68時限目【先輩、自由研究どうします?】

 

 ◆◆◆◆◆

 夏休み、天使部の通し企画として自由研究が提唱された。班分けでマナエルと同じ班となったロリエルの部屋で集まることにした2人!

 ロリエルとマナエルの距離は更に近く?

 今回はロリエル視点でそんな2人を追うぞー!

 ◆◆◆◆◆




「……先輩、自由研究どうします?」


 羽ばたくまつ毛。マナちゃんは私に言ったわ。


「……え……マナちゃんが言い出したんだよね? もしかしてだけど何の研究するか全く考えてなかったりする?」


「ふむふむ、言ってみたものの何も考えていませんでしたよ。先輩、何か考えて下さい……!」


 えーー……


 自由研究の為、私の部屋に来ているのは後輩天使マナちゃんよ。私達は部屋で何を題材にするのか悩んでいるわけだけれど、

 腕を組み考える。

 ……

 首を傾げ考える。

 ……


「あっ、これってデビパープルですよね! 先輩、意外と抜け目無い性格なんですね」


 学習机に大事に飾っておいたデビパープルとのツーショット写真を見たマナちゃんがクスッと笑う。

 隠し忘れたのを心底後悔した私は慌ててつい変な声を出してしまったわ。


「ひゃぁん!? こ、これはそのっ!」


「そんなに恥ずかしがらないでください先輩! ポーズだってほら、完璧、ですね」


「いや流石に恥ずかしいよ……はぁ、でもまぁ同じデビレンファンのマナちゃんになら見られてもいっか……」


 はぁ〜、いま、間違いなく顔赤いよ〜


「……先輩、可愛いですね……」


 マナちゃんは恐らく頬を染めているだろう私をその大きな瞳で見つめる。

 その眼に一瞬吸い込まれそうな感覚を覚えた。私は、はっと我に返り言った。


「へ、変なこと言わないのっ! そ、それより、早く題材を考えるわよ?」


「……そう、ですね。何にしようかな」


「いつもの交信で何か分からないの? 良く誰かと話してるでしょ?」


 私は仕返しとばかりに禁断のツッコミを入れた。


「あ、あれはこちらから交信している訳ではなくですね……そう、宇宙から一方的に交信されるものであって……えっと」


「あ、も、もういいよ、分かったから考えよう」


「いや、まだ説明が……あ、少し待っていて下さい! 今通信がっ……!?」


 マナちゃんは後ろを向きゴニョゴニョと何か呟きだしてしまった……


 えぇ〜と……こ、これ今日中に決まるのかな。


 窓の外からは小鳥の囀りが聞こえてくる。

 そのあと私は謎の交信に必死な不思議っ子を3分程見る羽目になったわ……


 その間ずっと外からは鳥達の声。

 そうだ、

 今聞こえてきている鳥達の囀りは私の部屋のベランダに巣を作ったシャインバードの雛の囀りである。巣立ちまで毎年のことを考えると2週間程であるわね。

 と、そんな思考を巡らせていると通信を終えたマナちゃんが首を可愛く傾げる。私はひとつ提案してみたわ。


「ベランダのシャインバードの雛の巣立ちまでを題材にしてみない? 4年前からずっとこの時期に巣を作るようになってさ」


「おぉ……! それは良い考えです……! 自由研究っぽい! 先輩はやっぱり、先輩ですね、天才です」


「あ、うん、ありがとね」


 マナちゃんは興奮した面持ちで私に駆け寄って来たわ。そして何を思ったのか私の小さな身体をギュッと抱き上げた。

 当然、驚いた私は思わず「きゃっ」と声を漏らす。


「ち、ちち、ちょっと降ろしてよ〜っ……」


「はっ! す、すみませんっ……ついつい抱っこしちゃいました、ロリエル先輩が可愛いから悪いんですよ?」


「か、かかわ、いくないよ!」


 身体は密着し、それぞれの鼓動すら感じられるよう。マナちゃんの柔らかな胸に抱かれていると、少しだけ、気分が落ち着いてきたわ。


 最後にこうやって抱いてもらえたのはいつだったろう。

 両親はいつからか不在。大好きだったお兄ちゃんは少し前にいなくなってしまった。

 いつも頭を優しく撫でてくれたお兄ちゃん。

 泣いた時にはギュッと抱きしめてくれた、そんなお兄ちゃんも今は行方不明。


 とても優しいけれど、何処か影のある100歳違いの優しいお兄ちゃん。マナちゃんの胸に抱かれて思い出しちゃった。少し哀しい気分になった。




 時計の針の音がやけに大きく聞こえる。




「ほ、ほら。降ろして? 恥ずかしいよ……」


「はい。研究はロリエル先輩のあれこれ、——ではなく、小鳥達の巣立ちまでの記録で決まりですね。明日から頑張りましょう!」


 私は高鳴る鼓動を抑えながらコクリと頷いた。



 自由研究の題材も無事に決まり、明日から本格的に始めることに。



 本日も夜の空には綺麗な星、


 天界には雲一つない。



 ——



 明かりを消した私の頭に、時計の針の音がやけに響く。何故か胸の高鳴りが鎮まらない。

 私は頭の中でガブリエルちゃんを数えた。


 ガブリエルちゃんが1人


 ガブリエルちゃんが2人


 ガブリエルちゃんが……


 あ〜っ……五月蝿くて余計に眠れない……



 ◆◆◆◆◆

 当たり前だろうがロリエルよ! 何故、ガブリエル2世を選んだのだ!

 何はともあれ、自由研究の課題は決まった!

 明日からマナエルと共にシャインバードの生態を研究だ! 次回もロリエル視点でいくぞ。

 ◆◆◆◆◆










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