60時限目【モコエルの憂鬱】

 ◆◆◆◆◆

 週半ばの一時限目、授業中、寝ぼけ眼のモコエルが眠るまいと黒板の文字をノートに書き留める。しかし、目蓋が言うことを聞かない!

 優等生モコエルに何があったのか!?

 今回は神の視点で彼女を追ってみるぞ!

 ◆◆◆◆◆



(ふえぇ……文字が踊って見えるよ〜)


 二時限目。


(す、数字達がタップダンスを……!?)


 三時限目。


(うぅ、駄目駄目、授業中に居眠りなんて、はっ、今、一瞬魔界に!?)


 四時限目、体育。


 因みに、体育はタブリスが担当する。女子なのに? 否、ここの生徒達は女子であって女子ではないのだ。タブリスくらいの威圧がないと誰も言うことを聞かないのだ。


 黒光り天翔タブリスは今日も例外なくテッカテカのマッチョだ。それはさておき、ボールを手にしたタブリスが鼓膜が破れんばかりの声で吠える。


「よぉーーーーし! これから2チームに分かれて死ぬまでドッジボールだ! テキトーにわかれやがれい! いいか良く聞け? ドッジボールは漢の闘いだ! 手加減なしで真っ向から勝負すること! わかったら位置につけーい!」


「黒光りセンセ……私達、女の子なんですけど」

 と、シャムシエル。


「シャーーームシエーーィル! 黒光りとは何だぁ!! しかし、おお、そうだったか! だが! 女と言えども心は漢! そうだろ? ロリエルよ!?」


 白い歯がキラリと光り、ロリエルに向けられた。


「え、えぇ〜……ここで私に? ま、まぁ……そーゆうことにしておきます……」

(漢はデビパープルだけでいいよ……)


 こうして漢の闘い、ドッジボールが始まった!


 テンポ良くボールを繋げるAチーム! しかしマールがそれをカット! そのまま外野のカマエルにパスを回した! それを見事にキャッチしたカマエルはそのままの体勢で豪速球を放った。


「いっくぜー!」


 強烈な打撃音が校庭に鳴り響く。現場の○○エル達、呆然……


 ぴゅーっ(あ〜れ〜、お星様〜?)


 心ここにあらずなモコエルの顔面を殺人、否、殺天使豪速球が捉えたわけで、


「あわわっ、ご、ごめんよモコエルちゃんっ!」


 カマエルは慌てて鼻血を流すモコエルの元へ走った。見事なアーチを描き大の字に倒れた美少女に天使達が群がる。


 豪速球を顔面で受けたモコエルはあえなく戦死。保健室へ運ばれた。


 ——


 保健室にて、


「ほれ、これで血は止まったぞ? それにしてもここまでクリーンヒットするとは、相当呆けておったな?」


 メタトロンはベッドで横になるモコエルに治療を施した。そしてもう少し横になれと促す。


「あ、でも授業が……」


 モコエルは起き上がろうとしたが、どうも身体の調子が良くないみたいだ。


「寝不足だの。モコエルよ、ちゃんと寝ておるか?」


「はう、あの……その〜……うぅ」


 モコエルは口ごもる。

 そんな姿をメタトロンは大きな翡翠色の瞳で見つめる。モコエルは思わず目を逸らした。


「言わんでもよい。だが、午後の授業は休むことだの。わかったか?」


 言ってカーテンを閉め溜まった書類の山と睨めっこを再開するメタトロンだった。


 ☆☆☆☆☆


 放課後、フォルネウスが保健室へ様子を見に来た。

 2時間ほど眠り顔色も少しマシになったモコエルを見て安心した悪魔。


「皆んなは部活で俺の部屋に入り浸ってるけど、モコエルは今日は帰って休めよ?」


「はう……は〜い……」


 気の抜けた返事をしてモコエルはメタトロンに挨拶をする。モコエルが去ったのを見てフォルネウスも去ろうとすると、保健室の幼女が呼び止めた。


「フォルネウスよ、少し話がある」


「話ですか?」


「いや、モコエルなんだが……」



 ————



「そうですか……少し無理をしているのかも知れませんね……」


 フォルネウスは難しい顔をする。


「だの。部活もいいが……お前は一応顧問だろ? 良く見ておいてやるといい。あの子は良い子だ。でも、良い子過ぎるのも考えようなんだの。

 は……話は終わりだ。用が済んだらさっさと出て行かんか! しっしっ」


 メタトロンは虫を追い払うかのようにフォルネウスを追い出した。


(んだよ、自分から喋っておいて……)


 追い出されたフォルネウスは首を傾げながら部室と化した部屋戦場へと向かうのであった。


 ◆◆◆◆◆

 メタトロンはモコエルの憂鬱に気付き、担任のフォルネウスにそれを告げた!

 優等生であるモコエルにいったい何が!?

 次回! 続・モコエルの憂鬱!

 次も神視点継続でいくぞ!

 はぅ〜

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