表情になる。

 八重歯がチラッと見える感じもメタトロンのお気に入りポイントの一つだ。

 ちなみに、悪魔の笑顔も良く似ているように思える。フォルネウスも普段は悪魔的な鋭い目をしているが笑うととても優しい表情になる。

 つまるところ、好みなのだろう。


「なっ……べ、別に大したことはしておらんぞ? ほ、ほら行くぞっ!?」


 メタトロンは顔を真っ赤にしながら保健室のドアノブをその小さな手で握る。すると、


 一瞬、空気が変わった。


 そのままドアを開けると、学校の廊下ではなく、やけに可愛らしい女の子のお部屋に繋がっていた。

 メタトロンはスッとドアを潜り振り向いた。


「と、特別だからの?」もじもじ


 そんな彼女を見て、少し微笑むルシフェルはお邪魔しますと大天使メタトロンの部屋に潜入するのであった。


 部屋はカラフルで壁にはぬいぐるみがズラリと並ぶ。これを見たらラジエルのテンションも上がること間違いなしだろう。

 ルシフェルは意外な部屋の可愛さに少し戸惑いながら壁のぬいぐるみ達を眺める。


「へぇ〜、思ってたより女の子の部屋なんだな」


「む、何だその意外だなといった物言いは。ほれ、ジロジロ見るでないわ……! と、とと、とりあえず、何か作るからそこで座って待ってるがいい」


 メタトロンはこれまた可愛らしいエプロンをつけてキッチンへと向かう。


「あ、僕も手伝うよ」


「ば、馬鹿、こ、ここは私の部屋だぞ? む、無闇に物を触ろうとするでない、えっちぃやつめ」


「くく、メタトロン、お前ってほんと変わらないなぁ。そういうの、ツンデレって言うらしいぞ? 人間が作った言葉みたいだが」


「茶化すなぁルシフェル! ふん」


 メタトロンは膨れて横を向いた。


「いや悪い悪い、つい昔みたいなノリに。しかし、天使部か。この学校にも天使部があるのか、僕達は共学の神滴かみしずく中だったな。もう無くなってしまったけどな、40年前くらいだっけ?」


「うむ、そうだったの。サンダルフォンが泣くから大変だったぞ……いい大人が母校の廃校くらいで、しかも大天使だからの」


「サンダルフォンらしいな。メタトロン、やっぱり何か手伝うよ……っ、痛ぅっ……」


 立ち上がろうとしたルシフェルが頭を抱える。それを見たメタトロンは、それ見たことかとため息をつき言った。


「いいからそこで休め。……ルシフェル、お前の身体には未だに謎の刻印が残されておる。……何者にやられたか知らんが、それは一筋縄では解除出来ん。食事を済ませたらまた治療に入るからの」


「……メタトロン……刻印を解除出来なければ僕は、どうなる?」


「呪いが完全に身体を蝕んだ時、お前の意思はお前のモノでは無くなり、術者のモノとなる……天界に背き堕天したお前に何故このような……

 術者の意図が全く分からん……ま、まさか、いや、仮定の話は無しだの」


「術者はアビス・フォルネウスの父、ラウルだ。

 ソロモン72柱、序列30位、伯爵の称号を持つ男だ。……メタトロン……?」


 メタトロンはエプロンの結び目を結びなおしルシフェルに背を向けたまま言う。


「……お前……それ、とんでもない奴に喧嘩を売ったようだの。ソロモンの悪魔というと天界でいう四大天使クラスなんだからの……?

 無茶にも程があるぞ……まぁなんだ……これからその四大天使と喧嘩しようとしてる私達が言えたことではないがな。と、とにかく今はその呪いを解除せねばならんのだ。お、大人しくそこに座っていろ、わかったか?」


「わかったよ、部長」


 ルシフェルはベッドを背に腰掛ける。


 フカフカのベッドからはほのかに良い香りが漂ってくる。そんなベッドの上にはメタトロンが使うにしては大きな抱き枕とお気に入りのぬいぐるみ達が散乱している。顔の形が変形しているのもある。

 恐らく、いや、どうでもいいことだが、恐らくアレが1番のお気に入りなのだろう。


 と、それはさておき、ルシフェルは部屋の天井を見上げ、ハニエルを想う。

 キッチンからはトントンと包丁がまな板を叩く音が聞こえてくる。


 トントン……


 トントン……


 ルシフェルはその音を聞きながら少しだけ目を閉じた。


(ラウル・フォルネウス……奴はルシフェルを使って何をしようと……まさかとは思うが……)


 メタトロンはルシフェルに振り返る。


 ……


 どうやらルシフェルは眠ってしまったようだ。



(……これは色々と急がねばならんな……必ず解除してやるからの……)



 ◆◆◆◆◆

 タジタジなメタトロンはさておき、意外なお部屋を覗けた回であった。

 次回から、怒涛の展開が!?

 暫くはフォルネウスの視点には移れそうにないが、このまま神の視点であらゆる角度から物語を進めていくぞ! ん? 主人公が最近出ない?

 気にするでない! フォルネウスにはとっておきの見せ場があるのだから!

 ◆◆◆◆◆


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